劣勢の大岩Jが変貌…海外驚いた「15分間」、目立たなかった男が一変「息を吹き返した」【コラム】
五輪グループ2戦目でマリを1-0撃破、8強入りの大岩Jを英記者が評価
大岩剛監督率いるサッカーU-23日本代表は、現地時間7月27日に行われたパリ五輪男子サッカーのグループリーグ第2戦でマリに1-0で勝利し、決勝トーナメント進出を決めた。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏がこの試合を総括。苦しみながらも勝利を勝ち取った戦いぶりに期待感を覗かせている。
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2連勝で、勝ち点6、1試合を残してノックアウトラウンドへ進出。このパリ五輪で、日本がこれほど早く準々決勝進出を決めるとは誰も予想していなかっただろう。
だが、パラグアイ戦の勝利が妥当な結果だった一方で、マリ戦の勝利は小久保玲央ブライアンのポスト間での能力と幸運に恵まれての結果だったと言える。
そのことは、試合終了8分前に山本理仁が決勝点を奪うまで、日本が1本も枠内シュートを打てていなかったことが物語っている。フィジカルに優れ、鍛え抜かれたマリの守備に日本は苦戦を強いられた。
おそらく大岩監督とそのチームは、3月に1-3で敗れた時の記憶を頭の片隅に抱えたままこの試合に臨んでいたのだろう。マリとパラグアイの試合は全く異なるチャレンジだった。
マリはアスリート能力に優れた力強いチームで、フィジカルの強さが要求された。日本はボールポゼッションで優位に立ったが、サイドでのスピード、中央でのパワーを生かしたアル・ディアロ監督率いるチームのほうが常に得点の気配を漂わせていた。
しかし、小久保が3度もトップクラスのセーブを披露して失点を防ぎ、試合の均衡を保った。日本のディフェンスは強固で、特に高井幸大と西尾隆矢もマリが突破するのが困難なバリアを築き上げていた。
実際、この試合ではこの2人の守備が際立っていた。力強さとスピードを全面に押し出したプレーで力を存分に発揮した。
その一方で攻撃は精彩を欠いた。マリの守備を崩し切れずにいたなかで、後半に大岩監督がフレッシュさと新しいアイデアを加える選手交代を行ったことでようやく変化が生まれた。
そして終盤、細谷真大が息を吹き返した。柏レイソルのストライカーはそれまで目立たない存在だったが、最後の15分で2度、アフリカの守備を崩すプレーを披露した。
最初のチャンスは三戸舜介がシュートを枠外へ飛ばす信じられないようなミスで得点にはつながらなかったが、その後山本の決勝点につながるシーンを作り出した。
しかし、それでドラマは終わらなかった。マリは山本のゴールの前にはヘディングシュートがポストをたたき、アディショナルタイム6分に得たPKはチェイクナ・ドゥンビアが枠の外に外すという不運が続いた。
規律あるパフォーマンスを見せていたマリにとってふさわしくない残酷なミスだったが、大岩監督は気にしないだろう。2試合で6ポイントを獲得し、日本は次のラウンドへ進む。この勝利はU-23アジアカップでの優勝を彷彿とさせるものだ。
この日本代表は勝利を生み出すことができるチームだ。それはトーナメントで勝ち進むために必要な特性と言えるだろう。
(マイケル・チャーチ/Michael Church)
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。