J逸材タレント多数…海外組不在も「一番いいメンバー」 U-19日本代表“ロス五輪世代”の精鋭たち【コラム】

U-19アジアカップ予選に臨む日本代表のメンバーと予想布陣【画像:FOOTBALL ZONE編集部】
U-19アジアカップ予選に臨む日本代表のメンバーと予想布陣【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

U-20W杯出場を目指す“05ジャパン”、U-19アジアカップ予選に臨むチームの輪郭

 来年のU-20ワールドカップ(W杯)を目指す“05ジャパン”は今月下旬からキルギスで行われるU-19アジアカップ予選に臨む。船越優蔵監督は前回のU-20W杯を日本代表のコーチングスタッフとして経験し、この年代の世界基準を体験して、現在のチームに落とし込んでいる。

 かつてないほどこの年代の海外挑戦が増加しているなかで、後藤啓介(アンデルレヒト)をはじめとした“海外組”は招集外となったが、すでにJリーグのトップチームで出場チャンスをえている市原吏音(大宮アルディージャ)や西原源樹(清水エスパルス)、保田堅心(大分トリニータ)、大関友翔(福島ユナイテッド)、横山夢樹(FC今治)なども選ばれており、J1でリーグ優勝を争うサンフレッチェ広島から中島洋太朗と井上愛簾も、9月19日のACL2(AFCチャンピオンズリーグ2)カヤFC戦のあとに合流という形で招集されている。

 船越監督は「ここにいるのが日本代表で。僕は一番いいメンバーを呼んでいます」と強調するが、同時に選手たちには「このままじゃ淘汰されていくよというのは厳しい言い方だけど、次呼べないよという言い方をして、奮起を促す、刺激を与えている」とも語る。中央アジアのキルギスという厳しいアウェーの環境で、中1日で3試合をこなすタフさも求められるなかで、チームとして予選突破を決めることはもちろんだが、選手1人1人には今後に向けたサバイバルでもある。

 2005年生まれの世代はコロナ禍で、なかなか国際経験を積めなかったが、船越監督はそうした状況で育まれたタフさと吸収力というのが、世代的な強みであることを主張する。その中心的な1人である市原がキャプテンを任されて、昨年のU-17W杯やパリ五輪のトレーニングパートナーを経験した2006年生まれの佐藤龍之介(FC東京)が副キャプテン格として支える。

 市原が「この代の中では経験があるほうだと思っているので。呼ばれた時にはキャプテンをやるつもりでいましたし、そうじゃなくても引っ張っていかないといけない存在なので。ピッチ外のところもチームが1つになれれば」と語れば、現在17歳の佐藤は「世代としては1個下ですけど、同年代の選手も多いし、年齢にかかわらず言い合える集団にしていきたい」と意気込む。

 彼らのようなJリーガーもいれば、左利きの廣井蘭人(筑波大)や小倉幸成(法政大)、中川育(流通経済大)といった進学組に有望なタレントの多い世代でもある。そうした選手たちをキャプテンの市原がまとめるが、佐藤が「全員がキャプテンのつもりで」と言うように、特定の誰かに頼らないリーダーシップを1人1人が出していければ、厳しい予選を勝ち抜き、世界での飛躍も目指していけるはずだ。

A代表も「目指していきたい」…未来へ続く道程へ野心も

 チーム構成を見ると、ディフェンスリーダーでもある市原やチャンスメイク力と得点力を兼ね備えた佐藤、中盤で6番的な働きが期待できる保田、中盤を攻守にオーガナイズできる中島、ポストワークに優れる神田奏真(川崎フロンターレ)など、センターラインがしっかりとしており、そこに西原や中川のような個人で違いを生み出せるサイドアタッカー、パワフルで推進力のある本間ジャスティン(横浜F・マリノス)、クリエイティブな持ち運びを武器とする髙橋仁胡(セレッソ大阪)といった個性的なサイドの選手がエネルギーを与える存在になっている。

 チームとしてのまとまり、個人として突き抜ける野心。それらが相反することなく勝利のパワーになっていけば、中1日でトルクメニスタン、ミャンマー、キルギスと戦う厳しい環境も乗り越えていけそうだ。市原は「“ロス世代”って呼ばれますけど、まずやっぱりU-20W杯は言われてきてましたし、オリンピックというよりもA代表を見て、その逆算で言うとU-20W杯に懸ける思いは強くなります」と強調する。

 今回のU-20アジアカップ予選、中国で開催されるアジアカップ、さらにチリが舞台となる来年夏のU-20W杯へと続いていく。その先にはもちろん2028年のロサンゼルス五輪もあるのだが、佐藤は「オリンピックを目指してるレベルだと、やっぱり世界でトップ取るっていうのは難しいと思いますし、それは個人としてもそうなので。常にA代表に呼ばれてもいいような姿勢だったり、目標を志すっていうのは持ちつつ、今できる環境の中で、そこは目指していきたい」と語る。

 短期間ではあるが、タフな戦いを通して成長した選手たちが、所属チームにどう還元して、その先につなげていくか。チームにも個人にも注目していきたい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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