大岩Jは「過ちを繰り返さない」 東京五輪になかった“傾向”を英記者指摘「証明している」【コラム】
イスラエル戦では先発6人を入れ替え
パリ五輪・男子サッカーを戦うU-23日本代表は現地時間7月30日、グループリーグ最終節でイスラエル代表に1-0の勝利を収めた。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は「前任者の誤った判断から学ぶ力があることも示した」と、指揮官の手腕を称賛している。
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小久保玲央ブライアンの存在と終盤のゴールによって、日本は完璧な成績で準々決勝進出を決めた。だが、大岩剛監督のチームはメダル獲得に向けて、スペインとの厳しい試練に挑むことになった。
小久保が成長を遂げたその実力を存分に発揮し、そしてベンチから投入された細谷真大の活躍が日本を優位な立場へと導いた。
これらはカタールのU-23アジアカップで優勝し、8大会連続の五輪出場を決めた大岩監督率いるチームの特徴だといえる。
大岩監督のチームが結果を出す能力を示してきた一方で、元鹿島アントラーズのDFは前任者の誤った判断から学ぶ力があることも示した。
大岩監督はイスラエル戦で、第2戦のマリ戦から先発を6人も入れ替えた。これは2021年の東京五輪で森保一監督が犯した過ちを繰り返さないことを意味している。
森保監督は決勝トーナメント進出が決まっていたにもかかわらず、第3戦のフランス戦でも選手の入れ替えを最小限にとどめた。準々決勝ではニュージーランドにPK戦で勝利したが、疲れ切った日本はその後の2試合でスペインとメキシコに敗れた。
大岩監督はチームが表彰台に乗るための挑戦に疲労が影響を与えないような決断している。6人の入れ替えはクレバーな判断で、関根大輝、大畑歩夢、藤田譲瑠チマといったキープレーヤーたちをベンチスタートとし、5日間で2試合を戦った選手たちに回復の機会を与えた。
これにより、ほかの選手たちにも先発の機会を与えることができ、主力選手の累積警告による出場停止を回避することもできた。
大岩監督は今大会だけでなく、カタールでのU-23アジアカップを制した時も同様にチームを上手く活用している。マリ戦とイスラエル戦の決勝点を含め、日本は3試合全てで終盤に得点を決めていることがそれを証明している。
15、6人の選手を起用して試合に勝利する。そのようなチーム全体の活用によって大会で成功を収めるという理解が、大岩監督と彼のチームを優位な立場へと導いている。
しかし、日本がここからさらに前に進むことができるかどうかはまだわからない。イスラエル戦は特に藤田不在の中盤が守備力を欠いていて、全体的なパフォーマンスは説得力がなかったからだ。
とはいえ、疲れ切った身体を休ませ、主力選手の出場停止を回避してフルメンバーに近い状態で次の試合に臨むことができる。2021年の東京五輪で日本の金メダルの望みを絶った国との試合に向けて、これ以上の準備はないだろう。
(マイケル・チャーチ/Michael Church)
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。