叶わなかった「若手の突き上げ」 新戦力わずか2人…W杯本番へ抱える森保Jの「危惧」

パリ五輪世代からは高井幸大と細谷真大の2人が選出【写真:ロイター】
パリ五輪世代からは高井幸大と細谷真大の2人が選出【写真:ロイター】

日本代表の最終予選メンバーが発表された

 森保一監督率いる日本代表は8月29日、千葉県内で2026年の北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で戦う9月の中国戦(5日=埼玉)、バーレーン戦(11日=リファー)に向けたメンバー27人を発表した。MF伊東純也とMF三笘薫が約7か月ぶりの復帰。一方で、パリ五輪後初めての日本代表戦で若手の新戦力はDF高井幸大(川崎フロンターレ)とDF望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)が初招集、FW細谷真大(柏レイソル)がアジアカップ以来の復帰にとどまった。

 森保ジャパンはミャンマー、シリア、北朝鮮と同居したW杯アジア2次予選で6戦全勝(アウェーの北朝鮮戦は3-0不戦勝扱い)を飾り、最終予選への切符を手にした。いよいよ始まる最終予選。だが日本は過去、2大会連続で初戦を黒星スタートで、UAEとのロシアW杯最終予選の初戦を1-2、オマーンとのカタールW杯最終予選の初戦も0-1で敗れた。中国、バーレーン、サウジアラビア、インドネシア、オーストラリアと侮れない相手ばかりが並ぶ“死の組”で、まずは初戦の勝利が求められる。

 まず負傷で3月、6月シリーズが選外だった三笘が復帰。今季は開幕から好調を維持しており、すでに1ゴール1アシストをマークしている。また、アジアカップで途中離脱した伊東も約7か月ぶりに復帰。同大会中に準強制性交等罪などで刑事告訴が報じられ、3月、6月は選外。7月にはプレシーズンマッチで日本ツアーに参加して、8月に不起訴(嫌疑不十分)が決定した。森保監督はスタッド・ランスが臨んだ4試合のジャパンツアーを経て「私自身も落ち着いて活動できると判断させてもらった」と明かした。

 一方で初招集はパリ五輪代表の19歳高井、町田の主力サイドバック(SB)望月の2人のみ。ただ今回は冨安健洋と伊藤洋輝が負傷により選外。センターバックからSBまで幅広くこなせる橋岡大樹も負傷中だ。3人が復帰した際には初招集組に“椅子”が残っているかどうか、今シリーズでの猛アピールが必要となる。

 細谷に関しても、今回の招集は27人。1トップは上田綺世、浅野拓磨、小川航基もメンバー入りしており、まずはベンチ入りを目指すところから。パリ五輪で見せた世界に脅かしたスピードやフィジカル、コンディションの良さを練習からアピールしていかなければならない。

 そして、A代表の壁はやはり高かった。パリ五輪で活躍を遂げたGK小久保玲央ブライアン、MF藤田譲瑠チマ(ともにシント=トロイデン)は招集されず。まだまだ常連組の牙城を崩すことができなかった。今回は欧州組がシーズン開幕を迎えたばかりだが、環境や新監督就任など昨季と違う条件でも所属クラブでポジションを掴んでいる選手が多い。出場時間に不安が残るのはMF遠藤航と上田ぐらいか。コンディションも整っており、新戦力が割って入る隙が無かった。

 もともと冨安やMF久保建英ら、10代でA代表入りを果たしてきた主力組は若手の突き上げを強く望んでいた。このままでは2年後を迎える北中米W杯の中心メンバーがカタールW杯時に続いて三笘や堂安律らもいる“東京五輪組”になる。世代交代とはいかなくても、若手との「融合」を進めなければ、その次……モロッコ、ポルトガル、スペイン共催の見通しが立っている2030年W杯に向けて課題が山積みのまま。東京五輪に出場していない伊藤洋輝らも含めて同世代は突出しているが、パリ五輪組にはもう少しA代表へ絡んでほしかった。この問題はまだ続いていく。ここからさらに激しいポジション争いが繰り広げられることを願うばかりだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

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