伊東純也が「大事なことを教えてくれた」 日本代表OBが感嘆…7得点より大きな“意識”【見解】
【専門家の目|金田喜稔】代表復帰戦で活躍の伊東…ゴールは「示唆に富んでいる」
森保一監督が率いる日本代表(FIFAランキング18位)は9月5日、2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の初戦で中国(同87位)と対戦し、大量7ゴールで初陣を飾った。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、「復帰戦で伊東純也が改めて大事なことを教えてくれた」と持論を展開した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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MF伊東純也(スタッド・ランス)は今年1月に開催されたアジアカップ期間中、一部週刊誌報道を受けてチームから離脱。9月シリーズのメンバーに招集されると、後半18分から途中出場し、7か月ぶりに代表戦復帰を果たした。さらに同32分には10か月ぶり(324日ぶり)となる代表弾をマーク。直後に会場は大声援に包まれ、伊東はスタンドのファンに向かって一礼し、試合後には「自然に出ました。本当にありがとうございます」と明かしていた。
1ゴール2アシストの活躍で存在感を示した伊東について、金田氏は「サポーターやチームメイトたちを含めて、『おかえり純也!』というゲームだった」と言及し、とりわけゴールにつながったシュートへの姿勢を称賛している。
「伊東がターンから積極的にシュートを放ち、結果的に相手に当たってゴールが生まれた。あの強引さと積極性は、今後のW杯本大会を見据えると必ず必要になる。何も綺麗に崩して決めるゴールだけがすべてじゃない。日本の7ゴールはどれも素晴らしいものだったが、そのなかで強引さと積極性から生まれた伊東のゴールは示唆に富んでいると思う」
中国戦で7ゴールと快勝した一方、前半12分の先制点後は前半アディショナルタイムまでこじ開けられない時間が続いた。金田氏はミドルシュートをさらなる改善ポイントに挙げている。
「中国戦では、日本が高い位置まで進入できていたし、より可能性の高いパスを選ぶケースが多かったのは頷ける。とはいえ、日本代表にはキック精度が高い選手が多いだけに、ミドルシュートでより脅威を与えられるようになると、強力なアタッカー陣がさらに生きてくる」
アジア最終予選突破だけを考えれば、文字どおりの「パーフェクトゲーム」。しかし日本代表が掲げる目標はW杯ベスト8以上である点を踏まえて、金田氏はこう続ける。
「全員がシュートを狙っているという姿勢を見せ、実際にミドルシュートで脅威を与えられれば、相手のマークがずれたり、陣形の綻びも生まれやすくなる。そして高精度のミドルシュートを打つことで、相手に当たってこぼれたり、ゴールが生まれたりする。そうしたラッキーを引き寄せるのも、強引さと積極性があってこそだ。拮抗したゲームになればなるほど、そう簡単には崩せない。日本がW杯ベスト8以上を目指すなか、ミドルシュートの意識と精度はより高めたいと感じた部分だった」
そんな金田氏の目に留まったのが、伊東の強引さと積極性だった。伊東は「相手に当たったけど良かった」と自身のゴールを謙遜したが、金田氏は次のように締めくくった。
「自分も現役時代にそうだったからよく分かるが、やっぱりきれいに崩して決めたゴールは気持ちいい。でも強引にシュートを打って、こぼれ球を詰めたり、相手に当たって入ったゴールでも1点は1点。それは戦術うんぬんではないし、戦術を超えた領域。でも、そうした運的要素もサッカーの面白さだ。すべてのゴールが綺麗に決まる必要はない。復帰戦で伊東純也が改めて大事なことを教えてくれたと思うし、その意味で象徴的なゴールだった」
(FOOTBALL ZONE編集部)
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。