異例の環境にエース吐露「甘く見ていた」 ヤングなでしこが苦労した南米での戦い「やっと全力で走れる」
U-20女子W杯は異例の環境下、松窪真心「慣れてきたのがスペイン戦」
ヤングなでしこの愛称を持つU-20女子日本代表は、コロンビアで開催中のU-20女子ワールドカップ(W杯)で決勝まで勝ち残った。その戦いの道のりでは高地への順化や、移動を経ての環境の違いといったものを乗り越えてきた。
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グループリーグからラウンド16までを戦った首都ボゴタは標高約2600メートルにあり、狩野倫久監督は「富士山の5合目や6合目にあたる。2011年にU-17男子がメキシコで試合をしたのが標高1900メートルほど。日本サッカーでも今までにない標高でやることになる」とメンバー発表会見で話した。マラソンの高地トレーニングを行うような環境だけに、JISS(国立スポーツ科学センター)やJOC(日本オリンピック委員会)の協力も得ながら約2週間前に現地入りして準備を進めた。
実際にその環境に入っての感覚をFW土方麻椰は「コンディションを整える練習だけでも息が上がり、疲れも出て、なかなか眠れなかった。1プレーだけで息が上がってしまい、それが落ち着くまでに時間もかかる。ボールに関わる回数が減ってしまった。普段通りのハードワークやスプリントを繰り返すことができなかった」のだと話す。MF早間美空もまた、「大変だったのは高地順化。息苦しさ、すぐに息が上がるところが大変だった」と振り返った。
その難しさを最も感じたのが、アメリカでプレーしていることから大会前にほかの選手から遅れて合流したFW松窪真心かもしれない。調整によりグループ第2戦からの出場となったものの、「最初は少し甘く見ていて、いけるだろうと思っていた。(全体の)2試合目に入った時に、全くというか、本当に息が苦しくて思うようなプレーができなかった。もう1試合やっても、それでも苦しかった」と、エースと見込まれる実力者は苦しんだと話す。
そして、準々決勝スペイン戦はメデシン、準決勝オランダ戦はカリでの戦いだった。ボゴタと比較すれば約1000メートル標高が下がる環境だっただけに、土方は「ボゴタで試合と練習を積んだおかげで、メデシンやカリに移動した時に楽になって、体力が付いたような気分になった」と笑ったが、日本サッカー協会(JFA)のスタッフによると、カリでは半袖やハーフパンツで過ごせる気温だが、ボゴタではベンチコートが必要なほどの差があるのだという。そうした環境の差に対応することもまた、この大会を勝ち残っていく中で重要な要素になっていた。
ボランチで効果的なプレーを見せているMF小山史乃観は「食事と睡眠は全員が気を使っている。いつもより意識的に食べることや寝ることはできていると思う。高低差があると、酸素が薄いことを試合を通して感じる。事前キャンプからスタッフの皆さんと調整して入っていけたのは大きかったと思う」と話した。2週間の事前合宿は、大会の勝ち上がりに対して成果を上げたと言えそうだ。
残すは高地ボゴタに戻って北朝鮮との決勝戦になる。こうした環境への順応もあり、調子を取り戻してきたエースの松窪は「慣れてきたのが(準々決勝の)スペイン戦。やっと全力で走れるようになった。言い訳にはしたくないけど、ゴールでチームに貢献できていない焦りがあった。オランダ戦で2点を決めたことで、自分の中でも少しホッとしたかなと思う」と話し、状態も整った。現地時間22日、日本時間23日早朝の決勝戦では、ここまで積み上げてきたものを生かして躍動するチームの姿が期待される。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)