「雰囲気良くなかった」 地獄のHTで響く主将のひと声…J1上位クラブ、劇的“勝ち点”の舞台裏
G大阪は神戸戦で後半アディショナルタイムに追い付いてドロー
ガンバ大阪は8月17日、J1リーグ第27節でヴィッセル神戸と対戦し、2-2で引き分けた。FW宇佐美貴史は今季9ゴール目をマーク。芸術的なパスで劇的な同点弾を演出するなど、エースの名にふさわしい活躍だった。神戸には2度のリードを奪われるなど、苦しい展開も今季のチームが持つ底力を発揮。「成長」のあとを実感する一戦となった。
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びっしりと埋まったゴール裏に向かって数回両手で煽った。1点を追う後半11分、ハーフウェーライン付近でボールを受けた宇佐美は1人でドリブル突破。ぐんぐんと加速し、ペナルティーエリア付近にたどり着くと、カットインして右足一閃。美しいミドルシュートが突き刺さった。
「選択肢を探しながらでしたけど、全部キャンセルして、どうしようかなというなかで、どんどん、どんどん相手がその選択肢を消すなかで自分へのプレッシャーというのを怠ってくれた。あとはこれだけという感じで振ったら相手に当たってという感じ」
だが、後半39分に痛恨の失点。それでもここからG大阪はもう1度立ち上がった。後半アディショナルタイム5分、左サイドのDF黒川圭介からパスが渡ると、宇佐美は右足アウトサイドでノールックパスを通す。受けたFW坂本一彩が反転してシュートし、最後はDF中谷進之介が押し込んで同点に追い付いた。敗戦濃厚の試合終了間際に劇的な展開でドローに持ち込んだ。
「一彩を走らせて、足元につけるというよりは走らせて、クロスとか、何か起こるかなという。自分としては思っていたところに思っていた強さで(パスを)出せましたし、あとは一彩の粘りが良かった」
神戸戦は前半アディショナルタイムに失点していたG大阪。第26節時点の総失点18のうち前半の失点は6点のみ。同アディショナルタイムでの失点は今季2度目と、あまり経験していない逆境での折り返しとなった。
それだけにGK一森純は「正直雰囲気は良くなかった。ダメージがデカかった。相手も神戸だったし」とチーム内で起こっていたことを明かした。それでも、声を上げたのは主将の宇佐美。「貴史が声を出してくれて、『やろう』という気持ちを出して後半に入れた」と、メンタルを立て直してピッチへと向かった。
この“メンタル”が昨季からの変化。宇佐美はこの一戦を「すごく成長を感じる」と話した。
「やっぱりメンタルじゃないですか。失点した時間帯もすごく悪かったし、去年ならズルズルといっていたと思うんですよね。ボールを回しているけど、いいところを見いだせないまま中途半端なボールロストを食らって、ショートカウンターで2失点目……。去年までのイメージなら。結局自分たちは何をどうすれば良かったんだろうというのが分からないまま、終わるようなゲームだった。
でも、後半始まる前から『勝つためには1、2点取らないといけないんだぞ』というところは全員でしっかり強調できた。自分たちが勝っていくためにどこをどういうふうにしないといけないのかという監督からもちろん話もありますけど、その前に選手たちで意見交換みたいなこともすごくする。戦術や技術の質ももっともっと伸ばしていかないといけないところは多いですけど、でもそういう『気持ち』の上にすべて成り立っている。最低限のメンタリティーみたいなものがやっぱりついてきたんじゃないかなと思います」
昨季は残留争いを強いられたが、今季はここまで4位と上位争いを演じている。その確かな自信がもたらした勝ち点1だった。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)