8歳でスペイン行きも「レアルやバルサは縁が遠かった」 無名の日本人MFが描く“成り上がり”【インタビュー】

足立開は8歳の頃からスペインで挑戦を続け、今季は3部のアンテケラCFに所属【写真:Antequera C. F.】
足立開は8歳の頃からスペインで挑戦を続け、今季は3部のアンテケラCFに所属【写真:Antequera C. F.】

足立開はスペイン3部アンテケラと契約してプロキャリアをスタート【後編】

 プリメーラRFEF(スペイン3部相当)のグループ2に属するアンテケラCFのMF足立開は、8歳でスペインへ渡り、街クラブから這い上がってきた苦労人だ。異国の地での挑戦も早12年目、待望のプロ契約を勝ちとったが、日本や世界的に見ればまだまだ無名の存在。そんな19歳のアタッカーが見据える目標とは――。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史/全2回の2回目)

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 2022-23シーズン、サバデルに拠点を置くユース年代2部のメルカンティルで技術を磨いた足立は、ブルゴスのクラブであるブルゴスU.Dへ移籍。1年を通して試合経験を積むことができ、手応えとともに、代理人から朗報が届いた。

「代理人の方から、『もしかしたら(スペイン)3部のチームに挑戦できるかもしれない』と話をいただきました。スペイン国外からの話もあったなかで、レベル的にスペイン3部がいいなと。もしかしたら出場機会に恵まれないかもしれないけど、1年チャレンジしてみようと思いました」

 スペイン3部に相当するプリメーラRFEFは、2021-22シーズンに創設されたリーグで、グループ1、グループ2にそれぞれ20チームが属する。足立は「スペイン3部はしっかりしたプロ」と語り、挑戦の決断に至った1つの成功例を挙げる。

「FCバルセロナのフェルミン・ロペスは、(2022-23シーズンに)3部(のリナレス)に期限付き移籍して、10番を背負って(12ゴールと)凄い活躍を見せて、シャビ前監督が目を付けて、バルセロナに戻りました。そこからスペイン代表にも選出され、パリ五輪では日本戦で2ゴールを決めています。スペイン3部は市場としても見られているので、まずは結果を出して出場機会を得ていきたいと思います」

ブルゴス時代には地元紙で特集されたことも【写真:本人提供】
ブルゴス時代には地元紙で特集されたことも【写真:本人提供】

 スペイン1部セビージャやカタール1部アル・ワクラとのフレンドリーマッチで自分なりに手応えを掴んでいたが、残念ながら、現地時間8月25日に行われたリーグ開幕節CFフエンラブラダ戦(0-0)で足立はベンチ外。続く9月7日の第3節アトレティコ・マドリードⅡ戦(1-0)もメンバー入りできず、自身初となるスペイン3部のレベルの高さを改めて感じているという。

「チームに25人が所属しているなかで、ベンチ入りは18人。開幕戦はベンチ外でした。3部はプレースピードが速いですけど、1対1は通用する。ただ、1人はかわせても2人目のカバーも早いので、簡単には得点に結びつかない。DFのレベル以上に、GKのレベルがぐんと上がって、決定力が必要だと感じています。自分はスピードを大事にしていますけど、いくらスピードを武器にしていると言っても、このリーグのDFは大体体重80~90キロで、そういう選手と当たったらバランスを崩してしまう。今は身長170センチ・体重60キロなので、体重60キロ後半は欲しいし、フィジカル面が課題だと思っています」

メルカンティル時代の足立。2022-23シーズンに技術に磨きがかかった【写真:本人提供】
メルカンティル時代の足立。2022-23シーズンに技術に磨きがかかった【写真:本人提供】

世界最高峰のラ・リーガ挑戦が目標

 日本人選手としてスペインで挑戦を続ける以上、1部の名門レアル・マドリードの下部組織で育った中井卓大(現SDアモレビエタ)や、FCバルセロナの下部組織で研鑽を積み、今やラ・リーガを代表する選手となった久保建英(現レアル・ソシエダ)と比べられることは宿命だろう。それでも、足立は決して諦めず、街クラブから上を目指してきたことに胸を張る。

「スペインに来て、プロになる日本人選手は決して多くないです。同じ時期に来て諦めた選手、自分よりもあとから来て途中で帰ってしまった選手は山ほどいました。できるだけ継続していくこと、自分のクラブで試合に出場して、辞めないで続けることが大事。こちら(海外)にいる限り目はある。久保選手や中井選手はエリート。僕はレアルやバルサは縁が遠かった。そういう選手たちとはまだ差があるので、少しでも追い付いていきたいし、同じ道を目指す人に勇気を与える存在になれればいいなと思います」

 2024-25シーズンは足立にとって、我慢の1年になるかもしれない。それでも、世界最高峰と言われるラ・リーガ挑戦という大きな目標に向かって、歩みを止めるつもりはない。

「今年は3部でリーグ戦デビューして、実戦経験を積んでこのレベルのサッカーに慣れたいです。スペインでは、久保選手のことはすごく言われます。ラ・リーガの顔ですし、リーグ屈指のウインガーなので。『タケは凄いよね』と、チームメイトになった選手はだいたい言います(笑)。自分もそんな存在になりたいので、自分のベストを尽くしてラ・リーガまで行きたいし、そのために自分のできることはなんでもやるつもりです」。

 スペインの地で、新たな日本人選手として、足立が名を馳せる日もそう遠くはないかもしれない。

[プロフィール]
足立開(あだち・かい)/2005年4月14日生まれ。鳥取県出身。中井卓大と同様にマドリードキャンプ参加をきっかけにスペインへ。街クラブを渡り歩き、プロ1年目となる今季は、プリメーラRFEF(スペイン3部相当)のアンテケラCFと契約。サイドを主戦場とするアタッカーで、1対1からの突破や味方との連係で相手のディフェンスラインを崩すプレーを得意とする。

(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)

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