磐田浮上の鍵握る「5人のキーマン候補」 20歳ドリブラー覚醒の予感…膨らむ上昇への希望【コラム】

ジュビロ磐田【写真:Getty Images】
ジュビロ磐田【写真:Getty Images】

ジュビロ磐田さらなる飛躍へ…中心を担うべき5人のキーマンを紹介

 ジュビロ磐田はここまで22試合を消化して勝ち点24。J1の16位となっている。横内昭展監督がシーズン目標を“勝ち点40以上”に設定している磐田としては、J1残留の指標にもなる最低ラインはキープできているが、ここから残り16試合でどこまで上乗せして、上の順位に食い込むことができるか。その中心を担うべき5人のキーマンを紹介する。

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■ジャーメイン良(FW)

 序盤戦は得点ランキングのトップを走っていたが、第12節の東京ヴェルディ戦で11得点を決めた際、相手ディフェンスとの接触で、額を骨折。5試合の離脱を強いられた。幸い順調な回復で、練習にも横内監督が予想していたより早く復帰して、代表ウィーク明けとなる第18節のFC東京戦に照準を合わせてきた。

 そこから本来の感覚を戻すには時間を要したが、前節の川崎フロンターレ戦で復活ゴールを叩き込むと、1-2のビハインドで迎えた後半アディショナルタイムに、DF鈴木海音がヘッドで前方に送ったボールを収めてペナルティーエリア内まで運び、MF山田大記の同点ゴールにつなげた。「自分としても早く点の流れが欲しかったなかで奇しくも川崎戦でまた点が取れた。ここからまた、怪我する前の流れで行けたら」とジャーメイン。FWマテウス・ペイショットとの縦の2トップも板についてきたが、周りとの関係性も含めてさらに良くしていける余地はある。

 得点ランキングは現在、セレッソ大阪FWレオ・セアラが16得点でトップ。ジャーメインは4得点差で追いかけるが「今、抜かれちゃったので。だけどみんな、それを期待してると思う。このぐらいの点差だったら、また頑張りたい」と得点王にも意欲を見せる。もちろん、それはチームを勝利に導くため。エースが怪我前のように、得点を積み重ねることができれば、磐田の躍進に直結するはずだ。

■古川陽介(MF)

 これまで起用された18試合のうち、途中出場が17試合。緩急自在のドリブルを武器に、まさしく流れを変える左サイドのジョーカーとして重宝されており、後半だけで22得点という磐田の反撃力を牽引する。しかしながら、目に見える数字としては第20節の東京ヴェルディ戦で記録した、60メートルドリブルからのスーパーゴールのみ。

「まだ1点目ですけど、1年間ほぼ点取れなくて。悩んできたなかで、ああやってゴールが取れたのは大きかった」と語った古川だが、大事なのは結果を積み重ねていけるか。前節の川崎戦では左から巻くシュートが枠を外れてしまった。その前に、ゴール前でペイショットが受けられる状況にあったこともあり、横内監督も「陽介が彼の強みを自分で出そうとした部分、トライした部分を僕は尊重してますけど、だったら枠に飛ばせよと」と苦言を呈している。

 同期の盟友であるMF藤原健介はJ3のギラヴァンツ北九州に育成型期限付き移籍し、古川も強い危機感を持っている。課題である守備にも意欲的に取り組む古川はもちろんスタメンでの出場を目指しているが、そのためにも与えられた時間で結果を残せるか。良い意味でリミッターを外した古川の躍動が磐田の上昇に大きく影響しそうだ。

山田大記は最適なプレーを導き出せる唯一無二の存在

■山田大記(MF)

 キャプテンとして磐田をまとめながら、試合の流れを誰よりも的確に読んで、最適なプレーを導き出せる唯一無二の存在だ。土壇場のゴールで1-1と引き分けた前節の川崎戦、後半41分に投入された山田は前からの精力的な守備で、相手に時間を使わせず、残り時間で磐田の攻撃チャンスを最大化すると、ジャーメインが前線で粘り強く、ペナルティーエリア内に持ち込んだ流れから、こぼれ球を流し込んだ。

 そのゴール自体は「ラッキーな形でした」と振り返るが、そうしたシーンに導く流れを作ったことに関しては「出るならこういう形というのもイメージできていて。ピッチに立つ時のタスクはクリアになっていた」と語る。横内監督も「彼をあの時間帯で出すことはメッセージになる」と語る。もちろんスタメンで出た場合にもゲームを読む能力は発揮されるが、ペイショットとジャーメインの縦の2トップがベースになっている現状で、途中から入る山田がゲームチェンジャーの役割を担えることは磐田にとって大きな強みだ。

■上原力也(MF)

 ここまですべてのリーグ戦にスタメン出場している唯一の選手で、山田がベンチスタートの場合はキャプテンマークを巻くことも多い。まさしくチームの心臓であり、現役引退した遠藤保仁氏の意思を中盤で受け継ぐ選手でもある。ハードワークをベースにしながら、攻守に渡る的確な状況判断と正確なプレーに関しては横内監督も揺るぎない信頼を置いている。ただ、チームがもう1つ進化して、J1で躍進するには“チームの心臓”である上原のバージョンアップも求められる。

 磐田は試合前の分析と対策がうまくハマれば、J1の上位陣にも善戦できるが、3-0で敗れた第21節の浦和レッズ戦のように、相手が想定を上回った時に、そのままズルズルと相手のリズムに引っ張られてしまう傾向がある。そうした時に状況を見極めて、ピッチ内で解決していく一番のトリガーが、中盤を仕切る上原であるべきだ。

 上原も「チームを引っ張ることも大事ですけど、ゲームコントロールのところはもう少し力をつけないといけないと思う。いつパワーを出すのか、いつ我慢するのかの見極めだったり、自分のポジショニングをうまく変えていけばコントロールできる」と自覚しており、さらに期待していきたい。それと同時に、昨年J2で8得点を記録したシュート力も、ここから発揮してほしいところだ。

パリ五輪18人メンバーから落選、鈴木のさらなる奮起に期待

■鈴木海音(DF)

 1対1に強く、前で相手の攻撃を潰すディフェンスで抜群の存在感を見せるセンターバックだ。目標にしてきたパリ五輪は18人の最終メンバーから外れてバックアップに。鈴木自身は大会前、大会中に何かあればすぐフランスに旅立つ心の準備はしながらも、今は目の前のリーグ戦に集中している。

「頭の中には入れなかったという思いがある。切り替えているというよりかは、その悔しさをずっと持ち続けて。これからも忘れることはないと思うし、その心を持ち続けて行きたい」と鈴木。アテネ五輪を逃しながら、その後、4度のワールドカップを経験したGK川島永嗣からも「もう目指すのは1つだけだな」と声をかけられて、A代表に目標を切り替えられたという鈴木は「もっと成長速度を上げていかないと、そこに食い込んで行けない」と自分に矢印を向ける。

 東京五輪のブラジル代表だったDFリカルド・グラッサとのセンターバックコンビが定着しているが、個人の守備はもちろん、リーダーシップを高めて、磐田を支えることができるか。ドイツの名門バイエルン・ミュンヘンに移籍したDF伊藤洋輝にも刺激を受けており、将来的な海外挑戦も視野に入れる鈴木だが、さらにスケールアップするために、磐田でやるべきことはまだまだある。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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