フィジカル攻略で決勝Tへ 復活の兆し…なでしこが「結果以上に最も喜ぶべき」英記者の主張【コラム】
パリ五輪・女子サッカーはナイジェリア戦で高パフォーマンスを披露
パリ五輪の女子サッカー競技を戦うなでしこジャパン(日本女子代表)は、グループリーグ3戦を2勝1敗で終えて無事決勝トーナメント進出を決めた。現地時間7月31日の最終節ナイジェリア戦で見事なパフォーマンスを披露。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は「比較的簡単に攻略することができていた」と第3戦を振り返っている。
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熟練のパフォーマンスで池田太監督率いるなでしこジャパンがノックアウトラウンドへの進出を決めた。ナイジェリア相手に納得の勝利を収め、次なる戦いに向けて良い兆しを見せた。
池田監督と彼のチームは、これまでに数々の成功を収めているアメリカとの対戦について考えなければならないが、この勝利はなでしこがメダルラウンドに進むために結果を残せるという確信を得るものだった。
引き分けでも決勝トーナメント進出が決まっていた。そのなかで、最初の2試合で残念な結果に終わり、突破のために勝たなければならないナイジェリアを相手に、なでしこは勝利を求めて前進した。
日本のボール保持での安心感と冷静さ、そして個々の技術のクオリティーがフィジカルに優れた相手への勝利を可能にした。
日本は前半で試合を決定付ける3得点を奪った。長谷川唯はセントラルMFとして最高のプレーを披露し、熊谷紗希が守備に安定感を与えた。彼女の経験値の高さは、この難しい試合のなかで若い選手たちを支えていた。
そして、日本はナイジェリアを比較的簡単に攻略することができていた。直近の2試合で池田監督が採用した5バックはほぼ完璧に機能しており、石川璃音は守備への自信を深めた。逆サイドの守屋都弥の活躍も印象的だった。
前線でも多くのポジティブな要素があった。植木理子は日本の攻撃にエネルギーとスピードを与え、ナイジェリアDFへのプレッシングによって、相手陣内でボールを落ち着かせなかった。
しかし、結果以上に最も喜ぶべきは、32分に田中美南がゴールを決めたことだ。
ブラジル戦ではPK失敗など不本意なパフォーマンスで途中交代となり、涙した田中だったが、この試合では点取り屋として自信を取り戻すために大きな一歩を踏み出した。これは彼女にとっても、日本にとっても助けになるはずだ。
次に待ち受けるのは過去に何度も日本の宿敵として立ちはだかってきたアメリカだ。以前ほどの女子サッカー界における支配力はないとはいえ、簡単なタスクではない。
しかし、勝利すればメダルラウンドへの扉が開き、表彰台に一歩近づくことができる。それ自体が土曜日にパリのピッチに立つ池田監督と彼女たちの十分なモチベーションになるだろう。
(マイケル・チャーチ/Michael Church)
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。