J1川崎の“幻の勝ち越し弾”が波紋「取り消しなぜ」「腑に落ちない」 VAR介入範囲はどこまで?
小林がネットを揺らすも、家長がクロスを上げた際にラインを割っていたとしてノーゴールに
川崎フロンターレは7月14日、J1リーグ第23節でセレッソ大阪と対戦し1-1のドローで終えた。後半にはFW小林悠がゴールネットを揺らし決勝弾かと思われた場面もあったが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入で取り消しに。このシーンでVARがどこまで遡れるかが大きな話題を呼んだ。
【注目】白熱するJリーグ、一部の試合を無料ライブ配信! 簡単登録ですぐ視聴できる「DAZN Freemium」はここから
1-1で迎えた後半34分、川崎はMF橘田健人のクロスに小林が右足でフィニッシュ。リーグ戦6試合ぶりの勝利に大きく近づいたかに思われた。ただここで木村博之主審がVARと交信。ゴールのチェックを行うなか、約30秒前のMF家長昭博が上げたクロスの場面で、ボールが外に出ていたとして小林の勝ち越しゴールは幻のものとなった。
VARが遡る時間の基準としてAPP(=アタッキング・ポゼッション・フェイズ/攻撃側がボールを保持し攻撃に移る局面/VARが攻撃側の反則があったかどうかをレビューすることが可能な範囲)がある。今回のゴール取り消しでは、“ボールを保持”という部分でファンの間で疑問が生じているようだ。
C大阪が同点に追い付き、再度川崎のキックオフで試合が再開したのが後半33分。そこから川崎が右サイドを攻め、何度か相手に奪われながらも相手陣地で波状攻撃を行っていた。その流れから左サイドに展開し、争点となった家長のクロスにつながっている。
SNS上では「なぜあれがAPPの範囲内になるのか」「あそこまで遡るのはどうなんだろう?」「相手ボールに2回もなっているのに戻しすぎ」「得点取り消しなぜ!?」「腑に落ちない」といった声がファンから上がっていた。
ラインアウトから取り消しとなったゴールまで約30秒間で何が起こったか
取り消しの発端となった事象から、小林がゴールネットを揺らすまでの流れを整理すると、以下のようになる。
(1)家長のクロスは相手に当たり、一度C大阪のFWルーカス・フェルナンデスの下へ。(およそ後半33分20秒)
↓
(2)直後に橘田が奪い返し、ペナルティーエリア内への攻撃へと続く。(およそ後半33分25秒~)
↓
(3)その後、川崎FW山田新がキープしていたところを奪われ再びC大阪にボールが渡るが(およそ後半33分34秒)、ルーカスに対し素早くプレスした川崎MF瀬古樹がカット。(およそ後半33分40秒)
↓
(4)パスをつないで橘田が上げたクロスを、小林が押し込んだ。(およそ後半33分45秒~47秒)
ラインアウトからネットを揺らすまで、時間にして30秒足らず。実は、今季より始まったJリーグ公式YouTubeチャンネルの「Jリーグ審判レポート」で、すでにAPPについて取り扱った回がある。
該当のゲームはJ1リーグ第7節の川崎対FC町田ゼルビアの一戦。後半4分、町田がGKからつなげた攻撃を展開。FW藤本一輝が相手ペナルティーエリア内で仕掛ける。一度は川崎側にボールを奪われるも、うしろからMF仙頭啓矢がかっさらいクロス。FW藤尾翔太が頭で押し込んだ。
結果としてVARの介入で藤尾のオフサイドが取られたが、このシーンでは「APP」についても議論。一度川崎がボールを奪った段階でAPPが途切れていた可能性を話し合った。このケースでは、出演したJFA(日本サッカー協会)審判マネジャーの廣瀬格氏は「APPの継続だと考えます」と発言している。
また、昨年までスポーツチャンネル「DAZN」で配信されていた判定検証番組「ジャッジリプレイ」でも過去に「APP」の適応是非を実際に起きた事象とともに検証。ゲスト出演していた元審判員の奥谷彰男氏が解説した回(2021年)では、VARが遡れる時間に明確な制限(時間)が設けられないことに言及された。
今回小林のゴールが取り消された場面でも上記のルールが適応される反面、一連のシーンではC大阪が2度ボールを奪っており、APPの入れ替わり有無が争点に。勝敗を左右するゴールだっただけに判定の真偽が大きく波紋を広げたワンシーンとなった。