タオル回収は「非紳士的行為」 日本代表OBが持論、議論呼ぶ珍事へ「審判にも声明を出してほしい」【見解】

ロングスローを投げる望月ヘンリー海輝【写真:(C) FCMZ】
ロングスローを投げる望月ヘンリー海輝【写真:(C) FCMZ】

【専門家の目|栗原勇蔵】浦和のフィジカルコーチが町田のタオルを“持ち去り”

 FC町田ゼルビアは8月31日、国立競技場で行われたJ1リーグ第29節浦和レッズ戦で2-2と引き分けた。試合前半には、町田がロングスローを試みる際に浦和のフィジカルコーチが用意してあったタオルを回収する場面があり話題を呼んだが、元日本代表DF栗原勇蔵氏は「タオルがルール違反なのかどうか、レフェリーも明確に打ち出さないといけない」と持論を展開している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 ホームの町田は前半10分、右サイドのタッチラインを割ったボールをDF望月ヘンリー海輝が持ち、ピッチサイドに用意されていたタオルで水気を取ってからボールを投げようとした。

 しかし、テクニカルエリアを出ていた浦和のフィジカルコーチであるヴォイテク・イグナチュク氏が、望月のうしろにあったタオルを袋ごと回収。望月は少し唖然とした表情を浮かべつつ、そばに置いてあった別のタオルでボールを拭き、ロングスローを試みた。

 ロングスローは相手選手に弾き返されてチャンスとはならなかったが、イグナチュク氏がタオルで自身の頭を拭く行為に及び、さらには第4審から口頭で注意を受ける場面もあり、SNS上では「タオルを回収した」と注目を集めた。

 日本代表OB栗原氏は、「横浜F・マリノス戦でも、(ハリー・)キューウェル前監督が自ら走って行ってタオルをぶん投げたことがありました」と回想。「昔からタオルでボールを拭いてロングスローなんてあった。ルール違反なのかどうか、レフェリーも明確に打ち出さないといけない。ルール上問題ないとするならば、相手の物を取って妨害する浦和のコーチの行動は非紳士的行為となる」と続けた。

 イングランド2部〜4部リーグを運営するEFLは2023年6月、24-25シーズンからスローイン時にタオルを使用してはいけないというルールを発表している。一方で、Jリーグには、使用を禁止する明確なルールはなく、試合開始時にピッチサイドにはタオルが用意されていた。

 栗原氏は、「町田のロングスローを恐れているからこそ」としたうえで、レフェリーにも“リクエスト”を出している。

「GKはキーパーグローブが濡れているからタオルで拭く。滑る物を拭くのはなんらおかしなことではない。ルール上ダメなら町田もやらないはずで、ルールブックで言及されていれば論争にはならない。もし、ルール上NGなら、タオルが用意してある時点で審判が取り締まらないとダメだと思います。『ルールブックに書いてなければ何をやってもいいのか』という声もあるかもしれないけど、勝負に徹しているだけ。ただ、毎回ロングスローにかける時間が長いと揉めるなら制限時間を設けるとかしないと、議論は一生続く。審判にも声明を出してほしいですね」

 町田では、FW藤尾翔太がPK時にボールに水をかけることで大きな話題となっているが、ロングスローでのタオル使用もしばらく論争を呼びそうだ。

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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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