「中継じゃない」から気付けた「クレバー」さ 現地観戦のOB、大岩Jエースの献身性に驚嘆【見解】
【専門家の目|丹羽大輝】スペインからボルドーでの一戦に駆け付けた
大岩剛監督が率いるサッカーU-23日本代表は現地時間7月27日、パリ五輪のグループリーグD組第2戦でマリ代表と対戦し、1-0で勝利した。後半37分に決めたMF山本理仁の2試合連続ゴールが決勝点。グループリーグ2連勝で準々決勝進出を決めた。スペイン4部アレナス・クルブ・デ・ゲチョでプレーする元日本代表DF丹羽大輝は、この一戦を現地観戦。スタンドから大岩ジャパンの戦いぶりを見て、FW細谷真大の献身性を絶賛した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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スペイン・バスク地方から車で約3時間。フランス・ボルドーで行われた一戦に駆け付けた。初めて見た大岩ジャパンは、想像以上のハードワーク、献身性に満ちたチームだった。なかでも、前線で体を張っていた細谷の存在は大きかった。
「彼は攻撃の場面、決勝点のシーンに目に行きがちですけど、守備でもめちゃくちゃハードワークしていた」
試合は0-0で迎えた後半37分、細谷が右サイドを抜け出して中央にクロス。これにファーサイドから途中出場のFW佐藤恵允が合わせ、相手GKが弾いたボールをMF山本理仁が押し込んで先制ゴールを奪った。しかし、試合終了間際にMF川﨑颯太がVARでハンドを取られて、PKを献上してしまう。ここでGK小久保玲央ブライアンが完全にコースを読み切り、相手のシュートはゴール左外へ。前半から好セーブを見せていた小久保が大仕事をやってのけて勝利を掴んだ。
センターバック(CB)として日本代表経験もある丹羽が感じたのがエース細谷の動きだった。目で追えば追うほど「めちゃくちゃクレバー」と驚いた。
「ハイライトでしか見たことなかったから初めてフルで見たけど、例えばポストプレーで体を当てる時に相手のCBに対してプレッシャーいくことでも貢献度が高い。それもがむしゃらに行くんじゃなくて、どのタイミングで行くかというのをうかがっている。それが僕はいいなと思いましたね」
ポストプレーでも、すべて“奪われない”という身体の当て方ではない。「自分が奪われたとしても相手がいい状態で奪われないようにする。自分が競り負けても相手が100%勝てるような競り方はしない。中継じゃなくて上から見たからこそ分かったことですね」。スタンドからプレーを目に焼き付けたからこそ“賢さ”に気付いた。
ハードワークをしながら決勝弾を演出、終盤の苦しい時間帯で相手を“置き去り”にするドリブル突破ができたのも、細谷の「クレバーさ」があったから。「素晴らしい働きでしたね」。ボルドーの地でエースは輝いていた。
[PROFILE]
丹羽大輝(にわ・だいき)/1986年生まれ、大阪府河内長野市出身。ガンバ大阪のアカデミー出身で2004年にトップチーム昇格。だが、なかなか出場機会を得られず、徳島ヴォルティス、大宮アルディージャ、アビスパ福岡を経て2012年に6季ぶりのG大阪復帰を果たした。2014年にはG大阪の国内三冠獲得に貢献。翌15年にはバヒド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表に選出され、国際Aマッチ2試合に出場している。サンフレッチェ広島、FC東京と渡り歩き、2021年からスペインへ挑戦。4部のセスタオ・リーベル・クルブではビザ取得後にレギュラーとして活躍し、3部昇格に貢献した。昨季からは4部アレナス・クルブ・デ・ゲチョでプレーしている。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)