鬼木政権で切り開いた川崎の新境地 新生フロンターレが“偽9番システム”で魅せた『和製ゲーゲン・プレス』
川崎は苦手な難敵・柏を相手に2-1で勝利
「今日はミーティングでの鬼さんの一言がすべて。『攻守で圧倒する』。コーチ時代もよく言っていたが、どうしてもうちは攻撃で圧倒するチームだった。でも、その中で今日は攻“守”というテーマで出来たから。とにかく前からひるまず行け、後ろもそれについて行け、と。ショートカウンターで攻め切る、そこで点を取れるようになれば、今までのフロンターレではないフロンターレが見せることができる。今のチームはハードワークが連動して、プレスバックも早い」
試合後、MF中村憲剛がそう語った際の充実した表情が、この日の川崎フロンターレを物語っていた。川崎は10日、J1第3節で柏レイソルと対戦し、ホームで2-1と勝利を収めた。
ここ最近、等々力陸上競技場での柏戦は、川崎にとってホームながら大きな鬼門となっている。2015年には1-4、2016年には2-5と2年連続で3点差の大敗。苦手な難敵としての印象が強まっていたが、この日は3年ぶりに柏相手にホームで勝ち点3を奪い切った。
しかし、この日の勝利は勝ち点3以上の価値があった。それは、川崎がピッチで示した新たなスタイルだ。
この試合では、1トップに本来サイドハーフのMF阿部浩之を配置。得点源のFW小林悠を右ウイングに配置し、左ウイングに今季これまで左サイドバックを務めていたMF登里享平を据えた。その奇策の狙いは、前半で明白に体現されることになる。
「前からのプレスにとにかく苦しめられた。相手のブロックを剥がす前の段階で潰されてしまっていた。前半は特にハイプレスに苦しめられ、良さを一切出せなかった」
この日ゴールを決めた柏FW武富孝介だが、川崎が序盤から果敢に仕掛けてきたハイプレスに驚きを隠せなかったという。
阿部は持ち前のハードワークを最大限に活かして最前線からプレッシングを続け、小林、登里、中村の2列目もそれに連動しパスコースを切りながらハイプレスを仕掛ける。特に相手の最終ラインにロングフィードを蹴らせぬよう、前線の4人はボールが渡った瞬間に素早く寄せ、相手の選択肢を打ち消していった。