久保建英も判定に苦言「疑わしい」 降格圏一歩手前…辛辣評価も現地記者は異なる見解【現地発コラム】
古巣レアル戦で3試合連続先発の久保建英、チームは0-2で敗戦
久保建英は3試合連続で先発出場を果たすも、古巣相手の一戦で再びいい結果を得られなかった。
開幕から1勝1分2敗と不調のレアル・ソシエダは、現地時間9月14日のラ・リーガ第5節で昨季の王者レアル・マドリードと対戦。この2チームの現在の状況には似たものがあった。
ホーム2連敗中のソシエダは、前節ヘタフェ戦でアマリ・トラオレが重傷を負い(今季絶望の可能性大)、アルセン・ザハリャン、ブライス・メンデスも負傷欠場。さらにミケル・オヤルサバル、アンデル・バレネチェアなどが怪我明けと、多くの問題を抱えているなか、久保は3試合連続でスタメン入りした。
対するマドリードは、ダビド・アラバ、エドゥアルド・カマヴィンガ、ジュード・ベリンガム、ダニ・セバージョス、オーレリアン・チュアメニが怪我で招集外。注目のキリアン・エムバペがまだ完全にはフィットしておらず、アウェー2試合連続ドローと敵地で一度も勝てていない。
マドリード戦通算11回目の出場となった久保は、序盤から積極的な姿勢を見せ、開始早々ファールを誘発。ドリブルやパスでチャンスメイクを演出し、前半25分にはルカ・スチッチがポストに当てた決定機をお膳立て。同39分には自らもゴールを狙ったが、惜しくもDFアントニオ・リュディガーに阻まれた。後半は前半のようにはプレーさせてもらえず、時折上げたクロスも精度を欠くようになった。最後まで可能性を信じて走り続けたが、劣勢の状況を好転させることはできなかった。
決定機の数では上回ったソシエダだったが、シュートを決め切れずにポストに2本、クロスバーに1本当てたことが決定的な差となり、ヴィニシウス・ジュニオールとムバッペのPKにより0-2で敗れた。開幕からホーム3連敗、ここ3試合勝利なしの5試合1勝1分3敗。勝ち点獲得に苦しみ、降格圏一歩手前の16位にまで沈んでいる。
久保の今季ラ・リーガ成績は5試合(先発4試合)、332分出場、1得点0アシスト。マドリード戦成績は11試合(先発8試合)、715分出場、3連敗の2勝2分7敗、1得点0アシストとなった。
物議を醸したPK判定…久保建英も「説明を求めたい」
久保は試合後のインタビューにて、「今までの5試合の中で多分一番いい試合、いい内容だった」「今日は多分、僕が知っているソシエダを見せることができたと思うので、これを続けていけば追い上げていける」と自信を窺わせた。
敵将カルロ・アンチェロッティも「ラ・レアル(ソシエダの愛称)はとてもいいプレーを見せていたので、我々は勝利に値しなかったかもしれない」と認めていたように、敗北したとはいえこの試合のチームの出来は非常に良く、初スタメンを飾ったスチッチが即戦力になり得るパフォーマンスを発揮したという収穫もあった。
しかし、勝ち星を挙げるのに多くのチャンスを必要としないマドリードを相手にした場合、決めどころできっちりと決めなければ、勝つことはできないのも事実。アルグアシル監督が「我々は多くのことを上手くやり、素晴らしい試合をしたと思うが、力のあるビッグクラブは輝かしい試合などしなくても0-2で勝つことができる」と語ったことがそれを如実に表している。
また、この試合ではジョン・アランブルがヴィニシウスの足を踏んだことで吹かれた2回目のPKが物議を醸した。久保は「あのプレーは疑わしいものなので説明を求めたい」と不満を述べ、アルグアシル監督も「PKは1回だけだ。もし2回目のPKの笛を吹いてしまえば、我々はサッカーを台無しにしてしまう」と怒り心頭だった。あのPKがなければ――。試合内容が良かっただけに、ソシエダ陣営はその想いを強く抱いていた。
この試合において久保は、チーム中でもより多くの攻撃に絡んだ選手の1人だったように思えたが、特に地元紙からの評価は前節ヘタフェ戦に続き辛辣なものとなった。これは“タケならもっとできるはず”という期待の大きさからくるものだろう。チームトップクラスの高給取りで、ソシエダの重鎮の1人であるにもかかわらず、それに見合った活躍をしていないと判断されたのだと感じられる。
「ノティシアス・デ・ギプスコア」紙は、「より大きな期待があった。ラ・レアルのスター選手はもっと決定的な存在になる必要がある。休むことなくトライし続けたが、シュートをポストに当てたスチッチにパスを出しただけで、相手にダメージを与えられず、ほとんど何もできなかった」と言及。アランブル、セルヒオ・ゴメス、ウマル・サディク、シェラルド・ベッカーと並び、チームワーストの4点(最高10点)とした。
「エル・ディアリオ・バスコ」紙も、「キレがなく、ドリブルで中に入り込むこともできず、右サイドでチャンスを作り出せないことに絶望して終わった」と際立つ活躍ができなかったことを指摘し、ハビ・ロペス、セルヒオ・ゴメス、バレネチェア、オーリ・オスカルソンと同様にワーストタイの2点(最高5点)と採点。全国紙の「マルカ」「AS」の評価も1点(最高3点)と低かった。
地元記者は久保とソシエダを評価「もしかしたら今季最高だったかもしれない」
一方、試合後に話を聞いたスペインの国営放送局「RTVE」でレアル・ソシエダの記者を務めるミケル・エルシベンゴア氏は、地元紙とは反対の意見を持っていた。
「レアル・マドリードとの対戦は常に難しいものがあるが、前半のタケはより多くのチャンスを作り出し、より鋭いプレーを見せていた。しかし、後半はマドリードに先制を許したあと、フィジカル面の疲労からかあまり目立たなくなってしまった。我々はタケが昨シーズンのようなベストの状態に戻れることを大いに期待しているし、今後間違いなくそうなってくれるはずだ」
また低迷しているソシエダの状況について、「前にホームで敗れたラージョ・バジェカーノ戦とアラベス戦は悪い出来だったが、今日はより良いラ・レアルを見ることができたと思うし、もしかしたら今季最高だったかもしれない。シュート3本をポストとクロスバーに当ててしまい、PKで2失点……。最終的に残念な結果になってしまったが、今日のラ・レアルはより良い結果に値したはずだ」と、チームが復調の兆しを見せたことを強調した。
最後に改善点については「最終的には、オスカルソンやナイフ(アゲルド)、今日初先発を飾ったスチッチのように、加入したばかりの選手たちが重要な役割を果たすことになると思うし、そうならなければいけない。ミケル・メリーノとロビン・ル・ノルマンの退団は間違いなく大きな痛手だが、チームはその状況に早く慣れる必要があるし、できるだけ早く新戦力をフィットさせていかなければならない。また、今日は欧州選手権(EURO)に行っていた選手たちのフィジカル面の調子がまだ良くないという印象があった。今後試合を重ねて改善しなければならない要素がたくさんあると思う」と見解を述べた。
強豪と互角に渡り合えることを証明したソシエダが今後やるべきことは、それを結果に反映することだ。この後、17日にラ・リーガ第7節で対戦する、浅野拓磨が今夏加入したマジョルカ相手にそれを実践しなければならない。
久保にとっては、岡崎慎司や乾貴士、武藤嘉紀がプレーした2020-21シーズン以来、4季ぶりに日本人選手の所属するチームとの対戦を迎えることになる。
(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。