W杯予選へ生かすべきアジア杯の“教訓” 15年と24年で共通…元主将が指摘する危険な心理

W杯最終予選へ生かすべきアジア杯の教訓とは?【写真:ロイター】
W杯最終予選へ生かすべきアジア杯の教訓とは?【写真:ロイター】

吉田麻也が森保ジャパンを考察、足元をすくわれないための教訓

 米メジャーリーグサッカー(MLS)のLAギャラクシーに所属する元日本代表DF吉田麻也が、スポーツチャンネル「DAZN」の「内田篤人のFootball Time」に出演し、現在の森保ジャパンについて語った。

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 森保ジャパンは9月5日から、2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の戦いをスタートさせる。3年前のカタールW杯まで3大会連続でW杯に出場し、キャプテンも務めていた吉田は、まず現在の日本代表の最終ラインについて語った。

 センターバックにはイングランド1部アーセナルのDF冨安健洋(9月は怪我で不在)、ドイツ1部ボルシアMGのDF板倉滉、同バイエルンのDF伊藤洋輝(9月は怪我で不在)と、世界的クラブでプレーする選手を擁している。「能力が高いのは高いんですけど、市場も日本の選手を評価しているなと。僕らがヨーロッパに行った時とは、時代が変わってきていると思いますね」と、吉田は欧州のトップクラブで主力としてプレーする選手が増えた現状を分析した。

 そして、冨安や板倉は元々の能力が高かったのか、飛躍的に成長してきたのかを聞かれると「(板倉)滉は伸びてきた。でも、トミは入ってきた時からモノが違うなと思っていたし、すぐに抜かれるなと思った。今まで正直、そう思ったことがなかった。トミが(代表に)入ってくるまで」と言い、内田篤人氏に「何が良かったの?」と聞かれると「弱点がない」と即答し、その重要性を説明した。

「これはヨーロッパで成功するうえで、すごく重要なことで。弱点がないというのは、すごいこと。唯一の弱点といえば、怪我が多いこと。ケアもめちゃくちゃ頑張っている」と、冨安について語った。また板倉については「滉も『センターバック向きなのか?』ともっと若い時、代表に入ってきた時や東京オリンピックまでは思っていた。ボランチの選手のような気がするなと個人的には思っていたんだけれど、でも、よくあるじゃん? ボランチの選手がセンターバックで出場機会を得て、そこからまた前に行くみたいな。若いうちにいろんなポジションをやるのも悪くないと思っていた。でも、最近はセンターバックらしくなってきた。落着きとか、対人のところ。ブンデスでパワーで勝負してくる選手への対応がもっと上手くなれば。足は速いし、スピードのある選手への対応はいいけど、力のある選手への対応はまだ伸びるなと客観的に思う」と、同じポジションの後輩たちについて語った。

 続いて、イングランド1部リバプールMF遠藤航、同クリスタル・パレスMF鎌田大地、ポルトガル1部スポルティングMF守田英正らのいる中盤についても、「中盤もいいよね。守田もイギリスとかイタリアに行ったら、また変わるけどなと思うけどね。違うリーグに行くと、また新たな価値観、新たなサッカーのスタイルを学ぶから。経験しないと分からないから、リーグを変えることは新たな発見とか、自分の成長のチャンスかなと個人的には思います」と、オランダ、イングランド、イタリア、ドイツを渡り歩いた自身の経験をもとに、異なるサッカーに触れる経験の重要性を語った。

アジアカップ敗退の要因は「15年の俺らと一緒だね」

 そんなタレント揃いの日本だが、今年1月に行われたアジアカップでは、イラン代表に1-2で敗れてベスト8で敗退となった。この時の日本代表に足りなかったものについて、吉田は「アジアカップを見ました。全部データをもらって見ていました」と言い「アジアカップを獲るという決意が必要ですよね。そこが欠けていたでしょ。明らかに。選手も終わってから何人かそういうコメントをしていた選手がいたし。15年の俺らと一緒だね。普通にやれば勝てるだろうって」と、自身の見解を語った。

 吉田が言及した2015年大会では、日本は準々決勝に進出したがUAEに1-1で迎えたPK戦に4-5で敗れた。2011年大会には、内田氏とともに出場して優勝した吉田だが、この2つの大会の違いについて言及する。

「2011年はさ、結構、みんな必死に戦ってさ。ギリギリの試合がいっぱいあったでしょ。あれ(吉田のヘディングでアディショナルタイムに1-1に追い付いたパレスチナ戦)からスタートして、次も(川島)永嗣くんが退場したり、どっちに転ぶか分からない戦いで、緊張感をもってやっていた。けれども、2015年の時はその前のW杯で良い結果を出せなくて『アジアでは勝って当たり前だろう』という気持ちで挑んで足元をすくわれた」

 そして、2015年の時と似た雰囲気を感じたという今年のアジアカップについて「外から見ているから中とのギャップはあると思うけれど」と前置きをして、「イランとの試合で相手が試合の立ち上がりから意地でも勝ってやろうとしていた球際のところでの雰囲気と比べて、ちょっといなそうとしている日本の入り方からして『危ないな』と思っていた」と、プレーの気迫に差を感じていたと話した。

ロングボール戦術に苦戦…光った中東の上手さ「なんでヨーロッパに来ないの?」

 そのうえでメンバー構成が重要になるという考えを示した。「いろんなチームを見ていて思うけど、上手い選手を26人集めればいいわけじゃなくて。いろいろな必殺技を持っていたり、特殊能力を持っていたり、そういうことがすごく大事だなとアジアカップを見て思う。大会を見て思います。ラッキーボーイもそうだし、出ないけれど、そういう勢いのある選手もそう。アクシデントでチャンスをモノにする選手もそう。それがアジアカップの時は厳しかった」と、流れを変えられる選手の不在を1つの課題に挙げた。

 また、対戦相手も日本を分析してくる。アジアカップでは、前線のストライカー目掛けてロングボールを放り込んでくる戦い方に苦戦したが、「中東特有のリーチとか、バネ、力強さはあるよね。あとはずる賢さ、上手さもある。意外に上手い。簡単に行ってハメられるほど甘くない」と吉田が言うと、内田氏は「この人たちヨーロッパでできるじゃないかと何回も思っていた」と返すと、吉田氏は中東の選手たちが欧州に移籍しない理由を説明した。「それこそサウジアラビアと最終予選の試合をした後、ドーピングルームで一緒になって『なんでみんな、こんなに上手いのにヨーロッパにこないの?』と話したの。そうしたら『俺らはサウジでお金がいいから。行く必要がないだろう』と言われて、何も言えなかったもんね」と、明かした。

 欧州の舞台で日常を戦っている選手がほとんどとなった日本だが、今回のアジア最終予選でも、中東勢には苦しめられるかもしれない。最終予選のポイントについて吉田は「ホームで絶対に負けないことと、アウェーで相手に勝ち点を与えないこと。それはどの時代も変わらない。ザックさんの時も、前回もそうやってきた。逆にそれができないで前回の入りみたいになると、自分たちが苦しい立ち位置になる。良いスタートを切らなければいけない」と言い、日本が抱えるであろう問題も指摘した。

「最初の9月、10月、11月はヨーロッパの選手にとってはかなりハードになる。最終予選を戦いながら自分のクラブでポジション争いがある。特にビッグクラブに行けば行くほど、そのポジション争いは熾烈になる。自分もポジションを確保できずに代表で苦しむという良くないサイクルに陥ったことがある。そうならないように、万全のコンディションで戦ってほしい」と、現在の日本代表にエールを送った。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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