東京Vは「いるべきところにいなきゃ」 J1で21年ぶり4連勝も“長期的な目標”にフォーカスする訳
城福監督が選手たちに感じる「確信」の芽生え
東京ヴェルディは9月22日に行われたJ1リーグ第31節サガン鳥栖戦に2-0で勝利し、4連勝を達成して勝ち点を47に伸ばした。東京VのJ1での4連勝は実に21年ぶりのこと。今シーズン、「J1残留」を目標に掲げてスタートを切った城福浩監督率いる緑の軍団は、残り8試合で降格圏のジュビロ磐田と勝ち点15の差をつけて、残留をほぼ手中にしている。むしろ来季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)エリートの出場権を得られる3位のヴィッセル神戸の勝ち点58のほうが近い状況にある。
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シーズン終盤になると優勝争い、残留争いとも関係なくなる中位のクラブは、目標がなくなってバラバラになることが少なくない。結果が出ていることで観客数も増えて、この試合にも1万8992人を集めた東京Vも、残り8試合に向けて「残留」ではない新たなニンジンを目の前にぶら下げていいタイミングではないだろうか。
2-0で勝利した鳥栖戦について、「選手たちの成長を感じられた」と感想を語った城福監督は「シーズンが開幕する前に私は『残留』という具体的な目標をシーズン最初に口にしました。『このクラブがやらないといけないのは残留だ』と。クラブの規模を考えたら、当たり前の自分が課せられた最低のミッションだと思っています。ただ、それ以外のところは、具体的な目標は一切口にしていなかったんです」と開幕前のことを振り返り、その理由を続けた。
「それはサプライズを起こすというのがどういうことか。みなさんに『サプライズを起こす』と口で言って(サプライズを)起こせるのであれば、何万回でも言います。でも、そういうものではない。それは日々、我々がやるべきことをやって、厳しい練習をやって、高いレベルの競争をやって、ピッチに出た人間がやるべきことをやる。この繰り返ししかないんです。これをやれば、悔しい試合もあるし、情けない試合があるかもしれない。けれども、我々であっても確実に勝ち点を積み上げていけるんだと、選手の自信というか、やり続ければこういう風になっていくという確信が少し芽生えてきたかなと思う」
主将の森田晃樹や綱島悠斗は目の前の1戦1戦を重要視
シーズン開幕時から東京Vは、厳しい日常を過ごすなかでチームも選手も成長を続けている。その結果が4連勝という結果になり、6位という順位につながっている。そのスタンスを変える必要はないと、指揮官は語気を強める。
「なので、相手が優勝争いをしていようが、残留争いをしていようが、我々には関係ない。我々が日々、何をしないといけないか。この試合で何をしないといけないか。何を今日するのか、何を示したいのか。これに尽きると思います。それをみんなが共有しながらやる」
キャプテンのMF森田晃樹は、21年ぶりの4連勝に「あまり想像していなかったことですけど、チームとして1つずつ積み重ねた結果だと思っています」と静かに喜び、指揮官に同調した。「4連勝しているからというわけではなく、しっかり目の前の自分たちのやるべきことに目を向けて、やっていけば結果はついてくると思うので、日頃の練習から頑張っていきたい。目標を(新しく)するというのは難しい。チームとしてはなるべく上の順位で終えることが、今の目標だと思っています」と、重要なのは目標を新たに持つことではなく、これまで過ごしてきた日常を変えないことだと強調した。
DF綱島悠斗も「自分自身は可能性がある限り、ACL出場権を目指します」と前置きをして「けれど、このチームが一番大事にしているのは、どこを目指すかじゃなくて、まず目の前の試合で1試合1試合勝利していくこと。それで結果的にACLに届いたというのが、ベストだと思う。自分たちは本当にチャレンジャーだと思うので、1試合1試合全力で戦って、1試合1試合勝利を重ねて、結果的にACL出場するというのが、自分たちの目指すところです」と、先の2人と同じく目標を掲げるよりも、優先するべきことがあると語った。
そして、綱島は「ヴェルディがいるべきところにいなきゃいけないっていうのは、ずっと言われて来たので。そういう点から考えると、やっぱりまだまだだなと思う。本当に行かなきゃいけない上だけを見てというか。常に勝利を求めてやっていきたい」と、今シーズンという目先の結果にこだわるのではなく、Jリーグができた当時の強いヴェルディに戻るための道のりに自分たちがいると言葉にした。
目標が見えにくくなる中位のクラブは、シーズン終盤に苦戦することが多い。だが、来季のACL出場権獲得という目標以上に、高く長期的な目標を掲げて日々を歩んでいる東京Vは、シーズンが終わるまで目の離せない戦いを続けてくれそうだ。
(河合 拓 / Taku Kawai)