川崎、復調の兆しも…即戦力の活躍で”新たな問題点” 悩みの種となる「中盤の構成」【コラム】

新戦力の活躍で川崎が鳥栖に勝利【写真:徳原隆元】
新戦力の活躍で川崎が鳥栖に勝利【写真:徳原隆元】

新戦力の活躍で川崎が鳥栖に勝利

 川崎フロンターレは9月13日、J1リーグ第30節でサガン鳥栖と対戦し、3-2と勝利。後半アディショナルタイムに劇的な決勝弾を記録し、3試合ぶりの白星を手にした。とりわけ際立った存在感を放っていたのは、リーグ初先発を飾ったMF河原創だったが、これによりチームに新たな問題点が垣間見えた。

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 手痛い2連敗を喫した川崎は、14位と残留争いに巻き込まれる雰囲気が漂っていたなか、先月8月20日に鳥栖から加入した河原を先発で起用した。昨季がJ1初挑戦だったにもかかわらず走行距離でリーグ1位の記録を叩き出しただけあり、古巣対決でも無尽蔵なハードワークでピッチを縦横無尽に駆け回り、日本屈指のダイナモぶりを示していた。システム上は4-2-3-1だったが、河原の驚異的に広範囲なカバーリングにより、相方のゲームメーカーMF大島僚太がほぼ2列目でプレーすることができていた。

 これまで守備的MFを務めてきたMF橘田健人は左サイドバック(SB)に配置されたなか、前半11分に強烈なミドルシュートを突き刺し、起用に応えてみせた。橘田はこれまでも負傷者による緊急のSB起用で安定感あるパフォーマンスを披露してきた一方、河原を守備的MFに据えた場合、橘田にどのような役割を担わせるのか、指揮官の悩みの種となる新たな問題点が浮かび上がったように映った。

 試合後の記者会見で鬼木達監督に、河原の定着による橘田への影響について尋ねると、「健人は本当にいろんなポジションができるし、最後はボランチにシフトして機能させてくれて、今はいろいろなところでプレーしてくれている。彼のユーティリティ性はチームの強みになってきている」と、持ち前のマルチスキルを称えた一方、「僚太や(山本)悠樹を含め、あそこは必ず競争になってくる。これから連戦を迎えるわけだが、今日の先発2人が常に先発というわけではない」と、熾烈なポジション争いを仄めかしていた。

 これからはAFCアジアチャンピオンズリーグエリート(ACLE)の戦いも始まるため、中盤のローテーションも選択肢として見据えているのは確かだろう。一方、この過密日程を利用し、中盤構想の最適解を見出す意向も含ませていた。では、その最適な組み合わせはどうなっていくのだろうか。試合を観戦したサポーターに尋ねると、「河原とバナダ(橘田)のダブルボランチで、トップ下に僚太の配置で見てみたい」と意見を述べていた。

怪我から復帰した大島僚太【写真:徳原隆元】
怪我から復帰した大島僚太【写真:徳原隆元】

リーグ屈指のタレントが揃う川崎の中盤

 2年前にJ2ロアッソ熊本で12アシストを残している河原は、得点を演出するパス配給のレベルも高く、強烈なミドルシュートという”飛び道具”を備えている橘田ともバランスは良いだろう。また、両者とも守備的MFであることから、守備面に安定感がもたらされるのは間違いない。その一方で、現在トップ下を務めているMF脇阪泰斗を外すのは勇気のいることだ。今季リーグ戦5ゴール4アシストを残しているキャプテンの、ピッチ内外の貢献は計り知れない。

 それに、橘田が鳥栖戦でプレーした左SBにも、DF三浦颯太がおり、ここ数試合はDF佐々木旭がセンターバック(CB)起用となっているが、主戦場は左SBだ。A代表帰りでこの日は途中出場だったDF高井幸大が先発に戻り、今夏に獲得したコロンビア人CB(センターバック)のDFセサル・アイダルがフィットすれば、左SBのポジション争いの激化も予想される。そもそもの話、橘田は確かにさまざまなポジションでプレーできることが武器ではあるものの、やはり主戦場のボランチで稼働させるのが最も有効であるのは否めないうえに、スーパーサブで扱うようなレベルの選手でもない。

 アタッカー陣はその日のコンディションや直近の数試合による勢いなどを基準に先発を積極的に入れ替えることはポジティブな循環を生み出す。一方、中盤は最終ラインと前線をつなぎ、チームにバランスをもたらす安定性が求められる役回りでもあり、コロコロと試合ごとに選手を入れ替えるのが理に適っているわけではない。川崎には現在、脇阪・大島・橘田・河原といった、Jリーグ屈指の中盤が揃っているだけに、組み合わせの模索だけでなく、この4人全員を活かしたチーム構成を練り上げるのも、不振からの脱却を目指す川崎が復権するうえで重要なファクターとなり得るかもしれない。

(城福達也 / Tatsuya Jofuku)



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