逸材18歳、高卒プロへ傾く進路「行きたい」 J練習参加の注目株…強豪校エース遂げた劇的成長
夏のインターハイで躍動、帝京長岡高校3年生FW安野匠に集まる熱い視線
8月3日に幕を閉じたインターハイにおいて、帝京長岡(新潟)の伝統のエースナンバー14を背負う3年生FW安野匠は、ベスト4進出の原動力として躍動した。
利き足は右。だが、左足のシュートとボールタッチも正確で強度も高い。利き足と逆の足を鍛えることは珍しくなく、左右両方蹴ることができる選手は増えてきている印象を受けるが、安野の場合の左足の鍛え方は的を射ていて面白い。
「左足を鍛えようと思ったのは小学校の時に右足を骨折してからです。でもその時は左足のキックを磨くことをこだわっていました」
神奈川県出身の安野は中学時代にシュートジュニアユースFCでドリブルを磨き、「パスでテンポ良く崩すこともドリブルで崩すこともできるサッカーで成長できると思った」と帝京長岡の門を叩いた。
1年時から出番を掴み、昨年から左右両足から放たれるシュートを駆使して得点源として活躍を見せていた。そして今年、彼にとって自分を再び見直す大きな転機がやって来た。
「新チームが立ち上がった際に古沢徹監督から『お前がこのシーズン(昨年)を通して1番点を決めているから、お前に14番を託す』と言われた時に、もっと進化しないといけないと感じました」
そこでさらなる進化を求めたのが左足の再強化だった。高校入学後、左足のボールコントロール向上を古沢監督から求められていたこと改めて自覚し、「これまでは少し漠然とやってしまっていたので、より意識を高めて右と同じようにボールを扱えるようにしようと思った」とファーストタッチやシュート前のボールコントロールの際も左足を意識して使うようになった。
5月にはJ2クラブの練習に参加。そこでより左足の重要性を学び、さらに関東の強豪大学の練習に参加した時には、新たな学びを得た。
「大学のコーチに『シュートを強く打つには踏み込みが大事だ』と左足の踏み込みについて指摘されたんです。そこから左足の踏み込みをかなり意識するようになったら、自然とボディーバランスが良くなって、シュートの強度もバリエーションも格段に上がったんです」
利き足と逆の左足キックを磨きセンセーショナルな得点
これを実証したのがインターハイ3回戦の東海大相模戦で決めた2点目のゴールだった。1年生MF和食陽向のスルーパスに反応し、DFの背後を巧みにとって左足でファーストタッチ。完全に剥がしてGKと1対1になると、「ニア下を狙おうと思ったのですが、GKが前に出ていたので、下より上から落としたほうがいいかなと思った」と驚きの判断を下した。
このシーン、ゴール右下を右足で巻くように打つシュートを選びがちだが、安野は右足インサイドで身体を強引に捻ってゴール左上を狙ったのだった。その狙いどおり、綺麗な軌道を描いたボールはGKの肩口から浮き上がって、ゴールに向かって落ちるような形でゴール左上に吸い込まれた。
「左の軸足がしっかりと刺さってくれたので蹴れました」と笑ったように、練習して来た左足の深い踏み込みと彼のシュート技術が組み合わさったスーパーゴールだった。14番にふさわしいプレーを見せ、この半年間でも劇的な成長を遂げた安野は当初、大学進学を考えていたが、ここに来て高卒プロへの思いが強くなっている。
「今後も磨ける場所はとことん磨いて上のステージに行きたいです」
両足を巧みに使い、スピードと強度をどこからでも引き出せる彼なら十分に可能性はある。高卒プロだけではなく、プロの舞台で活躍できるように。伸びしろ十分の18歳は妥協することなく、貪欲に武器を磨き続ける。それが自分の道を切り開く方法だと信じて。
(FOOTBALL ZONE編集部)