日本代表でFW争い激化…J2にも“有力候補2人” 欧州にもタレント多数の招集外組【コラム】
日本代表9月シリーズで招集外だったFW候補をピックアップ
日本代表は、北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のスタートとなる9月シリーズで、中国に7-0、さらにアウェーでバーレーンに5-0で勝利し、理想的な船出となった。中国戦の7得点中、FWの上田綺世と途中出場の小川航基に得点はなく、得意のヘッドがクロスバーに嫌われた小川は「ああいう試合でストライカーが2点ぐらい取らないといけない」と悔やんでいた。
「このチームは2列目に素晴らしい選手がたくさんいて、例年というか……2列目の選手が点を取るような傾向のある日本代表ではありますけど、その中でもストライカーが点を取るというのが、サッカー界の壁を打ち破る大きな要因になっていくと思う」
そう小川が語れば、現在FWでファーストチョイスとなっている上田も「多分、1人しか出られないので結果を出してる選手が出られるんだろうし、信頼も勝ち取れるんだろうし、結局そこにはなってくると思う。それぞれの武器……武器というのは基本的にゴールを取る手段だと思うんですけど、またそれをいかに出して、結果を残すかっていうところになる」との考えを明かした。
バーレーン戦では鎌田大地のクロスを相手DFがハンドして得たPKを、スタンドから顔に当てられたレーザーポインターを意にも介さず左隅に決めて先制点をもたらすと、後半スタートに投入された伊東純也の折り返しをコントロールし、強烈な右足のシュートを叩き込んだ。さらに上田はチームの3点目となる守田英正のゴールをアシスト。中国戦と同じく、終盤に上田に代わってピッチに立った小川も、中村敬斗のクロス性のシュートがGKに弾かれて浮いたボールを押し込むストライカーらしいゴールで、ダメ押しの5点目を記録した。
5点中、FWが3ゴールしたのは森保ジャパンにとって大きな収穫だが、残りの最終予選、さらに北中米W杯に向けて、激しい競争が起きてきそうなのは変わりない。現在1トップを争う上田と小川、今回は出番がなかったが、パリ五輪世代のエースからA代表のエースへの飛躍を目指す細谷真大、シャドーとのポリバレントとしても重宝されそうな浅野拓磨といった選手に加えて、今回はメンバー外だった選手がここから食い込んでくるのか。
上田や小川にはない機動力と縦の推進力…町野修斗は“筆頭格”
その筆頭格と見られるのが町野修斗(ホルスタイン・キール)だ。東京五輪にはかからなかったが、ギラヴァンツ北九州で台頭し、湘南ベルマーレで得点を積み重ねると“第一次森保ジャパン”の終盤に滑り込み、カタールW杯の最終メンバーにも追加招集で選ばれた。残念ながら出番なく大会を終えた町野は海外挑戦を決意し、ドイツ2部だったキールを1部昇格に導く活躍を見せた。
ドイツ1部デビューとなったホッフェンハイム戦ではスタメンで4本のシュートを放ち、初ゴールも記録。現在10番的なポジションを担っているが、代表復帰となれば1トップが主戦場となるはず。しかし、上田や小川にはない機動力と縦の推進力があるため、2シャドーでも稼働できそうだ。そのメリットとして、クロスのターゲットを1枚加えられることになり、セットプレーにもプラスになることは間違いない。
その町野と湘南で2トップを組んでいた大橋祐紀(ブラックバーン)も、サンフレッチェ広島での活躍を経て、現在は“海外組”となった。チャンピオンシップ(イングランド2部)で開幕戦から2試合連続得点を挙げるなど、すでに公式戦で3得点1アシストを記録している。しかしながら、まだスタメンに定着できてはおらず、1トップの場合はセネガル出身の大型FWマクタール・ゲイェがファーストチョイスで、大橋はジョーカー的な位置付けだ。
典型的な1トップではないこともあり、監督に2トップを選択させるか、町野のように所属クラブでは2列目で働き場所を得ながら、得点を狙っていくのが、1つの成功ルートと言えるかもしれない。ブラックバーンでのさらなる活躍が条件となるが、代表入りとなれば1トップと2シャドーの両ポジションで候補になっていくはず。トップスピードからでも落ち着きのあるシュートに持ち込めるのが大橋の強みで、精力的なプレスからのショートカウンターも得意としている。町野ほど上背はないが、コンタクトプレーにも強く、クロスに飛び込む形などでも違いを出せるだろう。
森保ジャパンの経験者であるオナイウ阿道(オセール)もここから再招集される可能性のある1人だ。横浜F・マリノスでブレイクを果たし、フランスに渡って4シーズン目。トゥールーズから移籍したオセールで救世主的な活躍を見せて、リーグ・アン昇格の立役者となった。ここまで開幕2試合で無得点だが、ワイドからシュートに持ち込む積極性は目を見張る。4-2-3-1なら左サイドハーフ、4-4-2なら2トップで起用されるが、前線で収める能力は日本人FWの中でかなり高いレベルで、代表の1トップでも勝負できる。爆発的なスピードがあるわけではないが、動き出しのタイミングがよく、躊躇せずに飛び出していく迫力はライバルにない強みだ。
J2で得点量産の2選手…国内組もタレントが豊富
そのほか、もちろん古橋亨梧(セルティック)も引き続き有力候補だが、いわゆるターゲットマンではないため、2シャドーのところである程度、起点を作れる3-4-2-1であれば、森保ジャパンにおける4-2-3-1や4-3-3よりも、活躍の余地がある。国内組に目を向けるとJ1で15得点のジャーメイン良(ジュビロ磐田)を筆頭に、ハイスケールなフィニッシュで注目を集める191cmの原大智(京都サンガF.C.)、前線で突破力と決定力の両面を発揮する木村勇大(東京ヴェルディ)などは、どこかで招集されてもおかしくない。
FWというのは目に見える結果を出せば、いきなり代表スタッフの目を向けることができるポジションでもある。現在はJ2で規格外の決定力を見せる小森飛絢(ジェフユナイテッド千葉)や現在J2得点トップの谷村海那(いわきFC)などが、ここからステージを上げていくことができれば、最終予選の終盤戦や本大会に向けた残り1年間の中で森保ジャパンのニューヒーローになっていってもおかしくない。
その意味では後藤啓介(アンデルレヒト)や福田師王(ボルシアMG)、道脇豊(ベフェレン)のような若くして海を渡ったストライカーの台頭にも期待したいが、まずは町野をはじめ大橋、オナイウあたりが、上田や小川との争いに加わってくるために、まずは所属クラブでのさらなる活躍に期待したい。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。