Jリーグで度重なる海外への選手流出 浦和も直面、監督交代で見えた課題「改善の余地がある」
浦和の堀之内聖SDが今季顕著だった選手の入れ替わりに言及「まだまだ課題」
浦和レッズは8月28日に堀之内聖スポーツ・ダイレクター(SD)が取材対応し、ペア・マティアス・ヘグモ監督の契約解除とマチェイ・スコルジャ監督の就任についての経緯を説明した。その間にあった登録ウインドーで多くの選手が入れ替わっている点について「選手の抜けたところに対する移籍での補強という部分にはまだまだ課題があると認識している」としたなか、海外クラブへの流出という観点からはいくつかの施策が必要という点についてもコメントした。
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浦和は27日にヘグモ監督の契約解除を発表した。監督の評価基準を「成績、スタイルの浸透、マネジメント」の3点で行っているとした堀之内SDは、成績という観点から「下位チームに対して勝ち点を積み上げられなかった点は重く受け止めている。一方で、それが監督だけの責任とは思っていない」と話した。
浦和は今季に向け主にウイングを主戦場にする選手を多く補強したが、負傷者も多く十分に機能したとは言い難かった。6月末までの期限付き移籍で加入していたノルウェー代表FWオラ・ソルバッケンも負傷明けが移籍期間のラスト1か月ほどになってしまったが、その能力の高さはゲームの中で見せていた。しかし、7月以降にクラブに残すことはできなかった。また、DF酒井宏樹、DFアレクサンダー・ショルツ、MF岩尾憲といった昨季のJ1最少失点を支えた主力も6月末に移籍し、新キャプテンに任命したMF伊藤敦樹も今月に入って海外移籍した。
そうした点からも、ヘグモ監督に対して成績を問うことのできる戦力を用意できたのかという観点では疑問を呈す余地がある。そして、今夏のウインドーではFW二田理央、MF本間至恩といった若くして海外にキャリアを求めた選手の「逆輸入」と、サイドでポリバレント性のあるMF長沼洋一を獲得するにとどまった。酒井やショルツのポジションへの補強や、伊藤の移籍後に緊急補強を行うことはなかった。ヘグモ氏は先日「クラブとしてはいつでも、選手が移籍すればどのように補完するのかということを前もって準備することが大事だ」と苦言を呈していた。
堀之内SDは「選手の抜けたところに対する移籍での補強という部分にはまだまだ課題があると認識している」としたうえで、「現在の日本サッカー界は海外から選手を取られやすい。その点で準備が万全だったのかと言えば、改善の余地がある」と話す。そのうえで「契約条件を海外と劣らないものを提示してあげるのも1つ。また、選手は成長できる場を求めるもの。リーグ優勝やACL(AFCチャンピオンズリーグ)への出場、クラブ・ワールドカップ(W杯)など、高みを目指せるチームになるのが一番」と、選手に対する魅力を高める必要性に触れた。
さらに「海外提携クラブにはフェイエノールト(オランダ1部)、フランクフルト(ドイツ1部)、ムアントン・ユナイテッド(タイ1部)の3つがあるが、選手の交流の部分で連携を深めるのも1つだし、場合によってはそのようなクラブを増やしていくという施策も効果的なのではないかというのは、私の頭にある」と、海外との選手獲得ルートを強化するという考えも示した。
2020年からスタートした強化部門をフットボール本部として打ち出す浦和の方策だが、4年半で延べ5人目の監督であり、4回の監督交代が起こった。さらにトップチームの強化責任者も3人目であり、今季に関してはシーズン中の4月に交代している。その意味では就任からわずか数か月の堀之内SDだが、「メンバー全員の色々な役割の中で決めているので、1人の個人の趣向で監督を連れてくることはない」として、「必要な人材がいるのであれば、強化部門の強化という意味での補強、新たなメンバーの補強も検討している」と言及した。
浦和の監督や選手、さらにはフットボール本部自体での人の入れ替わりが激しすぎるのも事実だろう。日本サッカーを取り巻く環境という要因もあるものの、それに対応するためにクラブが落ち着いて仕事をする環境も必要なのではないだろうか。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)