強豪校CBが味方へ苛立ち「触るなよ!」 弱さ露呈も大役任され「変わらないと」…“5番”の誓い
桐生第一高校3年生CB原田琉煌、偉大な先輩の背中追いかけチームを鼓舞
高校サッカーの強豪・桐生第一(群馬)の背番号5は守備の中心であることを指す。今年、この大役を任されたのはジュビロ磐田U-18からやってきた186センチの3年生長身CB(センターバック)原田琉煌だ。
原田の特徴は高い打点のヘッドとスピード、アジリティーにある。裏へのボールやロングボールに対する反応が鋭く、軽やかな身のこなしからの素早いターンとスプリントで、相手よりも早くボールに到達する。ワンツーやこぼれ球に対する反応と瞬発力が鋭く、インターセプトやセカンドボールの回収の技術も高い。さらにワンステップで遠くに速いボールを蹴り込むことができるフィード力も魅力。ビルドアップ面ではまだまだ改善の余地は多くあるが、高いポテンシャルを持った今後が楽しみなCBだ。
最高学年を迎えた今年はチームとしても苦しい時を過ごしていた。プリンスリーグ関東1部では9試合を終えた時点で7敗2分と勝ち星が拾えなかった。インターハイ予選でも準々決勝で常磐高に1-2でまさかの敗戦を喫した。
「常磐戦では僕が味方のプレーに対して強く言いすぎてしまったんです。それで雰囲気を悪くさせた状態のまま、僕が負傷交代でピッチから下がってしまって、負ける瞬間を外から見ることしかできなかった。本当に責任を痛感した瞬間でした」
守備の中枢になることは自覚していたが、「精神的に本当に幼かった」と振り返るように、結果が出ないなかで自らに生じた苛立ちをチームにぶつけてしまうことも多々あった。
「ちょっと恥ずかしいことなんですが、例えば味方のクロスボールが自分のところに飛んで来た時に、先に味方が触ってしまったら『触るなよ!』と強く言いすぎたりしてしまっていたんです。中村裕幸監督からも幼さを指摘されていたのですが、なかなか冷静になれなかった。でも、インハイ予選の経験と夏にGKの上杉海晴と2人で深く話をしたのですが、そこで彼が『今のチームの現場でお前が一番影響力あるんだから、チームを変えられるのはお前しかいない』と言ってくれたんです。その本音を聞いて、『チームが勝つためには自分が変わらないといけない』と強く思いました」
我に返った原田はもう一度、自身の在り方を考え直した。目標にしている偉大な先輩が高校時代にどのような立ち振る舞いをしていたのかを改めて思い出した。
「去年まで2年間、一緒にプレーした中野力瑠さん(ザスパクサツ群馬)はプレーだけではなく、人間性も抜きん出ていた。一緒に寮生活をして日々の過ごし方からも学ぶものが多かった。僕も自分の力を磨くだけではなく、周りの見本になるような立ち振る舞いをしないといけないと思ったんです」
尊敬する先輩から背番号5を引き継いだ。この番号は力瑠の兄である中野就斗(サンフレッチェ広島)も背負った番号だ。
「僕も力瑠さんや就斗さんのようにチームを勝たせる5番にならないといけないと思っています」
今月7日に行われたプリンスリーグ関東1部・第11節の帝京高校戦。原田はその言葉どおり、素早いカバーリングとセカンドボールの回収、そしてロングフィードを駆使して攻守において奮闘し、今季リーグ戦初勝利を1-0の完封で手にした。
「この勝利は残留に向けて大きな一歩。まだ軽率なミスもあるので、これで浮かれないように、これからもチームのためにプレーしていきたいと思っています」
偉大な先輩の背中を追いかけながら、より5番の意味を深いものにするべく原田はプリンス残留、選手権出場に向けて最終ラインからプレーでチームを鼓舞する。
(FOOTBALL ZONE編集部)