高校生でJトップ昇格…五輪で「優勝したい」 190センチ超“逸材”が世界へ、大型CBの野望
【大岩ジャパン18人の肖像】DF高井幸大(川崎フロンターレ)が歩んだ19歳の順風キャリア
大岩剛監督率いるU-23日本代表は、今夏のパリ五輪で1968年メキシコ五輪以来、56年ぶりのメダル獲得を狙う。4位でメダルにあと一歩届かなかった東京五輪から3年、希望を託された大岩ジャパンの選ばれし18名のキャラクターを紐解くべく、各選手の「肖像」に迫る。
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五輪の登録メンバーは、ワールドカップ(W杯)の23人より5人少ない18人。そして今大会は見送られたものの、そこに3枠のオーバーエイジが入ってくることも多い。つまり、実質的に15人になることもある狭き門であるが、これで川崎フロンターレからは5大会連続となる選出となった。
・北京五輪(2008年):谷口博之
・ロンドン五輪(2012年):安藤駿介
・リオ五輪(2016年):大島僚太、原川 力
・東京五輪(2021年):三笘 薫、旗手怜央
そして今回の高井幸大である。
その歴史が途切れなかったことも把握しているのだろう。今月3日のメンバー発表後の囲み取材では「クラブを代表して行くので、フロンターレの気持ちを忘れずに頑張りたいと思います」と力を込めている。普段、あまり積極的には触れないクラブ愛を、珍しく口にしていた。
小学生の頃から川崎の下部組織で育ち、高校生でトップ昇格を果たした。これは宮代大聖(現ヴィッセル神戸)に次ぐクラブ史上2人目の出来事だった。その年にACL(AFCチャンピオンズリーグ)で公式戦デビューを果たすと、2023年シーズンにはJ1デビューも飾り、最終ラインの一角として順調にキャリアを積み重ねてきている。
192センチ90キロ。高さと速さを兼ね備えた大型ディフェンダーながら、アカデミー時代から培ってきた足もとの技術があり、巧なビルドアップもこなす。まさに現代型センターバック(CB)と言える存在だ。サイズもさることながら、試合中に物怖じしないメンタルも魅力で、パリ五輪出場権のかかった U-23アジアカップでは、終始落ち着いたプレーぶりで最終ラインに君臨し続けた。チーム最年少の19歳ながら、本大会でも守備の要を担う仕事が予想されている。
メンバー発表後の囲み取材の場で、「五輪の大舞台で勝負を分けると思う部分は何か」という質問を彼に尋ねてみた。大舞台になればなるほど、勝敗は細部で決まるものである。その肝についてどう考えているのかを聞いてみたかったのだ。
高井は表情を変えぬまま、いつものように短く答えた。
「相手も強豪ばかりで一瞬の隙でやられると思います。集中力を切らさずにやっていきたい」
サッカーにおいて勝負を分けるものは、究極的には「チャンスを決めるか。決められないか」であり、言い換えると、「チャンスを止めるか。止められないか」に尽きる。その意味で、高井が相手のチャンスを止め続ければ、少なくとも日本は負けることはない。
開幕前に行われた開催国であるU-23フランス代表との国際親善試合では、終始劣勢を強いられる展開のなか、集中力を切らさず粘り強く対応した。1失点こそしたが、堂々と渡り合っていた高井は本番に向け十分な存在感を示した。スタメンでフル出場を果たしており、指揮官からの信頼も厚いと言えるだろう。
「出場するからには優勝したいです。それが狙えるメンバーだと思うのでチーム一丸となって頑張りたい」
目標は優勝だと公言する。一瞬の隙が勝敗を分ける五輪の舞台。相手が強いほど燃える若武者は、フロンターレ魂を胸にどんな戦いぶりを見せてくれるのか。今から楽しみでならない。
(いしかわごう / Go Ishikawa)