女王相手になぜ「危険性をはらんだ戦い方」 なでしこ戦術に英記者疑問も…「希望は十分」【コラム】
なでしこジャパンはパリ五輪初戦で痛恨の逆転負け
パリ五輪の女子サッカー競技は現地時間7月25日にグループリーグの初戦が行われ、C組のなでしこジャパン(日本女子代表)はスペイン代表と対戦し、MF藤野あおばの直接FK(フリーキック)弾で先制するも1-2の逆転負けを喫した。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は、リード後の展開は「危険性をはらんだ戦い方」だったと指摘した。
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木曜日にナントで行われた女子ワールドカップ(W杯)優勝チームであるスペインとの試合で、その大会のスペインに汚点を付けた勝利をなでしこジャパンは繰り返すことはできなかった。それでも、池田太監督はオリンピックの金メダル候補との戦いから勇気づけられただろう。
スペインは女子W杯のタイトルに加え、金メダルを獲得する筆頭候補としてフランスへの短い旅に出ている。対する池田監督のチームは、2年前のウェリントンでの素晴らしい偉業を再現できなかったが、満足できることはたくさんあった。
今回も日本のプランは明確だった。カウンターでスペインを叩ける機会が来たらそれを生かし、それ以外の局面ではポゼッションを志向する相手にプレッシャーをかけ続けた。
開始2分、田中美南が藤野あおばにパスを通して決定機を作り出し、GKカタ・コルに防がれた場面で、このやり方はすぐに利益をもたらそうとし、それが正しいアプローチであるとともに、スペインが同じ形に影響を受けやすいことが示唆された。
その11分後、藤野が決めた先制点によって、日本がW杯の再現ができる可能性がさらに広がったが、池田監督のチームは、試合の主導権を譲渡してしまった。
力強い試合のスタートを経てリードを奪った日本は、どんどん、どんどん深い位置に下がっていき、ボールに対してのプレスが弱まり、スペインに試合のコントロールを許した。世界チャンピオンのような熟練したチームに対し、それはとても危険性をはらんだ戦い方だった。
前半22分にアテネア・デル・カスティージョの素晴らしいスルーパスからアイタナ・ボンマティが冷静にフィニッシュを決めた同点ゴールの時間帯は、スペインが主導権を握っていたため、ほとんど驚きはなかった。
この流れはハーフタイムまで続き、日本の守備陣はモンセ・トメのチームを寄せ付けないために懸命になっていた。
後半に入ってもスペインは主導権を握り続けていた。それでも日本は、後半22分に絶大な信頼を寄せられる清水梨紗を負傷によって失うまでは、落ち着いて守備を続けていた。
それは清水の代役となった高橋はなが、後半29分にマリオナ・カルデンティに中を取られ、そのプレーの中からアーセナルのウイングは最終的に決勝点となるゴールを挙げた。
どんな監督であっても、大きな大会で黒星スタートを切ることを望む者はいないだろう。それでも池田監督は自分のチームがスペインほどの実力があるチームと互角に渡り合い、僅差で負けたことには幾分慰められるだろう。
なでしこが残りのグループステージで、ブラジルとナイジェリアの両国を相手に、同様の基準のパフォーマンスを見せることができれば、日本が決勝トーナメントに進出して金メダルを争う試合でスペインと再戦する希望は十分につながるだろう。
(マイケル・チャーチ/Michael Church)
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。