ターンオーバーは敷かない可能性も? 森保ジャパン、バーレーン戦スタメン入れ替えの可能性を検証【コラム】

バーレーン戦でも3バックを継続?【写真:徳原隆元】
バーレーン戦でも3バックを継続?【写真:徳原隆元】

明確なターンオーバーは敷かない見込み

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選がスタートし、森保一監督率いる日本はホームで中国に7-0の大勝を飾った。6月に本格導入した3バックが攻守を通じて上手く機能。セットプレーも練習していたというとおりのデザインがハマって遠藤航による先制点につながり、前半の終わりに三笘薫が追加点、後半の立ち上がりに南野拓実がゴールラッシュ、最後はフル出場の久保建英が締めくくるという、いわばパーフェクトゲームだった。

”第1次森保ジャパン”からベースにしてきた4-2-3-1、前回の最終予選で途中から導入された4-3-3(森保一監督は4-1-4-1と表現)も選択肢として残しながら、満を持して3バックを最終予選のスタートに持ってくることで、流れの中で可変したり、時間帯で同じメンバーのまま4バックにシフトすることもできるなど、自在性の高いチームになってきている。ただ、そうした戦い方を可能にしているのは2022年のカタールW杯から主力がほぼ変わることなく、共通理解ができているからでもあるだろう。

 次の相手はアウェーでオーストラリアに勝利したバーレーンだ。彼らは日本より長い距離を移動してホームに帰ってきているが、強豪を撃破して自信を付けていること、何より地の利を生かせるだけに、日本にとっても侮れない相手になることは間違いない。アジアカップでは4-1-4-1だったが、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のドラガン・タライッチ監督に代わり、システムも4-4-2を使ってきている。基本的な形は前半の中国と同じだが、よりマンツーマン気味にタイトな守備をしてくるため、もし日本が3-2-4-1を継続すれば、日本のアタッカー陣の立ち位置に応じて、5バック気味にハメてくるかもしれない。

 そういう相手に対しても、日本は3バックだろうと、4バックだろうと事前のスカウティングと同じところ、違っているところを選手たちが観察しながら、ピッチ上でアジャストしていくはず。それができなければリスタートや飲水タイムを使って、森保監督からも具体的な指示は入るだろうが、ボランチの遠藤航キャプテンを中心としたピッチ内解決力は日本の強みにすらなりつつある。ここで連勝を飾って、最終予選の第1の山場と見られるアウェーのサウジアラビア戦につなげたいこともあり、おそらく明確なターンオーバーは敷かないと見られるが、スタメンの入れ替わりがあるポジションはどこか。

中国戦で1ゴール2アシストの伊東純也【写真:徳原隆元】
中国戦で1ゴール2アシストの伊東純也【写真:徳原隆元】

伊東はシャドーではなく右ウイングバックが主戦場か

 中国戦でスタメンではなかった選手で、スタメン起用の可能性が最も高いのは伊東純也だろう。中国戦は右ウイングバックで堂安律が先発し、後半すでに4-0とリードした時間帯に、同ポジションを受け継いだ。そこからクオリティーを落とすことなく、代表復帰を祝うチームの5点目を記録すると、右からのクロスで前田大然のゴールに導き、最後は久保建英による7点目をアシストした。

「自分が出たら、やることはゴールに絡むことだけだと思う。もちろん守備もしますけど、そこが一番求められてることだと思うので、ゴールに絡めればいいかなと思ってます」

 そう語る伊東は現在のところシャドーではテストされておらず、3バックのままであればスタメンでも右ウイングバックが主戦場になるはず。中国戦では前田大然と同時に出た中で、高い位置を取る時間帯が多かったが、容赦なくロングボールを蹴ってくるバーレーンに対して、クロスを狙うサイドアタッカーを潰しに行くのか、逆サイドからの攻撃に応じて、意図的にポジションを下げて、最終ラインの対角を埋めるのか。攻守でポジションをどう前後させていくかは見どころだ。

 右サイドの起用法に関して、3バックのままだと見えにくいのは菅原由勢の起用法だ。本質的に右サイドバックの選手だが、ポリバレントな能力が高く、3バックなら6月の試合で使われた右ウイングバックに加えて、右センターバックもこなせる。ただ、中国戦で板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹のセットが安定していただけに、最終予選の2試合目でそこをいじってくるかは疑問がある。

 もちろん、サイドアタックからクロスを多用するバーレーンの特長を想定して、右ウイングバックのスタメンを菅原にして、伊東は中国戦と同じく、勝負のカードとして取っておくプランもないとは言えない。4バックなら右のファーストチョイスだが、バーレーン戦での菅原の起用法は今後のシリーズでのサイドバックの構成にも関わるポイントだ。

 ボランチは中国戦の後半途中で下がったキャプテンの遠藤航が、バーレーン戦でもスタメン起用されることは堅い。注目ポイントはその相棒が誰になるのか。中国戦でスタメンだった守田英正は攻守で効いており、途中で遠藤からキャプテンマークを引き継ぐと、最後は小川航基のヘッドがクロスバーにあたり、相手ボールになりかけたところをマイボールにして、7点目につなげるなど、フル出場で非常に集中力のあるプレーが目に付いた。それだけにコンディションに問題がなければ、引き続き遠藤と守田のセットになることも考えられるが、田中碧も中国戦で途中から出てアピールしており、バーレーン戦でスタメン起用される可能性は十分にある。

森保一監督の選手起用にも注目だ【写真:徳原隆元】
森保一監督の選手起用にも注目だ【写真:徳原隆元】

森保監督が選択する選手起用は?

 中国戦で出番のなかった鎌田大地もボランチは可能だが、遠藤、守田、田中とスペシャリストが充実している状況で、より攻撃的な2シャドーでの起用が想定しやすい。しかも、同ポジションは久保建英、南野拓実ともに中国戦はフル出場だったので、選択肢の多い2列目ということもあって、森保監督もスタメン変更をしやすいポジションだ。鎌田がここで出れば、基本は前目で攻撃に絡みながら、バーレーンに押し上げられた時に、ボランチの守備を助けながら、押し返すようなプレーもできる。2列目でありながら、必要に応じてボランチ的な役割をこなせる引き出しの多さは鎌田の強みだろう。

 もし鎌田が2シャドーでスタメンなら、コンビを組むのは浅野拓磨や細谷真大のような、FWタイプになる可能性も。また中国戦では右ウイングバックだった堂安が、シャドーで起用されるケースなど、組み合わせも多く、いい意味で森保監督を悩ませるポジションだ。1トップは上田綺世が引き続きスタメンで、小川航基をどこかの時間帯で代わりに入れるというのが最もオーソドックスだ。ただ、パリ五輪世代のエースである細谷も上田や小川と違った裏を狙うスタイルで、戦術的な違いを生み出せる。それでいてポストプレーもこなせるので、相手の出方によって機能不全に陥りにくい。課題は決定力に波があることだが、最終予選で細谷の一発が出れば、チームが活性化することは間違いない。

 左ウイングバックは中国戦で、やはり三笘がファーストチョイスであることを印象付けたが、交代出場でゴールを決めた前田、6月シリーズで評価を高めた中村敬斗がおり、三笘を無理使いする必要性もない。3バックのオプションとしては左ウイングバックに中村か前田を使い、三笘を左シャドーで組み合わせるプランも試してほしいが、準備期間も限られるなかで、今回のシリーズでは右の伊東と同じく、アウトサイドに専念するのではないか。ただし、バーレーンに苦戦を強いられて、勝負どころになれば、森保監督は練習であまり仕込んでいなかった形でも、使っていくかもしれない。

 何より中国戦に続く勝利が求められるバーレーン戦だが、ホームの中国戦より体力の消耗も想定されるなかで、森保監督がどういう選手起用をしていくかは10月のシリーズにも大きく関わる注目ポイントだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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