スペインと日本の“大きな違い”とは? 東大サッカー部FW、バルセロナ単身武者修行で受けた衝撃【インタビュー】

スペインのバルセロナへ短期サッカー留学を行ったア式蹴球部3年生・岡部惇貴さん(右)【写真:東京大学運動会ア式蹴球部】
スペインのバルセロナへ短期サッカー留学を行ったア式蹴球部3年生・岡部惇貴さん(右)【写真:東京大学運動会ア式蹴球部】

「きっかけは新監督探し」単身でスペインに飛び込むことを決意した経緯

 現在サッカー解説者として活躍する林陵平氏がかつて監督を務めるなど、先進的な取り組みでたびたび話題を呼んでいる東京大学運動会ア式蹴球部(体育会サッカー部。以下、ア式蹴球部)。オーストリアのプロクラブ、FCヴァッカー・インスブルックとの提携や、ベルギー1部シント=トロイデンとの提携など、グローバルな活動にも積極的だ。

 そうしたなか、ア式蹴球部の3年生・岡部惇貴さん(経済学部)は先日、スペインへ短期サッカー留学を行った。帰国後にア式蹴球部でトップチームへ昇格し、今ではスタメンにも名を連ねる岡部さんがスペインサッカー留学で学んだこととはなんなのか。インタビューを行った。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 ア式蹴球部では、選手としてプレーすると同時にさまざまなピッチ外活動にも参加することが義務付けられている。今回、岡部さんがスペインに行くことを決めたのは、そのピッチ外活動で関わる強化部で林前監督に代わる新監督探しに携わったことがきっかけだったという。最終的にスペインでアナリストや指導者を務めた経験を持つ桑原徹新監督の招聘が決まったが、そこにたどり着く過程でスペインへの留学プログラムを知ったのだという。

「私は選手としてプレーするのと同時に、高校生にア式の魅力を広めていくリクルート活動や、指導者の招聘などでチーム強化を行う強化部にも関わっています。当時は強化部としての活動に精を出しており、林前監督に代わる新監督を探している時期でした。強化部としては、ア式のボールを保持するサッカースタイルと親和性があり、先進的な組織を引っ張っていける人材という2つの要素を兼ね備えた指導者を求めていました。そして、スペインでの指導経験がある日本人という条件で探すことにしたのです。

 そうして調べているなかで、現地スペインで活動する日本人の方とつながる機会があり、さらに現地で1か月間サッカーを学ぶプログラムが存在することを知りました。強化部の身としてよりサッカーを深く知りたいという気持ちもありましたし、パスサッカーで相手を魅了していくスペインのサッカーには小さい頃から憧れがあったので、自分の目で一度体験してみたいと思い、プログラムへの参加を決めました。ア式蹴球部はプレシーズン中で、自分も選手なので、チームを離脱するのはどうなんだと悩みましたが、チーム全体で後押ししてもらえて、参加することができました」

スペインに飛び込み得たもの…「スペインの指導者はコーチというよりも友達」

 そうして単身乗り込んだ1か月間のサッカー留学では、毎日が驚きの連続だったという。特にトレーニングメニューや指導者と選手との接し方には、日本との大きな違いを感じたという。

「私が帯同させてもらったのはバルセロナにあるUEコルネジャというクラブです。バルセロナにはバルセロナとエスパニョールという2つの大きなクラブがあり、UEコルネジャはその次くらいに強いクラブです。そこで小学生から中学校2~3年まで、幅広いカテゴリーに帯同することができました。

 まず驚いたのは練習メニューの違いで、スペインでは、日本ではよく見られるようなコーンを置いてドリブルをするドリル系のメニューは全くありませんでした。そうではなく、日本だと“時期尚早”と思われそうなポゼッション系のメニューを小学生年代からしっかりとやっていて、スペインは日本と比べてサッカーをより“相手ありき”のものとして捉えているなと感じました。

 また、指導者と選手の接し方も印象的でした。スペインの指導者は厳格な存在というよりも友達の感覚に近いというか、とにかく選手との対話を大事にしているなと感じました。日本の指導者は集団全体に訴えかけるイメージですが、スペインは1人1人と対話するという感じで、選手によって話し方も変えていたのが印象に残っています。

 それから、本当に指導者が楽しそうでした。スペインでも指導者は給料などの待遇面が決して恵まれているとは言えず、交通費くらいしかもらえていない人も多いそうなのですが、心から楽しんでいる感じが伝わってきました」

 岡部さんはスペインで目の当たりにした指導者の姿に刺激を受け、帰国後にはア式蹴球部でコーチを兼任するようになったという。

「スペインで楽しそうに指導をする指導者の姿を見て、引退後のキャリアとして指導者もありだなと考えるようになりました。私がプログラムを終えて帰国したタイミングはちょうど新入生が入ってくるタイミングでもあったので、直談判して期間限定で新入生チームのコーチをさせていただくことになりました。

 選手としてもプレーを続けているので、両立は大変でしたが、大好きなサッカーをさまざまな面から味わえて毎日が楽しかったです。必然的にサッカーに費やす時間も増えたことで、サッカーへの理解度も高まり、プレーも以前よりも上達したように感じています」

 帰国後、岡部さんはトップチームに昇格し、先日のリーグ戦ではゴールも記録。スペインでの確かな成長を結果で示して見せた。海外留学で得た知見を、選手や学生コーチの立場ですぐにアウトプットできる環境も、先進的な取り組みを行う東大ならではものと言えるだろう。スペインで経験を積んだ岡部さんがこれからどのようなサッカーキャリアを築いていくのか。今後の活躍に期待したい。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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