J3独走中の大宮に“規格外FW”新加入…Jリーグ今夏補強“プラス効果”期待の7選【コラム】
夏移籍期間の各クラブ補強動向からプラス効果をもたらしそうな新戦力ピックアップ
Jリーグは後半戦に入り、夏の移籍期間に突入。ここからのロングスパートに向けた補強へ各クラブが動きを見せている。まだまだ移籍のニュースはありそうだが、ここまで特にプラス効果をもたらしそうな補強を筆者の視点で厳選。なおFW西村拓真(セルヴェット→横浜F・マリノス)やMF相馬勇紀(カーザ・ピア→名古屋グランパス)のように期限付き移籍先での契約が満了となり、復帰した選手は対象外とする。
■岩尾 憲(MF/浦和レッズ→徳島ヴォルティス)
J1の浦和から2年半ぶりに帰ってきた百戦錬磨の元主将は中盤の攻守をコントロール。復帰戦でJ2トップ6のベガルタ仙台を相手に、2-0の完全勝利を支えた。岩尾自身は加入会見において「新入社員の気持ちで」と語っていたが、序盤戦の低迷、シーズン中に監督交代を経験するなど、厳しい状況から何とか昇格プレーオフに手が届くところまで這い上がってきた徳島にとって、これほど心強い存在はいない。同じく夏に、ジュビロ磐田から完全移籍で加入したMF鹿沼直生にとっても良い導き手になりそうだ。
■垣田裕暉(FW/鹿島アントラーズ→柏レイソル)
ポストプレーと動き出しに優れる大型FWで、運動量もある。鹿島アントラーズの下部組織で育ち、トップ昇格から期限付き移籍を繰り返して、昨年ようやく鹿島に戻ってきただけに、本人も忸怩たるものはあるはずだが、4-4-2の柏で出場チャンスは広がるはず。シンプルなクロスに飛び込んで合わせるなど、より特長を発揮できそうだ。
■米本拓司(MF/名古屋グランパス→京都サンガF.C.)
ハードワークをベースにした、攻守にアグレッシブなスタイルを掲げる京都だが、良くも悪くも勢いで行ってしまうところがある。後半だけで24失点を喫しており、多くの試合でそのウィークポイントが敗因になっていた。ここ数試合は多少、改善されているが、米本のような選手が中盤にいれば、ダイナミックな中にも落ち着きをもたらすことができるだろう。スタメン、あるいは、途中から出ても追いかける時はゲームチェンジャーに。リードした終盤はクロージングで勝ち点を掴み取る鍵になり得る。
■ジョルディ・クルークス(セレッソ大阪→ジュビロ磐田)
磐田にとって待望の左利きサイドアタッカーとなるが、流れからのゴール、アシストはもちろん、セットプレーでも左足が大きな武器になりそうだ。アビスパ福岡時代を含めて、3年半のJ1経験があることも心強い。ブラジル人MFブルーノ・ジョゼも右サイドを持ち場とするアタッカーだが、横内昭展監督は2人がいることで、チームの幅が広がると歓迎する。イスラエル人センターバックのハッサン・ヒルも加わり、外国籍選手が7人となるが、この問題と向き合いながら、残り試合でどう使い分けて行くかは磐田の命運に大きく関わりそうだ。
大宮新加入FWのハマった時の破壊力はJ1、J2でも規格外
■三竿健斗(ルーベン→鹿島アントラーズ)
ポルトガルのサンタ・クララを経て、ベルギーのルーベンから1年半ぶりの復帰となる。ただ単に縁のある選手が帰ってきたわけではない。ランコ・ポポヴィッチ監督が願ってやまなかった、心身両面でチームの軸になれる補強だ。MF佐野海舟に代わり、中盤で守備強度を高める役割だけでなく、有事のセンターバック起用、そしてFW鈴木優磨など特定の選手に頼りがちだったリーダーシップの部分で鼓舞することができる。2016年のリーグ優勝をはじめ天皇杯、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)というタイトルの味を知る存在だが、欧州で得たものも還元したいという三竿の奮闘に期待だ。
■嵯峨理久(いわきFC→ファジアーノ岡山)
左右のサイドバック、ウイングバックをこなせるタレントで、非凡なスピードとテクニックを持ち合わせている。いわきがJFLからJ3、J2と駆け上がる原動力になった1人で、早い段階でのステップアップも期待されたが、昨年9月に左足の疲労骨折を負った。怪我から復帰した今年も3月末から欠場が続いており、コンディション面が不安視されたが、加入直後の栃木SC戦で途中出場。3バックをベースとする岡山のサイドアタックに推進力をもたらせるか。また岡山はJ1京都からFW一美和成も獲得。嵯峨のクロスに一美が合わせる形は相手ディフェンスの脅威になりそうだ。岡山はJ2トップ3の清水エスパルス、V・ファーレン長崎、横浜FCから離された4位にいるが、得点力アップで逆転の自動昇格を目指して行きたい。
■ファビアン・ゴンザレス(ヴァンフォーレ甲府→大宮アルディージャ)
“ラッソ”の愛称で知られる、爆発的な中央突破と豪快なフィニッシュを武器とするコロンビア人の大型FWだ。2年半在籍した磐田、そして半年間プレーした甲府でも、プレーに安定感を欠く傾向は見られたが、ハマった時の破壊力はJ1、J2でも規格外で、J3ならなおさらだろう。磐田時代の同僚であるFW杉本健勇とのコンビはもちろん、同じく7月に徳島から加入(今年はJ3ヴァンラーレ八戸でプレー)した21歳のナイジェリア人FWオリオラ・サンデーなどと、どんなアタッカー陣を形成するのか。J3を独走中の大宮だが、サンデー、横浜FCから加入のDF和田拓也とともに、来シーズンにもつながり得る補強だ。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。