異例の3日前移動…伝えられていた“当日移動開催”の可能性 湘南・山口監督が下した決断

湘南の山口智監督【写真:徳原隆元】
湘南の山口智監督【写真:徳原隆元】

前日練習は芝生の敷かれた公園で行った

 湘南ベルマーレは8月31日、J1リーグ第29節でサガン鳥栖対戦し、2-1で勝利した。残留を争う鳥栖との直接対決を制して掴んだ貴重な勝ち点3。湘南の山口智監督は「3日前に来て難しさのある中で勝てたというのは良かったと思います」と試合後に言及。台風10号の影響で試合開催も危ぶまれる中で、勝利の裏側には指揮官が下した“英断”があった。

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 前半31分、右サイドからDF岡本拓也がクロスを入れ、DFに当たって溢れたところをMF茨田陽生がシュート。そのこぼれ球をFW鈴木章斗が押し込んで先制した。後半39分に課題のセットプレーから同点に追い付かれたが、その3分後にFW福田翔生が右足でネットを揺らして勝ち越し。熱戦に終止符を打った。

 日本列島は進路予想が二転三転する台風10号に翻弄された。Jリーグも大きな影響を受け、この日は3試合が中止に。交通機関に大きな乱れも生じたなかで、湘南は台風の影響が出る前の28日に鳥栖に入っていた。週末にかけて交通網が麻痺することを想定し、27日夜に異例の“前々々日移動”を決断していた。

 山口監督は試合後の会見でこう語った。

「なんと表現していいかわからないですけど、練習できるかどうかも分からない中で3日前に来ることを決断をさせてもらった。周りの準備、ホテル、移動、練習場の確保、洗濯、トラックもそうですし、僕は決断する立場なので、結果、よかったなと思いますけど、それを用意してくれたからこそ試合もできました」

 当然、スタッフは対応に追われた。本来、前日から宿泊するはずだったホテルの手配、移動便の変更、練習場の確保に奔走。試合前々日の29日は九州地方の大雨のために練習できなかったが、30日はなんとか確保できた芝生が敷かれた公園のグラウンドで体を動かすことができた。決してコンディションは万全ではなかったが、結果を残した。
 
「昨日に関しては、難しいグラウンドでしたけど、練習できたっていうのもあったので。言い訳もしたくなかったですし、当日移動してゲームをやる(可能性がある)こともJリーグから伝わっていたなかでの決断でもあった。不公平さは感じましたけど、できることをやりながら、みんなと共有して出そうっていう話をしていた」

 そして、山口監督が強調したのはファンへの感謝だった。「この台風の状況でどうなるか分からないなかで、たくさんのサポーターが湘南、平塚で水害があるなかで来てくれて、そういうところに応えたかったっていうのはある。結果として勝てたのは嬉しい」。湘南の練習グラウンドも大雨の影響で浸水。地元に大きな影響が出ている中でアウェーに駆けつけてくれたファンの後押しも大きかった。

「思ったような展開ではなかったですけども、積み上げてきたものが出たと思いますし、1つの成果としてやり続けないといけないと思いますし、どんな状況でも求めていかないといけないと思いました」。横浜F・マリノス戦が中止となった18位のジュビロ磐田とは勝ち点4差に拡大。苦境に負けず、残留争いから半歩抜け出す大きな1勝になった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)



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