スペイン戦は「そうやっていかないともったいない!」 なでしこJエース候補が五輪楽しみな訳【現地発】

清家貴子がスペインを意識【写真:早草紀子】
清家貴子がスペインを意識【写真:早草紀子】

2023-24シーズンのWEリーグ得点王&MVPの清家貴子がスペインを意識

 パリ五輪のグループリーグ初戦が行われるナントで、いよいよなでしこジャパン(日本女子代表)が始動した。パリから電車で約2時間半。雨の影響もあってか、涼しい中でのスタートとなった。この日のトレーニング会場はナント駅から徒歩圏内のスタジアム。多くの運営スタッフに迎え入れられたことで、選手たちには少しずつ五輪感が出てきたようだ。

 ウォーミングアップ始まりのランニングでは、スタジアムの周辺へ視線を投じたり、笑顔を見せながら、和やかなムード。冒頭15分で非公開となったその後のトレーニングでは、限られた人数で連戦を戦うための、人選を変えての配置や、組み合わせなどを詰めていった模様。選手たちの表情からしても、スムーズに準備が進んでいるようだ。

 シーズン中の好調さをキープしながら、いい状態でこの瞬間を迎えているのが清家貴子(三菱重工浦和レッズレディース)だ。WEリーグの2023-24シーズンは清家の攻撃力が爆ぜた。叩き出したゴールは「20」、初のMVPも獲得。サイドバックからトップまで複数ポジションを柔軟にこなす清家は、五輪後にイングランドのブライトン女子チームへの入団が決定している。

 国内で結果を残した彼女でも、五輪最終メンバー発表前は「まだ自分の中でこのチームを引っ張っているという自信はないんです」と苦笑いを浮かべるほど、なでしこジャパンでは主軸にまでは上り詰めていない、というのがこれまでの清家だ。けれどパリ五輪はそんな彼女を大きく変えるかもしれない。

 この一年で自信がついたプレーがある。「ワイドで受けるんじゃなくて、この中から受けて受けてターンしてシュートという形は、これまでの自分だったらボールを引き出せることが少なかった。WEリーグ後半にそういう形が増えてきて、そこにすごく成長を感じます」と本人が語るのは、このエリアでのコンビネーションに苦手意識があったからだ。その成長を代表でも反映させようとしている。

「自チームでは自分にボールを集めてくれますが、ここでは自分が引き出していかないといけない。流動的ななかで、ボールに関わった時に、どれだけ自分のプレーが出せるかっていうのが肝になってくる。まだまだもっと上げていけると思ってます」(清家)。

 ワールドカップ(W杯)チャンピオンであるスペインとの対戦も、清家にとっては楽しみでしかない。

「やっぱり個の部分で勝負したいですよね。このなでしこジャパンの最大限のパフォーマンスをぶつけたいと思いますし、そうやっていかないともったいない! こんな機会なかなかないですから。それでスペインを上回れたられたらもう最高なんじゃないかなって思います」(清家)

 まだまだここから五輪ムードを上げていきたいという清家は、時折オリンピック仕様の練習スタジアムに目をやりながら、ここに立つ楽しさを嚙みしめるように語ってくれた。初戦まではあと3日、清家貴子はさらなる上積みを求めていく。

(早草紀子 / Noriko Hayakusa)

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早草紀子

はやくさ・のりこ/兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサポーターズマガジンでサッカーを撮り始め、1994年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿。96年から日本女子サッカーリーグのオフィシャルフォトグラファーとなり、女子サッカー報道の先駆者として執筆など幅広く活動する。2005年からは大宮アルディージャのオフィシャルフォトグラファーも務めている。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。

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