仏高速鉄道の破壊でサッカー「大混乱」 他国経由で移動も…交通網“麻痺”のリアルな影響【現地発】
パリ五輪開幕も…同時多発的な破壊行為が発生
いよいよ開幕したパリ五輪。全体的な盛り上がりに欠けるパリ市内の様子を横目に、当日の朝刊各紙は有名スポーツ紙「レキップ」を始め、開幕ムード一色。いよいよスポーツの祭典がスタートするという印象を受けた。
しかし、フランス国内では同日早朝、世界中が注目するタイミングを見計らったかのように鉄道を狙った同時多発的な破壊行為が発生。フランス高速鉄道TGVのケーブルが設置されていた場所が放火され、パリを中心とする鉄道網に大混乱を生じさせている。
大きな影響が出たのが、パリとフランス西部、北部、南部をつなぐ列車。これが日本代表選手やサポーターの足に大きなロスを生むことになった。
ブラジルとの第2戦に向けて鉄道でフランス西部のナントからパリへ移動予定だったなでしこジャパンは、急きょバスでの移動を余儀なくされ、4時間45分をかけて現地へ到着。思わぬ負担を強いられることになってしまった。
この鉄道トラブルは、サッカー日本代表を応援しようとフランスに駆けつけたサポーターにも大きな影響を与えた。
フランス時間の26日昼から夕方にかけて、羽田や関空発の直行便、ソウル経由便などが立て続けにパリのシャルル・ド・ゴール空港へ到着。週末を活用できるスケジュールでもあり、第2戦から現地入りするサポーターも少なくなかった。
しかし、長距離のフライトを終えてようやくパリの地に降り立った彼らに、さらなる試練が待ち受けていた。男子サッカーの第2戦が行われるボルドーはフランス南西部。空港に到着した時点でパリ・モンパルナス駅からボルドーへ向かうTGVが完全にストップ。パリで足止めを食らうことになってしまったのだ。
何としてもボルドーに辿り着きたい──。そう考えたサポーターたちは、素早く別の移動手段を模索し始める。
その時点で残されていた主な手段は、パリから約6時間の長距離バス、国内線で地方を経由しての乗り継ぎフライト、国際線でボルドーに就航している都市をステップしての乗り継ぎフライト、そしてパリに残って翌朝のTGV復旧に望みをつなぐことだった。
だが、国内線は開会式に向けたテロ防止策(今回の鉄道トラブルの影響もあったはず)で、急きょ地方空港とパリをつなぐ便が完全にクローズ。当日に到着できる夕方発の長距離バスはすぐに満席になってしまう。
友人の一人はイングランド経由のフライトで同日夜に辿り着き、別の友人は午前2時半着の長距離バスでボルドーの地を踏んだ。一方、パリに残って復旧の可能性に望みを託している友人もおり、現時点では彼らが試合に間に合うかは不透明だ。
そんな中でも救いを挙げるとするならば、マリとの第2戦はキックオフが午後9時と遅いこと。ボルドー駅からはトラム直通、30分程度でスタジアムへ到着できる。勝てば準々決勝進出が決まる重要なゲームとなるだけに、一人でも多くのサポーターが試合に間に合うことを願うばかりだ。
なお、開会式が行われていた午後8時半頃にボルドー駅の発着案内を見たところ、パリ・モンパルナスからのTGVが一部到着しているという表示が出ていた。ただ、パリに電車がない(飛行機でいうところの機材繰りができていない)ため、ピストン輸送をするまでには至ってない様子だ。ただし、運行再開した列車でも、もともと予約していた指定席はすべてキャンセルされ、乗客には全額払い戻しの案内メールが届いている。運行の見通しが立たないからか、夕方の時点では新たな指定席の予約も受け付けていないという。ボルドー駅やバスターミナルでは、移動できずに困った旅行客が座り込んでいる姿が多く見られた。
フランスの国営鉄道によると、完全復旧は週明けになる見込みを発表している。27日はボルドーで男子サッカー、翌28日にはパリでなでしこジャパンの試合が行われ、そして男女の第3戦はナントに会場を移して開催される。また、27日から男女バスケットボールのグループステージが開催されるフランス北部のリールもパリからの交通網が麻痺したまま。いずれもまだまだ混乱が続く可能性が高いと見ておくのが妥当だろう。
TGVがここからどう復旧するのかは分からない。だが、ボルドーで行われるマリ戦の裏側には、どうにかして日本代表を現地で応援したいというサポーターの強烈な熱量が秘められていることはしっかりとお伝えしておきたい。そして昨年、京都で完敗を喫したマリにリベンジし、ストレートで決勝トーナメント進出を決める大岩ジャパンの姿に期待したいところだ。
(青山知雄 / Tomoo Aoyama)