Jで話題の水かけ行為→ボール交換 「ルール上は問題ない」上での2つの“リスク”【前園真聖コラム】

藤尾翔太のPKキックでひと悶着【写真:(C) FCMZ】
藤尾翔太のPKキックでひと悶着【写真:(C) FCMZ】

町田FW藤尾が8月17日の磐田戦でPK時にボールに水かけ…主審はボール交換を選択

 今シーズン、FC町田ゼルビアはいろいろな話題を提供している。その中には「J1初昇格のチームが首位」というものもあるが、そのほかの話題も多い。その大きく取り上げられている話の1つに藤尾翔太が蹴るPKがある。8月17日に行われたJ1リーグ第27節ジュビロ磐田戦で藤尾がPKを蹴ろうとすると、スタジアムからは歓声とブーイングの両方が飛んだ。果たして、藤尾の「水かけPK」はどう捉えればいいのか。元日本代表MF前園真聖氏に意見を訊いた。(取材・構成=森雅史)

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 FC町田ゼルビアの藤尾翔太が蹴るPKがずいぶん話題になっているようです。僕はあまり知らなかったので、今回調べてみました。

 藤尾は今季9得点のうち3点をPKで挙げています。その最初が第15節、町田ホームの東京ヴェルディ戦で、チームの3点目が藤尾のPKでした。

 この時、藤尾がPKを蹴る前にボールを水で濡らしたのが「ボールが芝の上を滑りやすくなってボールスピードが上がる」「GKが取りにくくなる」ということだったのではないかと推測され、昨年からのこのカードの因縁とも相まって、「ルール内のことではあるが、やっていい行為なのか」と議論を呼びました。

 また第21節、アウェーのガンバ大阪戦でもPKを藤尾が蹴ることになりましたが、その時にはG大阪の選手が水を掛けさせないようにしようとしたり、それでも町田のほかの選手が藤尾に水を渡して最後はかけて蹴ったりということもあったようです。

 そして8月17日の町田のホームゲーム、ジュビロ磐田戦でも藤尾がPKでボールを持っているとチームメイトが水を渡し、藤尾がボールにかけました。すると、高崎航地主審がそのボールを乾いたボールと交換してPKが行われました。

 初めてJ1リーグに昇格して首位を走っている町田ですから、いろいろ注目度は高いようです。また、徹底的に勝負にこだわる黒田剛監督が藤尾にやらせているのではないかという話もあるようですが、どうやら監督は指示を出していないということでした。藤尾は自分なりにPKについていろいろ考えて行っていたのでしょう。

 ですが、僕はこの行為について思うことが2つあります。

前園真聖氏が「水かけPK」について見解【画像:FOOTBALL ZONE編集部】
前園真聖氏が「水かけPK」について見解【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

レフェリーは「ルール上は問題ない」と言っているが…

 1つは、ボールに水をかけることでキッカーも蹴りにくくなるのではないだろうかということです。今のボールは表面がとてもつるつるしているので、蹴るほうもミスしやすくなるのではないかと思います。

 もっとも、藤尾も「(水をかけて)効果あるんですかね」と疑問を口にしているようです。G大阪戦の時は相手選手が水かけを阻止しようとしてきたことから、「そんなに嫌がっているのだったらやっておこう」と考えたということでした。ということはGKとの「心理戦」なのかもしれません。

 仮に自分もミスをする可能性があるとするならば、水をかける必要はないのかと思います。現に水をかけなくても決めていますからね。

 2つ目は今回、レフェリーが「ルール上は問題ないのだが」と言いながらボールを交換したことを考えなければいけないだろうということです。

 ルールにはないけれどもレフェリーが対応したということは、主審は非紳士的行為と判断したのかもしれません。つまり、レフェリーの頭の中には「藤尾は水をかける」という情報が「良くないこと」としてインプットされていたことも考えられます。

 サッカーにおいてレフェリーを味方につけることは重要です。主審に疑問を持たれるような行為をしていると、それが不利に働く場合が出てくると思います。そういうことを考えても、やらなくていい行為なのではないでしょうか。

 そしてJリーグや日本サッカー協会(JFA)も、この行為について見解を明らかにしたほうがいいと思います。せっかくですから議論して、どう考えたかという点も明らかにしてほしいと思います。なぜなら今回のシチュエーションではルール上は問題ないということで、主審によっての判断基準が異なる可能性があるからです。

 それにしても残念なのは、試合の内容ではなくてこういうピンポイントのことのほうが大きな話題になることです。もっと試合の流れなんかについて読みたいと思っているのは僕だけではないと思うのですが……。

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前園真聖

まえぞの・まさきよ/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。

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