勿体なさを痛感…なでしこJ主将の「良さがより出たかなと思う」 盟友が抱いた役割への違和感【見解】
【専門家の目|岩清水梓】主将の33歳DF熊谷紗希に与えられたタスクに見解
なでしこジャパン(日本女子代表)は現地時間8月3日にパリ五輪の準々決勝でアメリカ代表と対戦し0-1で敗戦。これにより大会から姿を消した。今大会なでしこジャパンの戦いぶりをFOOTBALL ZONEで解説する元代表DF岩清水梓は、主将の33歳DF熊谷紗希についてチームの年齢バランスからも起用法は理解できるものの「奪いにいく役割のほうが良さを生かせたかもしれない」と話した。(取材・構成=轡田哲朗)
日本はアメリカに対して5-2-3、あるいは5-4-1とブロックを作って守備から入った。アメリカにボールを持たせてのカウンターを狙うような形だったが、互いに大きなチャンスを作れないまま試合は延長戦へ。そして延長前半の終了間際にFWトリニティ・ロッドマンに決勝ゴールを奪われてしまった。
岩清水は日本の戦いぶりをトータルして「守備ブロックが低すぎた。相手がうしろでボールを持っている時に、そのままセンターバックにハーフウェーラインを越えられてしまうのは低すぎると思う」と話す。そして「つなぐサッカーに移行しているアメリカに対し、プレスを掛ければ3人目で奪える場面もあった。積極的にやる姿を見たかった。アメリカというワードの大きさ、リスペクトの大きさが感じられた。ただ、『アメリカ相手でも、ボールを奪える』と早く誰かが気づいてほしかった」と無念の言葉が並んだ。
その中でキャプテンとして4試合とも最終ラインの中央を任せられたのが熊谷だった。岩清水は「チームをマネジメントする部分やラインコントロール、守備でのコーチングなど『らしさ』は随所に感じられた」とプレーについて話す。そして「性格もあるけど、ポジティブさが出ていた。勝った時に駆け寄っていく選手の輪にも明るさが感じられた」とも話した。
一方で、代表チームでセンターバック(CB)コンビを組んでいただけに「私が見る紗希はガツガツいくのが生きる。あの年齢と立場で真ん中を任せられるのは分かるけど、自分からアタックする、奪いにいく役割のほうが良さを生かせたかもしれない。例えば、少し背が低くてもカバーリングに長けたタイプが横にいたら、紗希の良さがより出たかなと思う」と、全体をまとめる側、自身が周囲をカバーする側に徹していたところに少しばかりの勿体なさも感じたようだ。
2011年の女子W杯優勝をともに果たしてから約13年が経つ盟友について、「あの年齢とキャリア、そして2011年を知る選手がこの舞台に立ったのは凄いこと。監督が代わっても選ばれ続けていく強さがあり、キャラクターや性格もある。ただ、本当はもう1人くらい(近い年齢の選手が)いてくれたら良かったのかなとも思う」と若い世代が増えてきたチームをまとめてきたキャプテンとしての働きを労っていた。
[PROFILE]
岩清水梓(いわしみず・あずさ)/1986生まれ、岩手県出身。2001年に日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)でリーグ戦デビュー。なでしこジャパンには06年に初選出され、女子W杯メンバーに3度、五輪メンバーには2度選ばれ、11年W杯の優勝を経験した。20年3月に第一子を出産し、“ママさん戦士”として現役を続ける。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)