「また浦和か」は「クラブが気の毒」 来場者の暴力行為…日本代表OBが警鐘を鳴らす選手との“溝”【見解】

浦和レッズのサポーター【写真:徳原隆元】
浦和レッズのサポーター【写真:徳原隆元】

【専門家の目|栗原勇蔵】一部のファン・サポーターの愚行で「また浦和か」と言われるのも気の毒

 浦和レッズは8月22日、今月11日に開催されたJ1リーグ第26節サガン鳥栖戦において来場者による暴力行為があったとして、当該者に対して無期限入場禁止の処分を科したと発表した。15日に試合運営管理規定違反行為に及んだ来場者への処分を発表したなかでの“再発”となり、元日本代表DF栗原勇蔵氏は「一部の人の愚行で『また浦和か』と言われるのも気の毒」と率直な感想を述べている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 浦和によれば、8月11日に駅前不動産スタジアムで開催されたJ1第26節鳥栖戦で、来場者による試合運営管理規定違反行為が発生したという。

 試合終了後、ある来場者が警備スタッフAに対し、ほかの来場者による撮影行為を中止させるように要求。当該撮影行為が、Jリーグの禁止する「他者の迷惑になるような撮影行為」に該当する可能性があったため、警備スタッフAが確認のため移動。警備スタッフAから引き継ぐ形で対応を行った警備スタッフBに対し、対応への不満から肩部を殴打する行為に及んだ。

 事案発生直後、警備スタッフAからの報告に基づき、警備スタッフCと弊クラブセキュリティスタッフを交えた、来場者および警備スタッフBへの聞き取り、話し合いを実施。来場者が処分対象行為を認め、警備スタッフBへ謝罪を行い、警備スタッフBも謝罪を受け入れ、和解。その後、改めて浦和の競技運営本部所属スタッフ、およびセキュリティスタッフから来場者に対する事情聴取を実施。処分対象とする可能性が極めて高い旨を伝えるとともに、個人情報の確認を行った結果、遠隔地に居住している事実と高齢である事実が確認されたものの、処分の有無を問わず、後日浦和事務所への来訪を求めた場合にはそれに応じる旨の合意を得たうえで試合当日は解散となった。

 8月12~15日の間に、「浦和レッドダイヤモンズサッカー試合運営管理規定」並びに「Jリーグ試合運営罰則規定」との照合と競技運営本部内での検討を経て、競技運営本部としての処分方針を決定。16日にコンプライアンス委員会を実施し、国内外を問わない、8月12日以降に行われる浦和レッズ、浦和レッズレディース、浦和レッズアカデミーが出場するすべての試合を対象とした無期限入場禁止となった。

安全性が保証されなくなった時点で「話は変わる」…「選手たちになんの罪もない」

 浦和は、7月20日に埼玉スタジアムで開催されたJ1第24節北海道コンサドーレ札幌戦においても、来場者による試合運営管理規定違反行為が発生。「試合終了後、自席用に設置されたドリンクホルダーを意図的に破損させる行為」があったとして、処分対象行為に及んだ1名に対して、「無期限入場禁止、および修復に要する実費用の負担」の処分を下すことを、8月15日に発表したばかりだった。

 そうした背景もあり、浦和が「この度は、試合運営管理規定違反行為の発生を未然に防ぐことができず誠に申し訳ございませんでした。7月20日(土)に埼玉スタジアムで発生した事案に続き、短期間に2度の違反行為が発生した事実を重く受け止めております。浦和レッズは昨年8月に、大変多くのみなさまにご迷惑をお掛けする事案の当事者となり、6つの再発防止施策を掲げ実行してまいりましたが、引き続き『ファン・サポーターのみなさまとのコミュニケーションの再構築』、『スタジアムでの禁止事項等観戦ルールの周知徹底』、『違反行為者への適時適切且つ毅然とした対応(即時退場を含む)』といった施策に愚直に取り組んでまいります」と声明を発表している。

 日本代表OBの栗原氏は、「浦和のサポーターは熱くて有名。サッカーの醍醐味を感じさせてくれるし、選手の力に変わる部分はある」と日本一とも言われる声援や会場の雰囲気をリスペクトしつつ、「浦和のサポーターの声援に圧倒されることもあったけど、個人的には安全は確保されているというのが大前提にあった」と言及する。

「だからこそ、サッカーができていた。その一線を越えると話は変わる。中東とか北朝鮮のように、何が起こるか分からないレベル。今は時代も変わってきている。子供たちも見ているなかで、いい大人が何度も過ちを起こすのは良くない」

 栗原氏は、「既存の選手たちになんの罪もない」と元選手の立場から見解を述べたうえで、「(昨年8月に一部の浦和サポーターが暴徒化した件の処分で今年の)天皇杯に出られないとか、生活も人生も懸かっているなかで機会を失うのがどれだけ大きなことか。選手は1つのきっかけで大きなものを失うことは多々ある。それを考えて行動してほしい」と、ファン・サポーターに呼びかける。

「勝負ごとなので熱くなることもあるのは当然。エリアの確保とかはクラブの問題かもしれない。ただ、運営的にトラブルが起きているのではなく、人と人とのトラブルによる暴力行為は運営、クラブの話ではない。スポーツとしての一線を越えているし、『クラブに責任がある』と言われるのは正直気の毒。一部の人の愚行で『また浦和か』と言われるのも気の毒でしかない。大人ならやっていいこと、悪いことの判断はつけないといけない。

 浦和はサポーター数も桁違いだから、クラブ管轄だけでは統制が取れない。仲間ならファン・サポーター同士の声の掛け合いや、止めることも必要。派閥とかあるかもしれないけど、浦和サポーターも一致団結というか、本当の意味で1つにならないといけない。そうでなければ、クラブとファン・サポーターの溝も徐々に深まっていく危険性があると思います」

 栗原氏は浦和だけでなく、日本サッカー界の発展を願って指摘していた。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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