Jクラブ勢ACLエリート初戦が“難敵揃い&過酷”…日本→中2日アウェー戦いきなり400km移動も【コラム】

川崎、神戸、横浜FMがACLエリートに参戦【写真:徳原隆元】
川崎、神戸、横浜FMがACLエリートに参戦【写真:徳原隆元】

新フォーマットのACLEに神戸、横浜FM、川崎が参戦

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)は2024-25シーズンから新フォーマットに。従来からの大きな違いは3つのディビジョンに分かれること。その最高峰となるのが、ヴィッセル神戸、横浜F・マリノス、川崎フロンターレのJリーグ3クラブも参加するACLエリート(ACLE)だ。なおサンフレッチェ広島は2番目のカテゴリーとなるACL2に挑む。

 ACLEは全体としては24チームが参加するが、1次ラウンドである「リーグステージ」と決勝トーナメント1回戦のラウンド16までは東地区と西地区に分かれて行われる。そこで勝ち上がった8強が、セントラル開催で準々決勝、準決勝、決勝を戦うことになる。すでにリーグステージの抽選会が行われたが、これまでのようなグループ分けではなく、同地区の12チームの中でホーム4試合、アウェー4試合の対戦相手を決めるためのものだ。この「リーグステージ」においてJリーグ勢の3クラブは直接対戦しないが、上位8チームを争うライバルにはなる。それぞれのホームとアウェーの対戦相手は以下のとおりだ。

▼ヴィッセル神戸(J1王者)

ホーム:上海海港(中国)、セントラル・コースト・マリナーズ(オーストラリア)、山東泰山(中国)、光州FC(韓国)
アウェー:蔚山HD(韓国)、ブリーラム・ユナイテッド(タイ)、浦項スティーラーズ(韓国)、上海申花(中国)

▼横浜F・マリノス(J1・2位)

ホーム:蔚山HD(韓国)、ブリーラム・ユナイテッド(タイ)、浦項スティーラーズ(韓国)、上海申花(中国)
アウェー:上海海港(中国)、セントラル・コースト・マリナーズ(オーストラリア)、山東泰山(中国)、光州FC(韓国)

▼川崎フロンターレ

ホーム:上海海港(中国)、セントラル・コースト・マリナーズ(オーストラリア)、山東泰山(中国)、光州FC(韓国)
アウェー:蔚山HD(韓国)、ブリーラム・ユナイテッド(タイ)、浦項スティーラーズ(韓国)、上海申花(中国)

「リーグステージ」で対戦する相手は3クラブとも同じだが、ホームの相手は神戸と川崎は全く同じで、横浜FMはその逆になっている。この時点で気になるのはアウェーの相手と移動距離だろう。神戸と川崎は東地区でも難敵の1つと見られる韓国の蔚山HDとアウェーで戦わなければならない。一方の横浜FMセントラル・コースト・マリナーズとのアウェーゲームがあり、オーストラリア遠征を強いられる。

 第1節が行われるのは9月17日と18日。Jリーグでは代表ウィーク明けの第30節が行われた直後になるが、神戸は17日に、いきなりタイ王者のブリーラムとアウェーの試合となり、横浜FMは同日に韓国の光州と、川崎は18日に蔚山HDとの対戦になる。金曜マッチの川崎は中4日だが、神戸と横浜FMは中2日でアウェーという厳しい日程になる。特に神戸はバンコクから400km離れたブリーラムまで、なかなか厳しい移動を強いられそうだ。

神戸は初戦でブリーラムと対戦【写真:徳原隆元】
神戸は初戦でブリーラムと対戦【写真:徳原隆元】

神戸の初戦はタレント揃いのブリーラム、川崎は強敵叩き勢いに乗れるか

 神戸の初戦の相手となるブリーラムは昨シーズン、ヴァンフォーレ甲府と同じグループで4位敗退という結果に終わっているが、過去2度の決勝トーナメント進出を果たすなど、侮れない。オズマール・ロス監督が率い、3バックをベースとするブリーラム。エースのブラジル人FWギジェルメはタイ・プレミアリーグで開幕2試合3得点と暴れている。10番を背負うMFクリスピムも得点&チャンスメイク力に長けた危険なタレントだ。日本代表GK前川黛也を中心に、神戸のディフェンス陣がいかに個性的な相手のアタッカーを封じて、FW大迫勇也を要する攻撃陣につなげていけるか。

 横浜FMが対戦する光州FCはKリーグの2023シーズンで3位となり、ACLE初出場の権利を勝ち取った。経験値では前回の東地区チャンピオンである横浜FMが大きく上回るが、ジョージア代表FWベカ・ミケルタゼやアルバニア代表MFヤシル・アサニなど、パワフルなタレントが多く、193センチのセンターバックであるDFホ・ユルとギラヴァンツ北九州に在籍経験のあるDFアン・ヨンギュが支える堅実なディフェンスから鋭い攻撃を繰り出してくる。22歳のブラジル人FWガブリエル・エンリケは危険なジョーカーだ。おそらく大半の時間帯で横浜FMがボールを握る側になるが、未知数な部分も多い敵地で、常にロングボールやカウンターのリスクに向き合う戦いになりそうだ。

 川崎はいきなり優勝候補の蔚山HDとアウェーで対戦することになるが、ここで強敵を叩いて勢いに乗るチャンスと考えることもできる。川崎と蔚山と言えば、昨年のグループステージで同組になっており、ホームでは川崎が1-0と勝利。アウェー戦では2-2の引き分けだった。ただし、当時の蔚山を率いていたホン・ミョンボ監督が韓国代表指揮官へと引き抜かれ、現在はアジアカップでマレーシア代表を指揮したキム・パンゴン監督が率いている。Jリーグファンにもお馴染みのDFキム・ヨングォンとDFファン・ソッコが構える強固なディフェンスと韓国代表FWチュ・ミンギュが引っ張るオフェンスのバランスは良いが、数年来の爆発力は感じられない。昨年の対戦時からはFW山田新の成長やMF大島僚太の復帰がプラス材料になるか。新加入したMF河原創にも注目だ。

 第2節は10月1日と2日にホームで、神戸は中国の山東泰山、横浜FMは蔚山HD、川崎は光州FCと対戦する。「リーグステージ」の順位を争う関係にはなるが、共通の対戦相手と試合をしていくことなるため、Jリーグ勢の戦いぶりを基準に、その後の対戦相手をスカウティングできることは従来のACLにないメリットだろう。刺激と情報を得ながら、最終的に3クラブとも8位以内に入り、ラウンド16に勝ち上がってもらいたい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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