東京Vは町田を「今はもう認めざるを得ない」 黒田監督が自負…因縁の城福監督に抱く思い
町田の黒田監督と東京Vの城福監督の因縁はますます燃えさかる
今週、背筋が凍るような試合を見たければ味の素スタジアムがいいはずだ。城福浩監督と黒田剛監督の因縁は去年スタートし、ますます燃えさかっている。
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最初のきっかけは2023年5月13日のJ2リーグ第15節、東京ヴェルディ対FC町田ゼルビアの試合。前半アディショナルタイムにエリキが挙げた1点を、後半町田はしっかりと守り抜き、最初の対戦は黒田監督の勝利で終わった。
タイムアップ後、黒田監督がベンチ前で引き上げている選手を待っていると城福監督が町田のベンチにやってきた。先にスタッフに挨拶したあと、黒田監督と握手するがぎこちない。城福監督が怒っているように見える。
この時の様子で、年下でアウェーの黒田監督が、年上でホームの城福監督のところに先に挨拶に行かないのは失礼ではないかという声が上がった。そういう挨拶のルールが存在しているのか、あるいは次の対戦のために城福監督が仕掛けた心理戦なのかは分からない。ただ、見ているほうにも2人に何か確執が生まれたのが分かった。
次は2023年7月9日のJ2リーグ第25節、町田対東京Vの再戦の時。町田にとってその年唯一の国立競技場開催で、3万8402人を集めた試合だった。前半2分に藤尾翔太、同38分に安井拓也がゴールを決めて町田は得意の先行逃げ切りパターンに入る。
2023年の町田は先行した時の勝率は83%、前半リードした時の勝率は82%とほぼ勝利を手中にしたと言える展開だった。ところが東京Vは後半28分に染野唯月が1点を返すと、同38分にも染野が決めてついに同点に。そして、東京Vが町田を圧倒したまま残り時間が過ぎ、結局は2-2の引き分けに終わった。
その試合後の記者会見で城福監督が吠えた。「相手はとにかく倒れて、やれないかと思っていたあとにまたプレーする。それに対して、選手は辛抱強く、我慢強く、それで追い付いたからこそ、サッカーで勝ちたかったと思います」。これで一気に町田はダーティーというイメージが拡散することになった。
黒田監督は年上の城福監督を「尊敬している」と即答
のちに城福監督は町田に対して言ったことではなく、J2リーグのアクチュアルプレーイングタイムの短さを問題にしたかったと真意を語ったがあとの祭。さらに東京Vと町田の対立色が強まることになってしまった。
J1リーグに場を移して行われた対決の初戦は2024年5月19日、町田のホームで対戦したJ1リーグ第15節。この時は町田が5-0と東京Vを完膚なきまでに叩いた。東京Vの攻守の要である中盤をしっかり抑え、リズムを狂わせたことが勝因だった。
7月14日の東京V対町田は前回の対戦があるから気は楽だろう。そう聞かれた黒田監督はニコリともせず語った。
「楽なわけがない。相手の闘争心がむしろ何倍にもなって出てくる。リベンジに燃える、しかもホームのヴェルディにそんな簡単にはいかないでしょう。メンバーもシステムも変わってきている。前回のあれ(大差)はたぶんない。得点を多く取るという展開にはならないと思うんで、1点勝負になるんじゃないか」
城福監督をどう思っているか聞くと、表情を変えずに「尊敬していますよ」と即答。「いろんなチームで需要があり、求められたからこその(Jリーグ公式戦通算指揮)500試合だと思うんでね。需要がなければ監督ってすぐ仕事を失うから、そういう意味で500試合やれるっていうことは素晴らしいこと」だと続けた。
黒田監督が城福監督を意識しているのは間違いない。2023年12月2日に行われたJ1昇格プレーオフ、東京Vと清水エスパルスの試合にも国立競技場に足を運んで見ていたのだ。
黒田監督が今回の対戦をどう考えているのか。
「たぶん去年は(町田を)認めたくないという気持ちがあったと思うんだけど、今はもう認めざるを得ないということになっていると思う。それで初めてイーブンな戦いもできる。お互いにお互いを分析したなかでがっぷりと戦えると思うんで、これからが本当の東京ダービーになるかという感じがします」
順位では町田が1位、東京Vは10位と差をつけている。だが町田が1つ、東京Vに負けていることがある。それはホームの観客動員数だ。スタジアムの大きさの問題もあるが、22節を終了した時点で町田の1試合平均1万2368人に対して東京VはJ1リーグ平均観客動員数を上回る2万548人を集めている。次の対戦でも東京Vの大観衆がチームを後押しするだろう。
そのことを指摘すると、黒田監督は町田のファンに向けてこうコメントを残した。
「スタジアムで真の東京ダービーっていうものを目に焼き付けてほしい。その中で我々の勝利というものを再び彼らに見せられることが望ましいし、応援してくれるファン・サポーターのためにも、内容でもしっかりと勝ち切って、結果でも勝って、夢に一歩近づかせるような希望の持てるような試合を見せたいと思います」
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。