義務付けられたJ1即優勝…黒田監督が日本代表クラス連続獲得で「読みが甘い!」と笑みを浮かべた訳
中山雄太の獲得にニヤリ「ない……かもしれないし、あるかもしれないと」
FC町田ゼルビアの黒田剛監督は8月15日、17日のJ1リーグ第27節ジュビロ磐田戦に向けた取材対応を行った。
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前日の8月14日に日本代表DF中山雄太獲得が発表され、その後の練習に中山は参加している。国際移籍証明書も発行され、16日の登録が完了すれば磐田戦から出場が可能となる。町田は7月23日に名古屋グランパスから日本代表MF相馬勇紀を獲得したのに続いて、夏の期間にまたしても日本代表選手を加入させた。ほかにも7月16日には湘南ベルマーレから元日本代表DF杉岡大暉、31日、清水エスパルスからMF白崎凌兵も獲得している。
取材の冒頭、7月31日の白崎獲得の際にもう補強はないと語っていたのに、と報道陣からツッコまれた黒田監督は「ない……かもしれないし、あるかもしれない」と言ったのだと反論し、「読みが甘い!」と笑いを誘っていた。
町田は、原靖フットボールダイレクターが明かしているとおり、「優勝に向かって」積極的に補強を繰り返している。これは黒田監督にすれば、今年の優勝を義務づけられているということではないだろうか。
その点を質問すると、黒田監督は「金をかけて結果を出せなかったら自分がクビになるっていう、そういう話?」とニコリとすると真顔になって現在の心境を語り始めた。
「そうですね。そうは言ってもまだ(J1)1年目なので。だから今年はこういうサッカーでチャレンジをしたいと思って決めているわけです。J2でやってきたサッカーの延長線上で、それがより早く、より強固にインテンシティー高くやってみて、J1でどれくらい通用するか。やっぱり大崩れしないチームにはなるから。優勝するかどうかは別としてね」
「着実に勝ち点を重ねていくにはすごく有効的なスタイルなのかなというところで、今年1年はこういうメンバーで、最近日本代表が入ってきたけれど、どれくらいできるかは、ちょっと自分の中で、スタッフの中で含めて、今年はこれで行きたい。行ってどれくらいできるかを試してみたい」
黒田監督は「優勝」よりも将来を見据えた布石を重視
黒田監督は「優勝」よりも、現在の町田のスタイルでどこまで通用して、どこが通用しないのかを確かめたいということだった。それは将来を見据えた布石だった。
「来年は足りなかったところ、またはもっと強調したいこと、もっと取り入れたいことを少し入れながらサッカーを少しずつ変えていく。そういう意味では、ベースなるもので通用したものと、しなかったもの、しなくなってきたもの、引き続き通用したものの見極めがすごく重要」
「どっちつかずのことをやって、なんとなく5位、6位に終わったって、何が通用したんだか分からない状態の2年目を迎える方がさらにキツい。だから結果もそうだけど、来年の戦い方が見えることのほうが、補強も含めてすごく有効なことだと思う。だからこそ、誰になんと言われようとブレずに、勝っても負けてもそのベースでやるということが重要なんであって、自分の気持ちが変わって、あれを加え、これをなくし、最終的には『町田は何を目指しているのか』というサッカーになることが、むしろ今起こってはいけない」
一方で、「残り数試合で順位が見えてきたらやり方を変えるかもしれない」と口にしたこともあった。その真意を問うと、こう答えが返ってきた。
「やり方というか、考え方を変える必要あるということ。もちろんシステムもそう。引き分けでいい試合を、優勝できるとか、これで勝ち点を維持したほうがいいという時に、無理をして大量失点食らうような戦いをする必要がなかったりすることもあるだろうし。今まだ残り12試合あるので、そこはまだ考えるところでもない。今新しい選手も入ったなかで、どれくらい町田のサッカーをしっかり定着させていくかということが重要」
町田は横浜F・マリノス戦(1-2)、スタッド・ランス戦(0-2)、セレッソ大阪戦(0-0)、湘南ベルマーレ戦(0-1)と直近4試合では白星がなく勢いが衰えたかに見える。黒田監督が今の町田のスタイルを徹底して今年は戦うと宣言した以上、そのサッカーでどこまで勝ち点を伸ばしていけるのかが勝負になる。
(森雅史 / Masafumi Mori)
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。