一発退場で窮地に…「申し訳ない」 猛省後に「僕にはサッカーしかない」と再起、掴んだ五輪舞台
【大岩ジャパン18人の肖像】MF西尾隆矢(セレッソ大阪)が味わった五輪予選での悔しさ
大岩剛監督率いるU-23日本代表は、今夏のパリ五輪で1968年メキシコ五輪以来、56年ぶりのメダル獲得を狙う。4位でメダルにあと一歩届かなかった東京五輪から3年、希望を託された大岩ジャパンの選ばれし18名のキャラクターを紐解くべく、各選手の「肖像」に迫る。
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4月のアジアカップ(カタール)。大岩ジャパンがパリ五輪出場権と優勝を手にしたこの大会で、DF西尾隆矢は自分を再発見できた。初戦の中国戦。スタメン出場したが、前半17分に肘が相手に直撃したプレーがラフプレーとジャッジされ、一発退場と3試合出場停止という重い処分を受けた。
「あの日は凄くショックで申し訳ない気持ちとともに、悔しさと情けなさが込み上げてきました」
チームに迷惑をかけてしまったことは間違いない。しかし、チームメイトが西尾の退場を引きずることなく初戦を勝利し、第2戦も勝利して決勝トーナメントへ導いてくれた。一発勝負となった決勝トーナメント初戦のカタール戦も延長戦の末に勝利。自分をもう一度ピッチに立たせてくれた。
「やってしまったことをしっかりと受け止めて、いつまでも引きずっていたらサッカー選手としてはダメだと思いました。僕には本当にサッカーしかないし、サッカーで表現していくしかないので、それを引きずってまたプレーが悪くなるようじゃダメだと思ったので切り替えました」
準決勝のイラク戦では後半アディショナルタイムにピッチに立ち、パリ五輪出場権獲得の瞬間を味わった。決勝戦は出場機会こそなかったが、彼にとってはイラク戦の出場は大きな一歩であった。
「アジアカップでは不完全燃焼で終わっていますし、みんなにリベンジの場とチャンスをいただけたことに感謝しています」
帰国後、西尾はC大阪でセンターバック(CB)として完全にレギュラーを掴み取った。持ち前の対人の強さとフィードのうまさを駆使して、最終ラインで気迫溢れるプレーでチームを鼓舞。特に外国人選手とのマッチアップは迫力満点で、鋭い読みと当たり負けしないフィジカルでスピードタイプやフィジカルタイプのアタッカーと真っ向から対峙する。こうした当たりの強さとハードマークが世界と戦ううえで必要な戦力とみなされ、パリ五輪の18人に名前を連ねた。
五輪前の国内最終戦となったJ1第23節の川崎フロンターレ戦でも、スピードあるFWエリソンやFWマルシーニョに対して迫力あるマッチアップを見せた。
「2人とも速くてうまかったので、その対応は苦労しましたがいい経験にはなりました。ああいう選手をもっと封じ込めることができたら自分の価値もさらに上がると思うので、どんな相手でも対応できるようにしていきたいと思います」
物事をポジティブに捉え、今後へ生かす姿勢を持って前へ
ハキハキと話す姿に誠実さが感じ取れる。どんな状況でも常に成長のために物事をポジティブに捉え、今後へ生かしていく姿勢こそ、彼の最大の長所かもしれない。それには本人もこう同意する。
「あのレッドカードの件を通して改めて感じたのですが、自分を見つめ直している過程で、あまり僕は引きずらないタイプだなと思いました。小さい時からミスした時のリバウンドメンタリティーに関しては父親にも、監督やコーチの人たちにもずっと言われてきましたが、それを意識して日々積み重ねてきました。僕はサッカーでコツコツやっていくしかないと常に思っているので、ミスやネガティブなことがあっても、やってしまったことは仕方がないですし、次がすぐにあるからこそ、引きずるのではなく、それを次にどうポジティブに変換していくかを大事にしています」
そう語る手に握りしめられていたのはサポーターから渡された寄せ書きが詰まったセレッソのフラッグ。「感謝しないといけないし、僕にとって一生の宝物になる。サポーターの皆さんの存在は僕にとって力になると感じました」
ミスを恐れず、かつ自分自身をしっかりと見つめながら前に進む。仲間や支えてくれる人たちに感謝の気持ちを持って、西尾はカタールでの忘れ物を取り返すため、仲間と自分の未来を切り開くためにパリで最終ラインを引っ張る。
(FOOTBALL ZONE編集部)