「脅かす選手は現れていない」…パリ五輪組の台頭は? 日本代表OBが推すW杯最終予選メンバー23人【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】鈴木彩艶と小久保玲央ブライアンのどちらが正GKに就くか
森保一監督率いる日本代表は、9月から始まる北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選に挑む。5日にホームで中国(埼玉スタジアム)、11日に敵地でバーレーン(バーレーン・ナショナル・スタジアム)と対戦するなかで、指揮官はどのようなメンバーを選ぶのか。W杯最終予選の経験を持つ日本代表OB栗原勇蔵氏に予想してもらった。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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森保ジャパンはミャンマー、シリア、北朝鮮と同居したW杯アジア2次予選で6戦全勝(アウェーの北朝鮮戦は3-0不戦勝扱い)を飾り、最終予選への切符を手にした。9月シリーズでは、パリ五輪の戦いを終えたU-23日本代表組がどれだけ食い込んでくるかが、1つのポイントだろう。
日本代表OB栗原氏も、「五輪組(パリ五輪世代)と融合させて、(2026年の)本大会に向けたメンバーがある程度決まっていくタイミング」と語る。
「森保監督の場合、一度メンバー入りできるかどうかで、その後の見通しが変わる。パリ五輪組は何人か入れると思いますが、ただ、これまでのメンバーから誰を外すのかと考えると、入り込む隙はそうそうない。選手たちにとっては大事な選出。パリ五輪世代では小久保玲央ブライアン、藤田譲瑠チマ、細谷真大あたりでしょうか」
9月シリーズでは、5日にホームで中国と対戦し、その後アウェーに飛んで11日にバーレーンと激突。栗原氏は「中東のアウェー戦は(ホーム戦とは)まったく違うものになる。でも、まずは中国戦を取れるか。ここを勝利できるかで展開も変わる。圧倒して何もさせないくらいの力を見せてほしい」と期待を寄せる。
【GK=予想枠数3人】
鈴木彩艶(パルマ/22歳)
小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン/23歳)
大迫敬介(サンフレッチェ広島/25歳)
「GKは重要なポジションですけど、飛び抜けた存在もいないので、誰が出てもおかしくない状況です。最初にチャンスをもらった選手がそれをモノにすれば、正守護神に定着する可能性もある。今年初めにカタールで開催されたアジアカップでレギュラーを務めた鈴木と、パリ五輪でさらに株を上げた小久保に対する期待は大きいと思います。鈴木はセリエAで試合に出続ければ評価に値するし、小久保が抜擢されてもなんら不思議はない。あとは、国内組でパリ五輪世代よりも経験のある選手となるとまずは大迫でしょう。ただ、大迫は実力のあるいい選手ですけど、ポテンシャルや将来性を考えたら鈴木か小久保を使ってほしいところです」
冨安健洋と伊藤洋輝の不在で守備陣に流動的要素あり
【DF=予想枠数7人】
大畑歩夢(浦和レッズ/23歳)
菅原由勢(サウサンプトン/24歳)
橋岡大樹(ルートン・タウン/25歳)
町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ/26歳)
板倉 滉(ボルシアMG/27歳)
中山雄太(FC町田ゼルビア/27歳)
谷口彰悟(シント=トロイデン/33歳)
「軸である冨安健洋(アーセナル)、主力クラスの伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)が怪我で不在という事態で、少し変化が生じるセクションです。板倉と町田は鉄板、菅原も間違いないでしょうが、4バックとすれば左サイドバック(SB)の本職タイプが不足しています。旗手怜央(セルティック)という選択肢もあるかもしれませんが、遊び心がある反面、ギャンブル的要素も否めない。今年2月以来、日本代表から離れているとはいえ、中山は3バックにも4バックにも対応できるし、Jリーグ復帰戦戦でいきなりゴールを奪ったことで、調子がいいというアピールにはなったはず。アジアの戦いではボールは握れると思うので、五輪の勢いも買って、激しい守備と優れた技術を兼備する左利きの大畑が入ると面白い気がします。
伊藤がいないことで3バックの可能性も考えると、今夏までカタールでプレーしていた谷口は中東の戦いの慣れも含めて堅いでしょう。橋岡はこれまでの次点だったので、ユーティリティー性も踏まえて繰り上げ的に選ばれると思います。もし、ここにパリ五輪でチーム最年少だった19歳の高井幸大(川崎フロンターレ)のような選手が入ってきたら将来的な選択肢も広がってきそうです」
【MF=予想枠数10人】
藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン/22歳)
久保建英(レアル・ソシエダ/23歳)
中村敬斗(スタッド・ランス/24歳)
堂安 律(フライブルク/26歳)
三笘 薫(ブライトン/27歳)
鎌田大地(クリスタル・パレス/28歳)
南野拓実(ASモナコ/29歳)
守田英正(スポルティング/29歳)
遠藤 航(リバプール/31歳)
伊東純也(スタッド・ランス/31歳)
「三笘と伊東が今回、久々に揃ってほしいですね。右と左のバランスは大事で、日本の攻撃はここから始まる。攻撃を担ってきた2人の復活に期待します。伊東、堂安、久保と“ダブつき感”はありますけど、実力を考えるといずれの選手も外せない。ボランチは順当にいけば、遠藤と守田に続くのは田中碧(デュッセルドルフ)かもしれませんが、パリ五輪キャプテンの藤田を推します。伊東、遠藤、南野は年齢も高くなってきたとはいえ、やはりベテランはベテランなりの経験や周りに与える影響力もあります。今はまだ焦らず、自然と世代交代を見据えていくことができればいいと思います。今の日本にはサブにもいい選手がいる。最終予選で堅く行くというのも分かりますが、ワクワクするような攻撃的なサッカーを見せてほしいです」
【FW=予想枠数3人】
細谷真大(柏レイソル/22歳)
上田綺世(フェイエノールト/25歳)
浅野拓磨(マジョルカ/29歳)
「強さもパンチ力もある上田の一番手を脅かす選手はまだ現れていません。すでにA代表経験のある五輪組の細谷を入れると、浅野と前田大然(セルティック)のどちらかになる気がします。浅野は6月の招集は見送られていますが、今季すでにスペイン1部ラ・リーガでプレーしているし、これまでの森保監督からの信頼度も考えるとアドバンテージがあるでしょう」
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。