なでしこJの新戦術で「チームが行き詰まった」 4発大勝の裏で…監督&選手から漏れた課題
パリ五輪壮行試合でガーナに4-0勝利も…4-3-3システムに課題露呈
なでしこジャパン(日本女子代表)はパリ五輪へ向けた壮行試合として、7月13日に金沢ゴーゴーカレースタジアムでガーナ女子代表と国際親善試合を行い4-0で勝利した。相手が退場者を出したあとの後半に4得点したが、前半の4-3-3システムには課題が残った。
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主将のDF熊谷紗希をアンカーの位置に入れた4-3-3でスタートした日本だが、ボールを持った場面ではそれほど有効な前進は多くなかった。また、相手のポゼッションに対してピンチはほとんどなかったが、ボールをどう奪うかという点ではMF長谷川唯が「あまりハマっていなかった」と話したようにストレスを感じた部分もあったようだ。
池田監督は「守備の狙いは相手のトップ下を押さえる、長いボールで競り勝ってセカンドボールを奪うところで熊谷をそこに置いた。守備では、できた部分もあった」と話したが、攻撃面では課題が残り「距離感はそんなに悪くないけど、出し手と受け手のタイミング、まだ受け手の準備ができていない時にボールを離していることもある」と話した。
ピッチ上の選手の感覚では、MF藤野あおばは「いつも3バックでやるところを(熊谷)紗希さんが押し出してプレーするところをやってみたものの、ボランチがうまくボールを配球するスペースがなく、前線では中に人が多すぎた。チームが行き詰まったと思うけど、後半に3バックにすることで(長野)風花さんと(長谷川)唯さんに適切なスペースが与えられた」と話した。
前半は長谷川と長野が少し高い位置を取れるものの、相手に捕まりやすい位置になった面もあり、後方の選手たちが彼女たちにボールを入れることを逡巡する場面も見られた。後半に長谷川と長野のダブルボランチになってからは、相手からうまく距離を取りながら、主に長野がボールを引き出して攻撃を展開した。
長谷川は「前半は特に課題が多い試合で、少し前でプレーすることもあって前で待つシーンが多くボールに触れずリズムが出ないと感じた。後半はチャンスメイクも多少できたと思う」と話した。そして前半のプレーについて「うしろに下がったほうが簡単にプレーできると思うけど、狭いスペースでも前を向いてチャンスメイクできるのがベスト。ただ、そもそもボールがそこに入るか入らないかというのもある。縦パスを入れる役に自分がなるのか、受け手になるのかは試合の流れを見ながらポジションを取っていければ」と話した。
2枚のセンターバックの前に高さと強さのある熊谷を配置できることは4-3-3の強みになるが、一方で前進する局面ではプレーメーカーの役割を誰が担うのかという点で修正する部分も多くなりそうだ。
池田監督は「お互いの共有の精度を上げていけばコンビネーションやボールのつながりができたと思う。コンディションを上げることで1つ1つの反応のところも積み上げていければ」と話したが、現状では昨年の女子ワールドカップ(W杯)でも採用された3バックのほうが完成度の高さを見せている。4-3-3を本大会までにオプションとして精度を高められるかは、スペイン、ブラジル、ナイジェリアと対戦する本大会での戦いの幅に大きく関わっていきそうだ。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)