日本代表OB指摘「連係が機能しない可能性もあった」 “苦渋の選択”は「結果的に正解」【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】決勝トーナメント以降でもパリ五輪世代の一体感を保てるか
大岩剛監督率いるU-23日本代表は、現地時間7月27日に行われた男子サッカーのパリ五輪グループリーグ第2戦でマリを1-0と下し、決勝トーナメント進出を決めた。2試合連続で完封勝利を収めたなか、元日本代表DF栗原勇蔵氏は「結果的にパリ五輪世代だけで挑んで正解だった」と、チームの一体感に目を向けている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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初戦のパラグアイ戦で5-0と快勝した日本はマリ戦でスタメン3人を変更し、MF山田楓喜、DF西尾隆矢、MF荒木遼太郎を起用。試合は0-0のまま推移して迎えた後半37分、FW細谷真大が右サイドを抜け出して中央にクロスを上げると、これにファーサイドから途中出場のFW佐藤恵允が合わせ、相手GKが弾いたボールをMF山本理仁が押し込んで先制ゴールを奪った。
試合終了間際にMF川﨑颯太がビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)でハンドを取られて、PKを献上したが、GK小久保玲央ブライアンが相手FWドゥムビアのPKのコースを完全に読み切り、相手のシュートはゴール左外へ。小久保が幾度も好セーブを見せたこともあり、1-0で勝利した。
オーバーエイジなしでグループリーグを突破は日本史上初。日本サッカー界の歴史を塗り替え、守護神の小久保も「歴史を塗り替えようというのはあったので、それが結果として出たのですごい嬉しい」と胸を張った。また、決勝点に絡んだ佐藤も「大会が始まる前からオーバーエイジがいなくても勝てると思っていたので驚きはないけど、今まで積み重ねてきたチームメイトと勝てるのは分かっていた」と、仲間たちとの絆を強調した。
今大会はMF久保建英やMF鈴木唯人、GK鈴木彩艶といった欧州組を招集できず。2008年の北京大会以来、16年ぶりにオーバーエイジ枠も使わなかった。決して下馬評は高くなかったなかで、グループリーグ2連勝での準々決勝の切符を勝ち獲った。
日本代表OB栗原氏は、「メダルを獲りに行く目標はあると思いますけど、ベストメンバーを招集できずにグループリーグで1勝もできない可能性もあった。そのなかで見事な2連勝。結果だけ見ると、オーバーエイジを呼んで連係が機能しないリスクもあると考えれば、結果的にパリ五輪世代だけで挑んで正解だった」と見解を述べた。
「スーパーな選手を呼ぶと、その選手を生かそうとするからリズムも変わってしまう。U-23世代は海外でプレーしている選手も多く、オーバーエイジの選手と言えど、そう簡単ではない。どれだけ能力の高い選手を入れても、短期間では噛み合わないことはある。和を乱さないと言うか、メンタル的に引っ張る選手のほうが生きるけど、それだとオーバーエイジを呼ぶべきなのかどうか。そこまで差がなければ、今までやってきたメンバーで連係を大切にしたほうがいい。さらに勝ち上がっていった時に経験の有無は問題になる可能性もありますが、今の時点ではOKだと思います」
日本はすでに決勝トーナメント進出を決め、7月30日に第3戦イスラエル戦を迎えるが、グループ首位通過が懸かった試合でもあり、栗原氏は「第3戦でテストはいらない。とにかく結果重視でいい、マリには3月の親善試合で1-3と負けていたわけで、今回は手堅く1-0で勝利。今の大岩ジャパンには勝負強さもある」と、今の勢いを保つように説いていた。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。