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“高2の堂安律”に驚愕「普通は喋れない」 20歳差で同部屋に…大先輩を感心させた直球質問【インタビュー】
シドニー五輪、日韓W杯で活躍した明神智和氏…G大阪時代に堂安と同僚
元日本代表で、現在はガンバ大阪ユースで指導者を務める明神智和氏。現役時代には柏レイソル、ガンバ大阪、名古屋グランパス、そしてAC長野パルセイロを渡り歩き、2019年に現役を引退するまで優れたポジショニングセンスとゲームを読む力に優れたMFとしていぶし銀の活躍を見せた。フィリップ・トルシエ元監督の下でシドニー五輪や2002年に日韓ワールトカップ(W杯)にも出場したレジェンドは、森保ジャパンで背番号10を背負うMF堂安律(フライブルク)の若かりし頃の素顔を知る1人だ。
2019年に明神氏が現役引退を表明した際、堂安は自身のX(旧ツイッター)で、「初めてトップチームのキャンプに参加した時の同部屋が明さんだった。上に行きたいなら人と同じことをしてても無理だからなってボソッと言ってくれた一言が今でも覚えてる。(原文ママ)」と投稿。1998年生まれの堂安と1978生まれの明神氏、20歳も年の離れた2人の関係性が垣間見える貴重なエピソードを明かしていた。
明神氏はそんな堂安について、「素直で明るいというのが第一印象」と話す。「初めの頃はやんちゃで難しい性格なのかと想像もしていましたけど、全く違いました。素直で明るくて、それがものすごく可愛かった。先輩からも後輩からもすごく好かれる選手だと感じました」と、その人柄の良さを魅力として語っている。
その一方、同部屋でアドバイスを送ったという件のエピソードについては、先輩にも物怖じしない堂安のパーソナリティーに驚かされたとして当時を振り返っている。
「プロでやっていくためには何が大事なのかと聞かれたんだと思います。そういうこともストレートに聞いてくるんだなと思いましたね。だから、僕は『人と同じことしちゃダメ、自分の武器を見つけなきゃいけない』というようなことを言ったのを覚えています。当時、律は高校2年生ぐらいで、僕はもう30歳も半ばになっていた。そんな選手と急に遠征で2人部屋になっても、普通はしゃべれないですよ。しゃべったとしても『はい、はい』ってそれだけで終わると思うんですけど、律ぐらいですね、ちゃんと会話のキャッチボールできていたのは。だからこそ、驚きました」
「バチバチとやり合うことを厭わない」変わらないピッチ上での印象
G大阪で成長し、2017年にはオランダ1部のフローニンゲンへの移籍で欧州初挑戦を果たした。その翌年には20歳でA代表デビューも飾るなど順調にステップアップを遂げた堂安は、2021年の東京五輪では6試合1得点でベスト4入りに貢献し、22年のカタールW杯ではドイツとスペインを相手にゴールを奪う鮮烈なパフォーマンスを見せた。今や森保ジャパンで背番号10を背負う不動の存在だ。
「素直で明るい」普段の姿とは裏腹に、ピッチ上で見せる“ファイター”としての一面は明神氏が出会った時から変わらないという。
「最初にユースから上がってきた時から球際で戦える選手というのが僕の印象です。バチバチとやり合うことを厭わないイメージは昔から変わりません。今では、代表に入り、海外でプレーすることで、走る部分だったり、戦術的な動きとかそういうところでもとんでもなく鍛えられたんだろうなと感じます」
今や日本を代表するフットボーラーとなった堂安、それでもやはり明神氏にとっては今も昔も変わらず“愛すべき後輩”であることは変わらない。オフには古巣を訪れて、後輩たちに激励の言葉を送る。こういった振る舞いが「先輩からも後輩からもすごく好かれる選手」である所以だろう。
「オフに大阪に帰ってくる時は、必ずクラブに顔を出してくれて、若い選手たちの前で何か言ってくれるんです。律はユースの選手にとっては憧れの存在で、彼の言葉は選手たちの心に響く。それくらい、アカデミーの星なんです。ある試合で、ハーフタイムにベンチの前に選手を集めて、『これぐらいの相手はチンチンにせなあかんな』と発破をかけてくれたこともありました。言葉を掛けてもらった選手たちの意識はやっぱり大きく変わりますし、あれだけ活躍してる選手の言葉の重みっていうのはすごく大きいなと思います」
所属するフライブルクでは昨季公式戦42試合9得点7アシストとチームの攻撃の要として活躍している。ドイツ専門誌「キッカー」で現在のブンデスリーガで五指に入るウインガーとして取り上げられるなど、サッカー大国ドイツでも確かな評価を手にしている。
16歳の時に出会った堂安も今年26歳を迎えた。さらなるステップアップの期待もあるが、明神氏は20歳下の後輩に「とにかく怪我なくプレーしてほしい。本当にそれだけです」と温かいエールを送った。
[プロフィール]
明神智和(みょうじん・ともかず)/1978年1月24日生まれ、兵庫県出身。柏ユース―柏―ガンバ大阪―名古屋―長野。J1通算497試合26得点、J2通算20試合0得点、J3通算38試合0得点、日本代表通算26試合3得点。シドニー五輪や日韓W杯でも活躍した職人タイプのボランチ。2020年から古巣であるガンバ大阪アカデミーのコーチを務め、日本サッカー界の発展に尽力する。
(石川 遼 / Ryo Ishikawa)