大学187㎝逸材がプロへ…韓国GKキム・ジンヒョンから貰ったグローブで叶えた“J内定”

明治大4年GK上林豪【写真:FOOTBALL ZONE】
明治大4年GK上林豪【写真:FOOTBALL ZONE】

セレッソ大阪に加入内定、明治大GK上林豪が怪我を経て8か月ぶりに公式戦復帰

 大学サッカー夏の全国大会・総理大臣杯は阪南大の優勝で幕を閉じた。この大会で、明治大の4年生守護神である上林豪は、昨年の12月24日のインカレ(全日本大学サッカー選手権大会)の決勝戦以来、実に8か月ぶりに公式戦のピッチに立った。

 上林は187センチのサイズと屈強なフィジカルをベースに、ダイナミックなセービングと安定したハイボール処理、パンチ力と正確性のあるキックという多くの武器を持ち、来季はセレッソ大阪入りが決まっている逸材。だが、シーズン前に肩を負傷して手術を受けた。

「肩を脱臼してしまったのですが、プレーが全くできないという状態ではありませんでした。だからこそ、僕としては個人的な感情としても、チームにおける立場としても離脱したくなかったので、プレーし続けるか迷っていたのですが、栗田大輔監督が『無理せずに手術したほうがいいんじゃないか』と言ってくださったので、きちんとここで治す決断をしました」

 復帰戦は総理大臣杯1回戦の富士大戦。この試合で安定したセーブを見せて完封勝利に貢献した。2回戦の広島大戦は3年生の藤井陽登がスタメン出場したが、準々決勝の阪南大戦でスタメンに復帰。しかし、この試合で上林は痛恨の2失点を喫し、チームも0-2で敗退となってしまった。

「総理大臣杯という大舞台で自分を使ってくれたことに対して、栗田監督からのメッセージが込められていると思っていたので、とにかく明治を優勝させること以外考えていませんでした。でも、結果的に2失点をしてしまったのは僕の責任。特に2失点目のFK(フリーキック)は絶対に止めないといけないコースだった。本当に悔いが残りますし、申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 試合後、上林は肩を落とした。しかし、これで彼の価値に傷がついたわけではなかった。そもそも栗田監督が上林を起用したのは、おそらく離脱中の姿勢が大きく影響していると感じる。彼は自分が試合に出場できなくても、明治大のポロシャツを着て、試合の時はいつもチームのために活動をしていた。

「置かれた立場で全力で尽くすのが明治のポリシー。明治で4年間育ててもらったからこそ今があると思うので、そこで一生懸命やって『明治のあるべき姿』を自分が示さないといけないと思っていました。そういう姿を後輩は絶対に見ていると思うので、サッカー部の運営、試合の設営、試合のメンバーに入れなかった選手は試合当日の朝に練習をするのですが、そういうところでの立ち振る舞い、1つの言動など細かい部分を大事にしました」

尊敬するキム・ジンヒョンから貰ったグローブを必ずはめて4年間プレー

 その姿を栗田監督始め、周りのスタッフ、選手たちが見てきたからこそ、同じ4年生の韮澤廉、後輩の藤井も好パフォーマンスを見せていた状況で、上林を起用する決断を下したのだろう。その思いを一番理解しているからこそ、上林はピッチ上で常に声を張り、敗退後も毅然とした態度で真摯な立ち振る舞いをし続けた。

「周りの人から信頼されるGKになりたい」と語り、心身ともに逞しくなって帰ってきた彼の手には、尊敬するキム・ジンヒョンから貰ったグローブがはめられている。上林がC大阪U-18時代に8セットのグローブをもらい、明治大に来てからは公式戦では4年間必ず手にはめてプレーをしている。

「ジンさんはうまくて、強くて、頼り甲斐のあるGKであり、人としても本当に学ぶことが多い。ずっと尊敬している選手で、憧れの選手。セレッソに戻ることが決まった以上、自分が超えていかないといけない存在。ジンさんから貰ったグローブを公式戦で手にすることで集中できるというか、意識が高まるんです」

 比較的劣化するのが早いGKグローブをいくら8セットあるとはいえ、4年間も綺麗な状態で使い回せるということは、彼がいかに丁寧にメンテナンスをしているのかが分かる。「そうです、部屋は綺麗です」と笑うように、元々の性格もあるが、それだけ上林は感謝の気持ちをしっかりと大切に表現できる。だからこそ、怪我で離脱中も周りから信頼されるだけの行動を取ってきた。

「僕は明治に来ていなかったらセレッソに戻ることも、そもそもプロサッカー選手になれたかどうかも分からなかった。サッカーだけではなく人間的な部分も成長させてもらって、ここに来て良かったなと思っています。だからこそ、恩返ししたいですし、リーグ優勝、日本一を後輩たちに見せて、『明治でやり切ったな』という思いを持ったうえで、次のステージに進みたいです」

 残り数か月の大学生活。上林は周りの信頼と尊敬を集める守護神として真っ直ぐに歩き、目標を果たしてから、尊敬するキム・ジンヒョンとのポジション争いに挑んでいく。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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