世界を知るレジェンドの“代表帰還”がもたらす知見 森保監督が熱望したサプライズ
期待される一体感の醸成や代表選手としての責任感、行動の規範
森保一監督率いるサッカー日本代表は8月29日、千葉県内で2026年の北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で戦う9月の中国戦(5日=埼玉)、バーレーン戦(11日=リファー)に向けたメンバーを発表した。発表の中でサプライズとなったのは、昨季で現役を引退し、フランクフルトU-21のアシスタントコーチに就任していた長谷部誠氏がコーチングスタッフに加わったことだった。
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長谷部コーチは今年5月まで現役としてプレーし、新シーズンからは10年間プレーしたフランクフルトで指導者としての活動をスタートさせた。クラブでの指導が活動のメインで、インターナショナル・マッチウィークの間は代表に関わる。山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND)は、「今回からスタートするが、最終予選はもちろんW杯も視野に入れて考えている」と今後も継続して代表活動に関わっていくと説明した。
現役時代、2010年南アフリカ・ワールドカップ(W杯)でゲームキャプテンを務めた後、大会後に就任したアルベルト・ザッケローニ監督の下で代表チームのキャプテンを務めた長谷部。18年ロシアW杯後に代表引退を表明するまで、不動のキャプテンとしてチームをまとめ続け、そのリーダーシップは日本サッカーの歴史の中でも燦然と輝いている。
それと同時に、2007年末に浦和レッズからヴォルフスブルクに移籍して以降、引退するまでドイツ1部ブンデスリーガで16年半プレーを続け、リーグ優勝やUEFAヨーロッパリーグの優勝を経験している。日本人選手が多くプレーするようになったドイツだが、長谷部コーチはそのパイオニアとして道を切り開いてきた。
森保監督は「コーチ経験としてはまだ始まったばかりなので、足りないところはあるかもしれないが、逆に指導者として色々と学ぶ前に選手側からどう感じるか、選手にどう働きかけるか、より選手目線で伝えられるという大きな武器を持っている」と期待を口にしていた。チームに必要な一体感の醸成や代表選手としての責任感、行動の規範など、長谷部コーチがもたらす雰囲気が最終予選を戦う上で一役買うことが大いに期待されるだろう。
また、世界のサッカーの先端を行くヨーロッパの第一線でプレーしていただけに、指導や戦術などの潮流をよく知ることも長谷部コーチの強みだ。所属チームの戦術から代表チームの戦術にアジャストする際のアドバイスなどにおいても、代表活動とクラブでのプレーを長年両立させてきた豊富な経験から期待できる部分も多そうだ。
欧州の中心にあるドイツで指導者としての経験を積みながら、日本サッカーに関わる道も繋げるという“一石二鳥”の施策になる可能性を秘める長谷部コーチの誕生とその歩みは、北中米共催W杯に向けた日本代表にとっても注目ポイントになる。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)