鬼木政権で切り開いた川崎の新境地 新生フロンターレが“偽9番システム”で魅せた『和製ゲーゲン・プレス』
川崎の『和製ゲーゲン・プレス』
連携したハイプレスでボールを奪い速攻カウンターを仕掛ける。前半は川崎がピッチで体現したサッカーは、ユルゲン・クロップ監督の真骨頂である『ゲーゲン・プレス』を彷彿とさせた。
現在指揮するリバプールでは、ホッフェンハイム時代に中盤でプレーしていたMFロベルト・フィルミーノを最前線にコンバート。豊富な運動量でハイプレスをかけることで、『ゲーゲン・プレス』の基盤を形成している。現時点で得点王争いに絡むエースストライカーが不在であるにも関わらず、“偽9番システム”でリーグ最多の58得点を叩き出している。この日の川崎には、その片鱗が垣間見えた。
「柏はつないでくるチームだから、今日の戦術がハマったというのはある。ロングボールを蹴ってくるチームであれば、こないだの鳥栖戦のようになることもあると思うので、そこは対戦相手を見極めながら、どういうサッカーをするのか選択していければね。まだこのチームは成長過程の段階だから」
中村は冷静な分析で、浮かれることなく現状を把握し、今後を見据えた。それでも、FW大久保嘉人という得点源、風間八宏監督という指標が去ったなか、新生フロンターレが新たに殻を打ち破った音が、この試合のピッチで大きく鳴り響いたように感じられた。
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城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images