大岩Jは「新たな扉をこじ開けて」 OA不在はアドバンテージにもなる…アテネ五輪主将が伝えたい“教訓”
【2004年アテネ五輪|GL敗退】那須大亮氏が注目するU-23日本代表の選手は?
パリ五輪でのメダル獲得に期待が懸かる大岩剛監督率いるU-23日本代表。今大会は2008年の北京五輪以来4大会ぶりにオーバーエイジ(OA)なしのメンバー構成となる。2004年のアテネ五輪にキャプテンとして出場した元Jリーガーで、現在はYouTuberとして幅広く活躍する那須大亮氏に今大会の展望、注目選手について訊いた。(取材・文=石川 遼)
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那須氏が出場したアテネ五輪ではMF小野伸二とGK曽ヶ端準がOAとして招集された。国際経験の少ない若い世代の大会において、この24歳以上の選手には戦力面での強化はもちろん、チームの精神的支柱としての役割が期待される。2012年のロンドン五輪ではDF吉田麻也とDF徳永悠平の2人、16年のリオ五輪ではDF塩谷司、DF藤春廣輝、FW興梠慎三の3人、そして2021年東京では2度目のOA選出となるDF吉田とDF酒井宏樹、MF遠藤航の3人が名を連ねた。
今大会に向けては遠藤やMF久保建英らが招集される可能性が伝えられていたが、所属クラブとの折り合いがつかず、最終的にはOAなしで18人のメンバーが固まった。こうした結果について「(OAが)選ばれると思っていた」と話す那須氏は、経験値があり、リーダーシップを発揮できる選手の不在に懸念を示している。
「おそらく世論的にもOAが選ばれてほしかったという声が多いだろうと思います。このパリ五輪の代表選手のメンバーを見ると、国際舞台を多く経験している選手が数多くいるわけではないので、そういう意味では精神的支柱というところでも期待がありました。3月に京都で行われたマリ戦(1-3で敗戦)を見ていた時に、全員が試合に出ていたわけじゃないですけど、誰がチームを引っ張っていくのかというところが少し見えないと感じました。なので、第三者的な立場としては、圧倒的なリーダーシップを発揮する選手は必要なんじゃないかと感じていました」
この世代で中心を担ってきたMF松木玖生も欧州移籍と重なることからメンバー外に。20歳でFC東京のキャプテンに就任し、この代表でも間違いなくリーダーの1人だっただけに、チームに与える影響は少なくないだろう。
とはいえ、キャプテンのMF藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)を筆頭に、GK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ→シント=トロイデン)、MF山本理仁(シント=トロイデン)、MF三戸舜介(スパルタ)、FW佐藤恵允(ブレーメン)、FW斉藤光毅(ロンメルSK)と複数の欧州組がいるのは、アテネ五輪当時とは大きな違いだ。那須氏は「この世代の日本人の価値も非常に高く、全体的なレベルは(アテネ五輪との比較で)間違いなく上がっている」とチーム力の高さに太鼓判を押す。
そして、予選に参加していなかった選手を本大会までの短い期間にチームに組み込む工程がないという意味では、OAの不在は「積み重ねたものがそのままこの本大会に持っていける」とポジティブな捉え方もできる。「アテネ五輪ではOAに依存してしまっていた」という反省から、那須氏はチームとしての一体感をより高められるという点においては「OAがいないことがアドバンテージにもなりうる」との見解を示した。
注目は欧州で研鑽を積む万能MF「彼のところで時間を作れる」
そのなかで、那須氏は注目選手として藤田の名前を挙げている。テクニックとポジショニングセンスに優れ、攻守両面で試合をコントロールできる22歳のMFは現地時間7月17日に行われた開催国フランスとのテストマッチでも先制ゴールを決めて存在感を示した。2022年のE-1選手権で20歳の時にA代表デビューを飾り、23年にはベルギーに活躍の場を移した。
「注目しているのは藤田譲瑠チマ選手。彼のところでボールを持って時間を作れる。遅攻・速攻の使い分けによってゲームを落ち着かせられますし、勝負の決めどころをプレーで示してくれる。そういう部分で彼にはかなり期待してます」
8大会連続出場となる日本。ロンドン五輪と前回の東京五輪では3位決定戦で敗れ、あと一歩のところでメダルを逃している。那須氏は1968年の銅メダルを獲得したメキシコ五輪以来の快挙に期待を寄せ、大岩ジャパンへ「歴史を変えてほしい」とエールを送った。
「日本サッカーが今後発展していくうえでは、各世代の大会で選手たちが新たな扉をこじ開けていかないといけないと思っています。協調性、1つの目標に対して一丸になって突き進む力は日本人の強み。その素晴らしさを示す意味でもメダルをとって歴史に名を刻むことを心から願っています」
[PROFILE]
那須大亮(なす・だいすけ)/1981年10月10日生まれ、鹿児島県出身。180センチ・77キロ。鹿児島実業高―駒澤大―横浜F・マリノス―東京ヴェルディ―ジュビロ磐田―柏レイソル―浦和レッズ―ヴィッセル神戸。J1通算400試合29得点、J3通算1試合0得点。2004年アテネ五輪代表で主将を務め、在籍した7クラブではCB、SB、アンカーを遜色なくこなした。2020年元旦の天皇杯決勝を最後に現役引退。2018年夏に開設した公式YouTubeチャンネルは登録者数が47万人以上を誇り、さまざまな形でサッカーの魅力を発信している。
(石川 遼 / Ryo Ishikawa)