2戦連続ベンチ外も…際立った長友佑都の存在価値 日本代表で敵う選手はいまだいない
37歳DF長友佑都が練習場で人一倍声を出し、選手とコミュニケーションを図っていた
森保一監督が率いる日本代表は現地時間9月10日、2026年北中米ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選の敵地バーレーン戦で5-0の勝利を飾った。9月の招集メンバーに選ばれながらも2試合とも“ベンチ外”となった37歳DF長友佑都。それでも練習ピッチの場面から一番に響いていたのは、ベテランの明るい言葉の数々だった。
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5日に埼玉スタジアムでの中国戦(7-0)を終え、6日にはバーレーン現地へ。7日からピッチでのトレーニングが開始され、大きな声で鼓舞していたのが長友だった。「へい、ヘンリー!」と新戦力のDF望月ヘンリー海輝の名前を呼んだかと思えば、「(南野)拓実それはお前!」と鳥かご(パス回し)で大きなジャスチャーを見せた姿もあった。ちなみに、練習が終わり日が落ちた現地18時過ぎの気温は30度超えで、じっとしていても汗が絶えず流れ続けるような過酷な気候である。
鳥かごは3つのグループに分かれて行われ、毎日メンバーはシャッフルされていた。だが長友のいるグループはすぐに判別がつく。今回招集された森保ジャパンのなかで、常にチームの士気を上げモチベーションを維持させた要因は、間違いなく長友のそうした行動も大きい。3バックの採用で、これまで4枚で組んでサイドバック(SB)を担ってきた長友、中山雄太、菅原由勢ともに中国戦、バーレーン戦で出番なし。長友に至ってはベンチにすら入らなかった。
「練習前の時間とか練習後の時間とかもそうだし、常にこの厳しさっていうのは自分なりには伝えてた。僕はね、2009年のバーレーンのアウェーの時で自分も試合に出て、アウェーの独特の雰囲気と歓声とそういったところで本当に厳しい悔しい思いをしている。ちょっと油断をしてしまって足元すくわれたっていう経験が何度もある」
苦い経験値は、若い選手たちに引き継ぐ。親子の差ほど年齢差のある選手もいるなかで、明るい長友の存在は特に際立っていた。10日のバーレーン戦もスタンド観戦。前日のスタジアム練習ではピッチに風が抜けるような感覚があったが、試合当日は入場無料となり駆け付けたバーレーンサポーターが醸し出す熱気と、籠るような湿気が相まってめまいがするほど暑かった。それでも大量5得点と圧勝し、相手サポーターは3点目あたりから次第に帰っていく様子が目立つ。ブーイングが鳴り響いていた会場も、日本サポーターの声援にかき消されるようになっていった。コーチとしてチームに参加した長谷部誠氏とともに、長友は遠くからその様子を眺めていたはずだ。
勇敢に戦った日本代表の選手たちは試合後、記者の質疑応答に答えたあと息つく間もなく帰路へ。空港でも晴れやかに手を振る菅原の姿もあった。そのなかで長友は真剣な面持ちで、黙って乗り場へ向かう。さまざまな思いを抱えたベテランはすでに、次の試合で自分に何ができるかを見据えているようだった。
(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)