PK失敗で試合後号泣も…田中美南は「引きずらないと思う」 仲間だから知る“強さ”【見解】

顔を抑え悔しさを露わにする田中美南【写真:早草紀子】
顔を抑え悔しさを露わにする田中美南【写真:早草紀子】

【専門家の目|岩清水梓】ブラジル戦で不運が続いたFW田中美南、元なでしこJ岩清水が寄せた期待

 なでしこジャパン(日本女子代表)は現地時間7月28日にパリ五輪の第2戦でブラジル代表と対戦し2-1の劇的な逆転勝利を飾った。2008年北京五輪と12年ロンドン五輪に出場し、11年の女子ワールドカップ(W杯)優勝メンバーでもある元代表DF岩清水梓は、PK失敗など苦しい場面の多かったFW田中美南について「自分の弱みを見せながらも、仲間と作り上げられると思う」と、復活への期待を込めた。(取材・構成=轡田哲朗)

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“彼女の日ではない”というような試合だった。前半19分にはMF宮澤ひなたから届いたラストパスに合わせるチャンスを迎えるもシュートをゴール左へ外してしまった。また、前半終了間際にはPKをセーブされてしまう。後半にはテクニカルなボレーシュートを放つも相手GKにファインセーブされた。試合後には涙を流す姿もあった。

 日テレ・東京ヴェルディベレーザで長年チームメイトとしてプレーした岩清水は「起点作りなど美南らしいキープで時間を作るプレーはあったけれど、(宮澤)ひなたからのクロスを外したものもあり、前半良くないオーラが漂った感はあった。後半のボレーも止められてしまったけれど、難しい体勢から持っていけている。シュートまで絡んでいけているのはプラス要素」と話す。むしろ「シーズンオフ明けでコンディションもあまり良くないように見える。もっとプレッシングにいける選手だが、彼女が引いてしまって全体が重くなってしまう場面もあった」と、チームの守備の先頭に立つ部分で、改善の余地があると指摘した。

 後半に選手交代を行うなかで、池田太監督は最後まで田中をピッチに残した。その点について「交代になってもおかしくないかなと思った。そこで代えないのも、池田監督のマネジメントだと思う。エースとしての責任で立てた部分もあると思うし、チームマネジメントという面も見えた」と分析した。

 試合後に涙を流す姿もあったが、長年のチームメイトでもある岩清水は田中について「切り替えのうまさがあるし、あまりクヨクヨしているのを見たことがない」という。「悩むところはあると思うけれど、(元チームメイトの長谷川)唯とかと話して引きずらないと思う。美南はうまく人に弱音も言える人だと思うし、自分の弱みを見せながら仲間と作り上げられると思うので、次の試合までにいいモチベーションにできると思う。自分が点を取れていないことも、自分がつぶれながら周りが点を取れればいいという考えにもなると思うし、ベレーザでキャプテンをやっていたこともあるのでチームのことを考えられる」と期待した。

 日本はこの後、現地時間31日にナイジェリアと対戦する。五輪の女子サッカー競技は12チームが出場し、4チームずつに分かれた3組のそれぞれ2位以上と3位のうち上位2チームが準々決勝へと進出する。ナイジェリア戦と同組のもう1試合の結果次第で首位通過から4位敗退まであり得る勝負どころになった。

[PROFILE]
岩清水梓(いわしみず・あずさ)/1986生まれ、岩手県出身。2001年に日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)でリーグ戦デビュー。なでしこジャパンには06年に初選出され、女子W杯メンバーに3度、五輪メンバーには2度選ばれ、11年W杯の優勝を経験した。20年3月に第一子を出産し、“ママさん戦士”として現役を続ける。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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