五輪予選で思わぬ序列低下 J2→G大阪で飛躍も…ライバル台頭で味わった“屈辱の光景”

半田陸は五輪予選での悔しさを晴らせるか【写真:徳原隆元】
半田陸は五輪予選での悔しさを晴らせるか【写真:徳原隆元】

【大岩ジャパン18人の肖像】DF半田陸(ガンバ大阪)が描いた成長曲線

 大岩剛監督率いるU-23日本代表は、今夏のパリ五輪で1968年メキシコ五輪以来、56年ぶりのメダル獲得を狙う。4位でメダルにあと一歩届かなかった東京五輪から3年、希望を託された大岩ジャパンの選ばれし18名のキャラクターを紐解くべく、各選手の「肖像」に迫る。

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 モンテディオ山形ユース時代から表情は幼さが残るも、大人びた選手だという印象だった。その理由は冷静沈着さにある。サイドバックとして豊富な運動量でアップダウンを繰り返しながらも、守備のバランスが悪いと感じたら無理に上がろうとせずにスペースを埋めたり、攻守どちらでも反応できるポジションを取ったりしてリスクマネジメントをする。

 その判断のクオリティーが非常に高い22歳の半田陸は、ピッチ上で必要不可欠な頭脳として、U-15日本代表から毎年のように年代別代表に選ばれ、2019年10月のU-17ワールドカップ(W杯)ではキャプテンマークを巻いてチームの先頭に立った。

「自分が準備とか片付けをさぼらずに、そういう率先してやる姿をみんなに見せたいと思っていた」

 早生まれでチームの年長だったこともあるが、常に視野をチーム全体に広げて、気がついたことは率先して行動する。決して他人任せにせずに、チームのために動く姿も大人からの信頼が厚かった理由でもあった。

 サイズは176センチと決して大柄ではないが、ヘディングも強い。U-17日本代表までは、代表でもチームでもセンターバック(CB)を主戦場とし、クールで回転の速い頭脳を駆使して最終ラインを統率する存在だった。その一方でこのままCBで上を目指していくより、ほかのポジションを主戦場にしなければいけないことを彼自身がよく理解していた。

「走ることや考えることは自分の武器。CBだけではなくサイドバック(SB)としても成長していきたいと思っています」

 実際にプロ1年目の2019年8月のJ2第27節のアルビレックス新潟戦において、右ウイングバックでプロ初スタメンを飾った。さらにこの年のU-17W杯(ブラジル)ではグループリーグ最終戦のセネガル戦において右SBでスタメン出場し、スピード溢れる相手のサイドアタッカーとスピードや球際で対等以上に対応。後半途中に左SBにポジションチェンジをしても、同様にハイレベルなプレーを披露するなど、SBとしての特性を自らの力で示していた。

U-23アジアカップの直前にコンディション不良…悔しさ噛みしめる

 プロ2年目はCBを主戦場としながらも右SBでも経験を積んでいくなかで、プロ3年目にSBこそ自分の生きる道だと覚悟を決めた。このシーズン、右SBでJ2リーグ37試合に出場して不動の地位を確立すると2023年にJ1のガンバ大阪に完全移籍。分厚い選手層の中で頭角を表し、Jリーグ屈指のSBであることを示した。

 だが今年、彼にとって1つの試練がやってきた。大岩ジャパンにおいて右SBの1番手と見られていたが、パリ五輪出場権をかけたU-23アジアカップの直前にコンディション不良に陥り、合流が遅れてしまった。

 その穴を埋めたのが187センチのサイズを誇る柏レイソルのDF関根大輝だった。ルーキーイヤーで出番を掴み、調子を一気に上げていた新鋭は、グループリーグ第1戦、第2戦とスタメンフル出場して大活躍しレギュラーの座をガッチリと確保した。半田はターンオーバーを敷いた第3戦・韓国戦のスタメン出場した以外は、準々決勝のカタール戦の延長後半9分に途中出場したのみで終わってしまった。

 大会優勝で盛り上がるチームの中で悔しさを抱えてチームに戻った半田は、もう一度自分と向き合った。コンディション作りからプレーの面まで整理した結果、U-23アジアカップからチームに合流すると、好調なチームにおいて攻守においてハードワークとビルドアップに加われるSBとして活躍。積み重ねてきた半田のピッチ内外の視野の広さとインテリジェンスが評価され、パリ五輪最終メンバーに名を連ねた。

 カタールでの悔しさをパリで晴らす。冷静と情熱の間で躍動する半田のプレーが今から楽しみだ。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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