5得点で圧勝…三笘薫にもチャンス プレミア史上最年少監督が日本で行った“大胆テスト”
ブライトンは「ジャパンツアー2024」の初戦で鹿島に5-1で圧勝
イングランド1部ブライトンは7月24日、「ジャパンツアー2024」で鹿島アントラーズと対戦し、5-1と圧勝した。新シーズンから指揮を執り、国立競技場で初陣を飾ったファビアン・ヒュルツェラー監督は、1か月後に開幕が迫るプレミアリーグに向け、独自のカラーを映し出す、大胆な起用法を試みているように映った。
昨季限りでロベルト・デ・ゼルビ監督が退任し、プレミアリーグ歴代最年少となる31歳で就任したヒュルツェラー監督。ツアー初戦となった鹿島戦では、昨季ボランチのレギュラーに定着していたMFカルロス・バレバをセンターバック(CB)で起用、MFジェームズ・ミルナーをアンカーに配置するなど新体制のカラーを早速、打ち出してきた。
ミルナーは低い位置からゲームメイクし、前半15分には鋭いロングボールを供給してFWヤンクバ・ミンテの先制点をアシストした。また、CBにコンバートされたバレバは最終ラインからの縦パスでビルドアップの起点となり、前線にボールを運んでハーフライン付近に構えるMF三笘薫にボールを積極的に渡すなど、チャンスも演出していた。
前日練習でヒュルツェラー監督はGKからのビルドアップを入念に指導し、GKの両脇までCBの2人を下ろし、両サイドバック(SB)をワイドに張らせて細かく立ち位置を確認した。最終ラインでボールを回しながら、アンカーのミルナーにボールが入った瞬間、味方が敵陣に走り込んで、パスを通すトレーニングに時間をかけて取り組んでいた。鹿島戦でも練習通りにGKのビルドアップから展開する場面が数多くあり、試合後に指揮官もチーム作りで注力しているポイントを説明した。
「昨日のトレーニングで力を入れたのはポジショニングだった。最終ラインで誰がどこに、どのようにいるべきかを確認していた。バランスが大事で、相手をチェックしにいきつつ、スペースを見つけ出すことが重要で、どうしても相手が動いてくれない、出てきてくれない時は自分たちでスペースを生み出さなくてはならない。もしくは、数で押す、数的有利な状況にするといったバランスを取ってやっていく必要がある」
ポゼッション時は最終ラインが敵陣まで侵入するハイラインを敷いていたが、ボールロストした際は裏にボールを放り込まれてピンチを招く局面もあり「鹿島にはいい選手がたくさんいて、彼らがスペースのギャップを埋めてきた。さらに、深く走られて裏を取られてしまう場面があった。最終ラインを高くしすぎたので、裏でボールを受けられてしまう回数が何度もあり、それは我々が求めているサッカーとは違うので、改善していく」と、指揮官は課題も指摘していた。
この日のキーマンは紛れもなく、最終ラインと前線のリンクマンを務めたミルナーだった。主戦場はインサイドハーフで、時にはSBを務めるユーティリティー性も発揮するが、意外にもアンカーでのプレー機会はほとんどない。最終ラインからボールを受け取り、攻撃のスイッチ役としてゲームを展開するタスクを担い「監督のスタイルがこれまでと違うが、以前の強みは維持しているのがポジティブ。守り方も変化があるので、時間がかかるとは思うが、今日は良いエネルギーを出せた」と前向きに捉えていた。
パリ五輪に参加しているパラグアイ代表MFフリオ・エンシソや、急遽、来日が取りやめとなったMFジョアン・ペドロら主力勢が合流すれば、またチーム作りの方向性が異なってくる部分も出てくることにはなるだろうが、新生ブライトンは、これまでと異なるアプローチを試みているのは確かだろう。
(城福達也 / Tatsuya Jofuku)