15歳で衝撃FK弾…久保建英の“変わらぬ表情” 日本のピッチで見据えた視線の先【コラム】
ソシエダ久保はプレシーズンマッチG大阪戦で“凱旋”
それにしてもサッカーの試合というものは90分間でさまざまな表情を見せるものだ。リーグ戦で好調のガンバ大阪と日本代表MF久保建英が所属するレアル・ソシエダが対戦した前半は、両チームが長所を出し合い見せ場を作るという展開にはならなかった。
ピッチに立った全選手のエンジンになかなか火が入らず、おとなしい攻防で試合が進んでいく。観客からの期待を受けて先発出場を果たした久保も、スタジアムを沸かせるテクニックを披露することはできなかった。
しかし、後半に入ると選手たちが徐々に本来の力を見せ始め、その動きも活発になっていく。そして、試合内容を好転させたのはG大阪の守備陣だった。プレーに躍動感が出てきたレアル・ソシエダが作り出した決定的なゴールチャンスをGK石川慧がファインセーブで防ぐ。中谷進之介を中心としたDF陣もピンチを凌いでスタンドを沸かせると、その勢いに呼応するように攻撃陣もギアを上げレアル・ソシエダのゴールへと迫る。
静かな展開だった前半と比較して、後半は明らかに両チームの選手たちが見せるパス交換による崩しや単独でのドリブル突破にスピードが増し、攻守の切り替わりも激しくなっていった。後半は見応えのある内容となった。
期待の久保は後半8分に交代してプレーを終えた。思えば早くからその才能が注目されていた久保を最初に撮影したのは、選手としての成長の舞台をスペインから日本に戻し、飛び級でFC東京U-18に所属していたときだった。試合は2016年8月2日に行われた第40回日本クラブユースサッカー選手権での準決勝の対川崎フロンターレU-18戦。
後半からピッチに立った久保は出場わずか3分後に直接フリーキック(FK)を決める。歓喜する久保に向けてカメラのシャッターを切り続けた。試合結果は先制を許していたFC東京U-18がこの久保の同点弾で勢いづき、そこから連続4ゴールを奪取して勝利している。
11月5日には当時J3リーグに所属していたFC東京U-23の一員としてAC長野パルセイロ戦に後半から出場。Jリーグ史上最年少出場記録を塗り替えた試合を撮影した。
J1リーグでのプレーを経て、再びスペインで研鑽を積む久保の成長は留まることがなく、今イングランドの名門チームへの移籍が噂され、去就が注目されている。
所属クラブや日本代表とさまざまな舞台で久保をカメラのファインダーのなかに捉えてきた。この対G大阪で垣間見せた久保の表情から彼の思いを想像し、重ね合わせてみる。視線の先に見据えているものはさらなる高み。世界のトップレベルでプレーする思いはFC東京U-18のとき、いやそのずっと前から自らの才能を信じて戦ってきた久保の目標であり、彼の姿を写真に切り取る作業はこれからも続く。
(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。